第3570回「サムソンとデリラ 感想、ストーリー、ネタバレ へディ・ラマー、Vマチュア主演」 | 新稀少堂日記

第3570回「サムソンとデリラ 感想、ストーリー、ネタバレ へディ・ラマー、Vマチュア主演」

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 第3570回は、「サムソンとデリラ 感想、ストーリー、ネタバレ へディ・ラマー、Vマチュア主演」です。1950年に公開された旧約聖書をモチーフとした大スペクタクルです。大映映画「釈迦」(1961年、※)のラストも、この映画のダゴン神殿(※)崩壊シーンに、大きな影響を受けているのではないでしょうか。


 サムソンは、士師のひとりです。士師とは、ユダヤ民族の指導者を指す用語であり、サムソンも「士師記」に記録されています。この映画でも、サムソンの事績はほぼ忠実になぞっていますが、セシル・B・デミル監督は、デリラの方に重点を置いています。そのことが、この映画を活き活きとしたものにしています・・・・。女優冥利に尽きる役です。


 アキレウスの踵(かかと)、サムソンの髪、英雄の持つ弱点は、古来人々を魅了してきました。サムソンの弱点は、それだけではありません。女の甘言にも弱かったのです。そういう意味で、デリラは悪女として、英雄サムソンと対極的に語られてきましたが、デミル監督は、デリラの微妙な女心に焦点を合わせています・・・・。


 映画は、ユダヤのダン族の街角から始ります。老人が、ユダヤの民の歴史を語っています。そこに、ペリシテ人の兵士がやってきて、老人を煽動の罪で殴打します。ミリアム(オリーヴ・デアリング)という女性が、老人をかばいます・・・・。サムソン(ヴィクター・マチュア)の母親は、ミリアムを息子の嫁にと考えているのですが、肝心のサムソンは、興味を示しません。


 サムソンには、愛する人がいたのです。デリラの姉であるセマダール(アンジェラ・ランズベリー)に恋していたのです。ですが、彼女はペリシテ人です。太守の許可が必要です。サムソンは、ライオンを素手で倒すことを決意します。その功により、サムソンとセマダールは結婚することになるのですが・・・・。


 結婚式の場で、ペリシテの求めに応じて、サムソンは謎々を出します。客は30人です。客が勝てば、客全員にマントを送ると約束させられます・・・・。デリラの姦計で、姉のセマダールはサムソンから謎々の答を知ります。それを客に教えたのです・・・・。


 聖書世界は実に乱暴です。賭けに負けたサムソンは、30人の通行者からマントを奪います(聖書では殺害しています)。式場に戻ったサムソンは、30人分のマントを投げ捨てます。会場は大混乱になります。セマダールは、客のひとりが投げた槍で殺されますし、デリラの父親も亡くなります・・・・。デリラは、サムソンに復讐を誓いますが、一方では、熱烈なサムソンへの愛は未だに冷めていません・・・・。


 これ以降は、サムソンは盗賊となります。別の表現をすれば、支配者民族ペリシテ人への反逆者です。ユダヤの英雄となったのです。この間の事績を、聖書では"士師"(ユダヤの民を導く指導者)として評価しているのですが・・・・。1人で、ロバのあごの骨を武器にして、1000人を殺したことも描かれています・・・・。


 デリラは、太守に、自分ならサムソンを捕らえられると豪語します。諸侯にも、報奨金の提供を約束させます。デリラは、サムソンに接触します。しつように、サムソンに強さの秘密を告白するように迫ります・・・・。根負けしたサムソンは、自分の強さをデリラに話します。「一度も切ったことのない髪を通じて、神の力が流れ込んでくる」と・・・・。


 ミリアムは、村人の危急をサムソンに伝えます。もちろん、サムソンを誘き出すための太守の姦計です。デリラは、ふたつのグラスにワインを注ぎます。そして、睡眠薬も・・・・。サムソンは、渡されたグラスではなく、デリラのグラスを飲み干します。サムソンが倒れます。


 面白いエピソードです。デリラはそこまで読んでいたのでしょうか、それとも、いずれのグラスにも入れていたのでしょうか。目覚めたサムソンは、髪を切られていることと、周囲を兵士が固めていることを知ります。サムソンは、その場で目を焼かれます・・・・。


 デリラは、太守に約束させていました。「刃をあてることで、サムソンを決して傷つけないこと」 兵士たちは、目をくりぬいたのではなく、高温に熱した剣を、目に近づけ失明させたのです(聖書では目をくりぬいています)。盲(めし)いたサムソンは、石臼で小麦粉を引き続けます・・・・。その様子を、ペリシテ人があざ笑います。


 姦計で陥れたとはいえ、デリラのサムソンへの愛は衰えていません。デリラは、言葉尻を捉えられて、太守から騙されたことを知ります。サムソンをさらに笑いものにするために、ダゴン神殿に連れて行かれます。一方、サムソンの髪は再び伸びており、力が蘇っていたのです・・・・。


 ダゴン神殿には、多数の高官と市民たちが集っていました。デリラの誘導で、サムソンは、神殿の石柱の位置に連れて行ってもらいます。上部には、巨大ダゴンの彫刻が飾られています。サムソンは、柱に力を加えます。観客は、あざ笑います。ですが、次第に石柱が動き始めたのです。そして、・・・・。スペクタクルです。


 次々と、基礎部分を壊された神殿は、崩壊していきます・・・・・。市民も、高官も、巨大な石が押し潰していきます。サムソンも、デリラも押し潰されます。場面は変わり、ダゴン神殿の廃墟に、ミリアムと少年が佇みます・・・・。


(補足) 冒頭の絵画は、ルーベンス「目をえぐられるサムソン」です。ウィキペディアから引用しました。クリックすると大きくなります。


(追記1) ペリシテ人が崇めた"ダゴン"とは、半人半魚の姿をしています。20世紀の作家ラヴクラフトは、「インスマウスの影」に、古代神を投影させています。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10790355575.html


(追記2) 大映映画「釈迦」は、仏教者ならずともオススメの映画です。かつての日本映画の栄光が、ひしひしと迫ってきます。2回に分けてブログに書いています。

「その1、感想」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10696186093.html

「その2、ストーリー」 http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10696388829.html