第3619回「名探偵ポワロ全集、第2巻、ABC殺人事件、その1、感想、劇場型犯罪」 | 新稀少堂日記

第3619回「名探偵ポワロ全集、第2巻、ABC殺人事件、その1、感想、劇場型犯罪」

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 第3619回は、「名探偵ポワロ全集、第2巻、ABC殺人事件、その1、感想、劇場型犯罪」です。原作につきましては、一昨年(2009年)10月11日のブログで書いています。全文、再掲します。


 アガサ・クリスティは、"ミステリの女王"である以前に、"トリックの女王"です。クリスティのトリックは実に大ネタなのですが、トリックそのものはシンプルなのです。それがかえって、後に多くのバリエーションを生み出す理由にもなっています。


 「そして誰もいなくなった」(ノン・シリーズ)、「オリエント急行の殺人」(ポワロ)、「アクロイド殺し」(ポワロ)、そして「ABC殺人事件」(ポワロ)が、クリスティ・マジックの代表作でしょうか。まさしく、イリュージョンです。ただ、そのトリックはあまりに有名すぎて、初読の際(45年ほど前)、いずれの作品も、そのトリックを知って読んでいますが・・・・。


 クリスティは、ポワロとミス・マープルというニ大キャラクターを生み出しました。パーカー・パイン、ハーリ・クィン、トミーとタペンスなどシリーズ化された探偵もいますが、やはり、ポワロとマーブルです。大ネタは一作を除きいずれも、ポワロが探偵です。ただ、「アクロイド殺し」は、ミス・マーブルが探偵でもおかしくないと思いますが。違いは次のとおりです。以前に書いたブログから引用します。


 『・・・・ふんわりとしたおばあちゃん(ミス・マープル)が、人間の深層に潜む悪を暴いていく・・・・。当然、おばあちゃんは、大き目の安楽椅子にゆったりと座り、編み物をしています。ガーデニングも大好きです。作者は、ポアロとミス・マープルの違いについて、こう書いています(「著者のことば」から、中村妙子氏訳)。


 「・・・・わたし自身はどちらかといえば、ミス・マープルのかたをもつ。彼女の本領はみじかい謎ときの場合にとくに発揮されるようだ。そういった問題がしたしみやすいやすい彼女のスタイルにぴったりするのだろう。一方、ポアロの才能を発揮するするにはどうしても長編が必要となっている。・・・・」』


 ポワロは、ベルギー人の小男です。ひげを生やし、白髪のため、染めています。世界的な探偵ですので、事件があれば容易に介入できます。口癖は、「灰色の脳細胞」。まさしく、不敗の男です、解決できなかった事件はありません(ホームズにはあります)。


 カバー裏面のストーリー紹介から引用します。

「ABCとだけ署名した匿名の挑戦状が名探偵ポワロのもとに舞い込んだ。指定の日、アンドーヴァで老婆が撲殺された。第二、第三の手紙が届き、事件は、犯行現場も被害者もアルファベット順に確実に発生し、死体の傍らには必ずABC鉄道案内が一冊置かれていた。


 相互の関連は何一つなく、ポワロは窮地に立つが、彼の頭の中には犯人の心理の輪郭がしだいに浮かびつつあった・・・・。」 次回、ストーリーをもっと細かく紹介した上、最後まで書くつもりです。当然、ネタバレとなります。


(言い訳) ポワロ・ドラマ全集、全65巻を紹介するとなりますと、どうしても原作と"かぶる"ことになります。"手抜き"みたいですが、どうかお許しください。