第3639回「名探偵ポワロ全集、第4巻、アクロイド殺人事件、その2、ドラマ版ストーリーネタバレ」 | 新稀少堂日記

第3639回「名探偵ポワロ全集、第4巻、アクロイド殺人事件、その2、ドラマ版ストーリーネタバレ」

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 第3639回は、「名探偵ポワロ全集、第4巻、アクロイド殺人事件、その2、ドラマ版ストーリー、ネタバレ」です。原作につきましては、"その1"にネタバレで書いています。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10953377170.html では、このトリッキーな『アクロイド殺し』を、どう映像化したのでしょうか・・・・。


 ドラマは、銀行の金庫室から始ります。貸金庫を開いたポワロは、一冊の日記を取り出します。アクロイドを殺した犯人が遺した手記です。実に傲慢な人物であり、他者を嘲笑しています。ポワロは、手記を黙読します・・・・。ドラマの進行にともない、手記の内容がポワロの声で語られます・・・・。


 キングス・アボット村に、ポワロは隠棲しています。シャーロック・ホームズと異なり、ポワロ自身、第二の人生に確信が持てません。ただ、村の人々は、なじみの人ばかりです。あの大富豪であるアクロイドも・・・・。事件は、フェラーズ夫人の死から始まりました。


 自殺と目されたのですが、フェラーズ夫人には、とかくの噂があったのです。1年前に夫を毒殺したと・・・・。そんな夫人と親密に付き合っていたのがアクロイドです。結婚まで考えていたようです。夫人は、死の直前、アクロイドに脅迫されていたことを告げています。


 子どもに恵まれなかったアクロイドは、姪のフローラと養子のラルフ・ベイトンの結婚を熱望していました。ですが、未だに婚約さえ発表していません。業を煮やしたアクロイドは、婚約の発表を強行しようとします・・・・。そんな時に、アクロイドが殺されたのです。


 死体の第一発見者は、シェパード医師と執事のパーカーでした。パーカーから、アクロイドが殺されたとの連絡があって、再度屋敷に来たのですが、当のパーカーは、そんな電話はしていないと言います。ですが、ドアは中から施錠されています。しかし、アクロイドからの返事はありません。シェパード医師は、強引に鍵を壊し、部屋の中に入ります・・・・。


 アクロイドは首筋を刺されていました。医師は、パーカーに警察に連絡させます。屋敷の壁に内蔵されたポップな時計が、アクロイドの死の経緯を語っています。

① 9時前・・・・ アクロイドは、私室で故フェラーズ夫人からの手紙を読んでいました。その手紙には、脅迫者の名前が記されていました。シェパード医師が部屋の中にいたのですが、アクロイドは教えようとはしません。

② 9時頃・・・・ シェパード医師は、アクロイド邸を辞去します。

③ 9時半頃・・・・ 秘書のレイモンドは、アクロイドが私室で何者かと話している声を聞きます。

④ 10時10分頃・・・・ アクロイドの私室から出てきたフローラ(姪)は、執事のパーカーに声をかけています。アクロイドの「邪魔をしないように」との伝言を、パーカーに伝えます。

⑤ 10時15分頃・・・・ シェパード医師に、偽パーカーからアクロイドが殺されたとの電話が入ります。偽パーカー(犯人?)の意図は、何だったのでしょうか。ですが、このことにより、死体の早期発見につながっています。


 ポワロは、8時頃にアクロイドに至急に電話をするようにとの連絡を入れていました。ポワロには、何か気がかりがあった様です。10時30分頃でしょうか、アクロイド邸に赴きます。地元の刑事が既に到着していました・・・・。隠退したポワロは、警察から冷たくあしらわれます・・・・。


 最大の容疑者は、養子のラルフ・ベイトンです。アクロイドの巨大資産の相続人です。ラルフは、事件後失踪しています・・・・。現場は密室ではありませんでした。窓が開いていたのですが、窓の下には、ラルフの靴の足跡が残されていたのです。なぜ、ラルフは姿を消したのでしょうか。


 ポワロは、事件に躊躇(ちゅうちょ)し続けます。なにしろ、彼は引退していたのですから・・・・。ポワロがアクロイド邸に赴いたとき、聞き覚えのある声がします。ジャップ警部です。ポワロの立場が一挙に変わります。ポワロの捜査が始ったのです。"モ・ナミ"であるジャップ刑事と共に・・・・。


