第3705回「名探偵ポワロ全集、第12巻、マギンティ夫人は死んだ、その2、ストーリー、ネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3705回「名探偵ポワロ全集、第12巻、マギンティ夫人は死んだ、その2、ストーリー、ネタバレ」

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 第3705回は、「名探偵ポワロ全集、第12巻、マギンティ夫人は死んだ、その2、ストーリー、ネタバレ」です。今回の依頼者は、スコットランド・ヤードのスペンス警部です。死刑囚の犯行とは思えないというのが、その理由です。その死刑囚ベントリーには、犯罪者特有の横柄さがないと・・・・。死刑執行まで、2週間・・・・。


 ポワロは、事件のあったブロードヒニーに向かいます。村に着いたポワロを、クレーン・カメラが追います・・・・。ポワロは、とりあえず宿を確保します。ブロードヒニーの旧家であったサマーヘイズが下宿を経営していたのです。没落名門の悲しさか、食事はまずいし、隙間風は吹くし、家具はぼろぼろ・・・・、ムシュー・ポワロには耐えられない状況です。


 ポワロは、偶然、モード・ウィリアムズという女性に会います。ベントリーの同僚であり、彼に好意を抱いているようです。不動産会社に勤めており、地元には詳しいようです。ベントリーは営業マンでしたが、不動産屋としては無能だったようです。詩などを書いていました。


 ベントリーが殺したとされるのが、マギンティ夫人です。ベントリーは、彼女の家に下宿していました。マギンティ夫人は、近在の屋敷の床などを掃除し、小金をためていたと言われています。しかも、箪笥預金と言う形で・・・・。その金を、困窮していたベントリーが盗むために、夫人を殺したというのが、陪審員の判断です。


 証拠としては、被害者のものと思われる血痕が袖口に着いていたことと、60ポンド(現在価値60万円?)が石の下に隠されていたことです。モード・ウィリアムズは、ベントリーの無実を信じています。


 さらに、ポワロが偶然会ったのが、アリアドネ・オリバーなる女流推理作家です。アリアドネは、自分の作品の戯曲化のため、劇作家ロビン・アップワードと共同執筆するために、アップワード家に泊まることにしていたのです。


 ポワロが調査を進めるうちに、ポワロにも事件が起きます。駅で、何者かによって突き飛ばされるという事故(?)があったのです。

 

 アップワード家のカクテル・パーティで、近在の名士を紹介されます。事前に調査のため、個々人と会っていたのですが、やはりパーティの席となりますと、人間性が現われてきます。その時、ポワロは、2枚の写真をいきなり取り出したのです。マギンティのわずかな遺品の中に、切り抜かれたサンデー・コメット紙が入っていました。


 ポワロがロンドンで調べたところ、二つの事件のその後をトレースした記事「悲劇の犠牲者たち、彼女たちは今どこに?」を、マギンティ夫人は切り抜いていたのです。


1. 家庭教師エバ・ケインは、アメリカに逃亡したとされています。エバは、クレイグという男と不倫関係にあったのですが、そのクレイグが妻を毒殺したというものです。絞首刑になっています。エバは、人々の目を怖れ、逃亡同然の状態で、海外に・・・・、というのが真相のようです。エバは、その時、みもごっており、後に女児を出産したとされています。ですが、ドラマでは、断片的に語られますので、正直分かりづらいというのが実感です。


2. 当時12歳のリリー・ガンボールが、映画を観に行くことを保護者である伯母に断られたため、殺したという事件です。リリーは、厚生施設に送られますが、サンデー・コメット紙は、その後を十分トレースできなかったようです。ですが、リリーが使った凶器は、肉切り包丁でした。今回の事件も同様の凶器が使われています(後に、シュガー・クラッカーだと判明します)。


 ポワロは、エバ・ケインとリリーのふたりの当時の写真を、パーティ参加者に見せたのです。唯一反応したのが、アップワード夫人でした。夫人は、リリーに心当たりがあると指差します。そのアップワード夫人が、カクテル・パーティ翌日の夜に殺されたのです・・・・。現場には、強い香水の香りと、カップには口紅が残されていました。事前に、ポワロは、夫人に警告していたのですが、それでも殺されたのです。


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 アップワード夫人が殺された時の容疑者の行動を、キャラクター設定とあわせて記しておきます(ただし、全員の行動は描かれていません)。


① ロビン・アップワード・・・・ アップワード夫人の息子、マザコンぎみの青年、劇作家です。現在、アリアドネ・オリバーとともに、戯曲を共同執筆しています。事件当時は、アリアドネと一緒に、「捨てられて」("Abandoned")という劇を観に行っていました。第一発見者は、同行したアリアドネです。


