第3687回「名探偵ポワロ全集、第10巻、ホロー荘の殺人、その1、感想」 | 新稀少堂日記

第3687回「名探偵ポワロ全集、第10巻、ホロー荘の殺人、その1、感想」

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 第3687回「名探偵ポワロ全集、第10巻、ホロー荘の殺人、その1、感想、何故だれもが疑わしい行動を取ったのか」です。


 95分ほどのドラマなのですが、事件が起きるのは、40分を過ぎた段階です。登場人物はさほど多くはありません。丹念に登場人物が描かれています。そのためか、「華麗なるアリバイ」のタイトルで、フランス映画として翻案されています。日本での公開は昨年(2010年)ですが、残念ながら観ていません。


 中心となるのは、医師のジョン・クリストウです。オンナ癖の悪い人物です。妻子もいるのですが、その癖は直りません・・・・。一方、ジョンの愛人であることを知りつつも、恋している男性がいます。殺されるのは、ジョンか、その妻か、誰が殺されても不思議でない状況が40分ほど続きます・・・・。


 殺人事件が起きましても、第一容疑者は、簡単に釈放されます。1930年代の物語なのですが、線条痕についても、指紋同様に一般に知られていたことに、ドラマは触れています。第一容疑者が、死体の傍らで握っていた拳銃のものとは一致しなかったからです。


 一方、このミステリの面白さは、多数の事件関係者が疑わしい行動を、"あえて"取っていることです。個々人に、何か目的があるのでしょうか。それとも、何らかの集団意志が働いているのでしょうか。物語を面白いものにしています・・・・。


 アガサ・クリスティは、数多くの作品を残しながらも、いずれの長編作品も、一定の水準を確保している稀有な作家です。出張とか、旅行する際には、クリスティは最高の旅の友でした。クリスティ作品群の中で、この作品を傑作としてあげる人は少ないかもしれませんが、好きな作品です。