 ポワロは、事件関係者を訊問していきます。冒頭に掲げた「鍵になる人物」をご参照ください。しかし、事件解決の前に、執事のパーカーが殺されたのです。パーカーは、観察眼の優れた男でした。事件の真相を見抜いていたのでしょうか。


 ポワロは、事件の鍵となるラルフ・ベイトン捜査に重点を置きます。そんな時に、ラルフの身柄が確保されたとの報道が流されたのです・・・・。ポワロは、事件関係者を招集します。以下、最後まで書きますので、ネタバレになります。この間にも、何度か手記の内容が、ポワロによって語られています。


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 ポワロは、最初にメイドのアースラ・ボーンに声をかけます。「ペイトン夫人!」、ラルフ・ベイトンは、1年前に、メイドのアースラと結婚していたのです。そのため、アクロイドの熱望にも関わらず、フローラとの婚約を発表しようとしなかったのです。では、肝心のラルフは、どこに行ったのでしょうか。どこかに匿(かくま)われているのでしょうか、それとも、既に殺されているのでしょうか。


 演出たっぷりに、ポワロは、ラルフを呼び入れます。ラルフは、診療所にいたのです。診療所である以上、そこに紹介した人物は限られます・・・・。いったん、シェパード医師を除いて、全員を帰します。召集された人たちは、不満タラタラで帰っていきます。


 外で待っていたのは、シェパード医師の妹であるキャロラインでした。ドラマでは、出演機会はほとんどありませんが、原作では、クリスティが愛情をこめて書いています。いわば、ミス・マープルの分身のような老嬢です。駐車場で兄を待つキャロラインは、ダッシュボードの中から、日記と拳銃を見つけ出します。キャロラインは、日記を読み続けます・・・・。


 部屋では、ポワロは、シェパード医師に今回の事件に対する意見を聞いています。医師は、疑惑が自分に向けられていることを嫌というほど思い知らされます。ポワロによる誘導により、半ば自白ともいう状況で話し始めます。当初書いた時系列経緯を、修正する形で再掲します。


① 9時前・・・・ アクロイドは、私室で故フェラーズ夫人からの手紙を読んでいました。アクロイドが読みふけっているときに、シェパード医師は、アクロイドの首筋をナイフで突き刺します。手紙を回収した上、、ラルフが侵入した痕跡を随所に残します。

② 9時頃・・・・ シェパード医師は、アクロイド邸を辞去します。

③ 9時半頃・・・・ 秘書のレイモンドは、アクロイドが私室で何者かと話している声を聞きます。これは、録音を再生したものです。シェパードは、タイマーによって、9時半に作動するように設定していました。

④ 10時10分頃・・・・ アクロイドの私室から出てきたフローラ(姪)は、執事のパーカーに声をかけています。アクロイドの「邪魔をしないように」との伝言を、パーカーに伝えます。フローラは、実はアクロイドの部屋から出てきたのではなかったのです。フローラの虚言には、特に悪意はありません。

⑤ 10時15分頃・・・・ シェパード医師に、偽パーカーからアクロイドが殺されたとの電話が入ります。シェパードは、執事のパーカーと共に、第一発見者になる必要があったのです。録音機と時限装置を回収する必要があったからです。そのため、椅子の位置を変え、ドアからは録音機が見えないようにしています。


 パーカーは、賢明な男です。椅子の移動も、手紙の紛失も気付いています。シェパード医師の関与も疑っています・・・・。それが、パーカーが殺された理由です。もちろん、フェラーズ夫人を脅迫したのは、シェパード医師です。全てを告白した時、妹のキャロラインが入ってきます。日記を机の上に置きます。そして、バッグの中の拳銃が、兄に見えるような位置に置きます・・・・。


 シェパード医師は、拳銃を取り、逃げ出します。ジャップ刑事とポワロが追います・・・・。シェパード医師は、銃を二人に向けてぶっ放します。ジャップ警部は、冷静に残弾をカウントします。最後の一発になった時、医師は、銃を自らの頭部に押し当て、引き金を引きます・・・・。


 再度、金庫室の場面に戻ります。事件は、有耶無耶になったようです。日記(手記)は公表されませんでした。すべて、貸金庫に封印したのです。ポワロは、妹のキャロラインのために、事件の真相を秘したのです。


(蛇足) ジャップ警部は、事件の封印について、ポワロに全面的に協力したことになります。ドラマを観ただけの人には、ポワロが、なぜそこまでして、キャロラインのために、兄の犯罪を闇に葬ったのか、分かりづらいと思います。原作では、キャロラインは実に魅力的な老嬢として描かれています。