② ガイ・カーペンター・・・・ 議員、事件当時は、政治集会に出席していました。妻にも、第三者にも高飛車な人物です(選挙のときは?)。

③ イブ・カーペンター・・・・ ガイの妻、元女優(?)、ケバい化粧と、匂いの強い香水を使用しています。エステには金を惜しまない女性です(美人です)。事件当夜、アップワード夫人からお茶の誘いがありましたが、無視しています。


④ ドクター・レンデル・・・・ 村の医師で、明るい性格の持ち主です。

⑤ シーラ・レンデル・・・・ ドクターの妻、心を病んでいます。アップワード夫人の誘いには、睡眠薬を飲んでいることを理由に断っています。


⑥ サマーへイズ少佐・・・・ かつては名門でしたが没落したサマーへイズ家の当主、支出には口うるさい人物です。今では、下宿を営んでいます(客はポワロのみ)。

⑦ モーリーン・サマーへイズ・・・・ 少佐の妻、ルーズな性格です。アップワード夫人からの誘いに応じ、屋敷には行ったようですが、応答がなかったと答えています。


⑧ モード・ウィリアムズ・・・・ 死刑囚ベントリーの恋人(?)、現在不動産屋に勤務しています。ポワロに問い詰められた際には、逃げ出しています。

⑨ ベッシー・バーチ・・・・ マギンティ夫人の姪であり、家を相続しました。ジョー・バーチと結婚しています.夫と雑貨屋の妻との不倫には気付いていません。

⑩ アリアドネー・オリバー・・・・ 女流ミステリ作家(アガサ・クリスティの分身?)、ポワロと対等に張り合える女傑です。事件当日,脚本を共同執筆しているロビン(①)と劇を観に行っていました。


 以下、最後まで書きますので、ネタバレとなります。


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 事件の転機となったのは、ポワロが、グレート・バリアー・リーフについて書かれた本に、署名された"イブリン・ホープ"なる著作を見つけた時です。その同じ筆跡が、エバ・ケインの写真の裏側に書かれていました。「わが母」と記されていました。


 一方、スペンス警部は、リリー・ガンボールが終身刑を受けている事実をポワロに報告します。そして、エバ・ケインが海外に出たときには、子どもは未だ生まれなかったことを警部に確認します。さらに、エバ・ケインは、オーストラリアに渡ったことを、ポワロは推定します・・・・。そして、事件関係者全員を、サマーへイズ家に集めます。


 ポワロは、話し始めます。なぜ、アップワード夫人が殺された部屋に、口紅のついたカップがあり、強い香水の香りがしたのか、・・・・・。女性が犯人であることを誘導させるのが目的であったと、ポワロは断定します。犯人は、男性であり、マギンティ夫人も殺していると・・・・。イブリンは、男女ともに使われている名前です。


 さらに、新聞が伝えたエバ・ケインの娘は誤報であり、息子であったと付け加えます。イブリンは、男女ともに使われている名前です(母と息子が同じ名前を使っています)。そして、本の署名、写真の署名から、ロビン(①)を指弾します。ロビンは、アップワード夫人の養子だったのです。劇作家として大成するためのパトロンであったとも・・・・。


 では、いかにしてアップワード夫人を殺害できたのか、劇場に出発する直前のわずかな時間を利用したのです。偽装工作もしています。次々とポワロは、弾劾し続けます。ロビンの目から涙がこぼれます・・・・。


 マギンティ夫人殺しの動機は、エバ・ケインの子どもであることを夫人から脅迫されたことです。夫人は、サンデー・コメット新聞を読んで気づきました。アップワード夫人殺しの動機は、夫人がロビンの正体に気付き始めたからです。こうして事件は終わります。ポワロは、ブロードヒニー村を、アリアドネと共に去ります。


 場面は変わり、ポワロとモード・ウィリアムズは、釈放されるベントリーの出迎えに行きます。タクシーを降りる前に、ポワロは残された真実を語ります。ポワロを汽車に向かって突き飛ばしたのは、心を病んだシーラ・レンデルでした。村では、"安楽死"の噂があったのです。


 真相は別にして、レンデル医師は、末期の患者に死を与えていたと・・・・。そのために、嗅ぎ回るポワロを、レンデル夫人が殺そうとしたと、ポワロは語ります。ただ、ポワロは事件化していません。では、ベントリーの恋人であり、不動産会社に勤めるモード・ウィリアムズは、この事件に何も関与していなかったのでしょうか。


 アップワード夫人が殺された夜、モードも行っていたのです。ですが、既に夫人は殺されていました。夫人はエバ・ケインでもありませんでした。それが彼女の幸運でした。モードは、エバ・ケインと不倫関係になったために妻を毒殺したクレイグの娘だったのです・・・・。


 釈放されるベントリーに向かって、モードは歩き始めます。ポワロは、ふたりをみつめ、タクシーを出させます・・・・・。


(蛇足) ドラマとしては、説明不足の点が少なくありません。実に分かりづらいのです・・・・。このドラマを観た友人・知人も同じことを話していました・・・・。