第3704回「名探偵ポワロ全集第12巻マギンティ夫人は死んだ、その1、感想、マーブル向きの事件」 | 新稀少堂日記

第3704回「名探偵ポワロ全集第12巻マギンティ夫人は死んだ、その1、感想、マーブル向きの事件」

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 第3704回は、「名探偵ポワロ全集第12巻マギンティ夫人は死んだ、その1、感想、マーブル向きの事件」です。過去の事件が、今回の殺人の背景にあったというのが、基本的なプロットです。舞台は、ブロードヒニーという田園地帯の村です。容疑者は、獄中で死刑の執行を待っています・・・・。


 こうなりますと、ミス・マーブル向きの事件と思えるのですが、なぜかクリスティは、探偵役にムシュー・ポワロをあてています。その代わりと言うのでもないでしょうが、アリアドネ・オリバーなる女性ミステリ作家を登場させています。


 アリアドネがポワロと会った際、「灰色の脳細胞」を揶揄(やゆ)しています。アリアドネの武器は、もちろん「女の勘」です。お互い、それぞれの才能を認め合える努力と天分の持ち主です。アリアドネ・オリバーには、クリスティ自身が投影されていると言われています・・・・。


 過去の事件は、新聞記事で紹介されています。ドラマ版では、2件の事件が語られているのですが、本来は別々の事件です。ドラマでは、若い女性と12歳の少女として描かれていますので、あたかも2人に関連性があるように勘違いしてしまいます・・・・(例えば、親子)。そのあたり、説明不足の感は否めません。


 当然、新聞に掲載された記事が、今回の事件を引き起こした直接原因になっています。クリスティは、「ABC殺人事件」(※)で、"劇場型犯罪"を描きました。「ABC」は、マスコミを前提にしないと成立し得ない犯罪です。そして、「マギンティ夫人は死んだ」は、スキャンダル新聞を前提にしないと起きない事件です。現在の日本であれば、週刊誌か、ワイドショーになると思います。


 ある意味、1930年代のイギリスの風俗と、平成の御世とが、大衆レベルでは極めて類似性があることです。クリスティが愛される由縁かもしれません。成熟した大衆は、常に退屈しています。


 次回、ストーリーについて書く予定です。


(追記) 「ABC殺人事件」につきましては、2回に分けてブログに書いています。

「その1、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10362348885.html

「その2、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10362606294.html