第3490回「プリンセス・トヨトミ その1、感想、大阪弁は死んだ、万城目学原作」(伝奇SF映画) | 新稀少堂日記

第3490回「プリンセス・トヨトミ その1、感想、大阪弁は死んだ、万城目学原作」(伝奇SF映画)

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 第3490回は、「プリンセス・トヨトミ その1、感想、大阪弁は死んだ」(伝奇SF映画)です。大阪万博(1970年)に行きました時、大阪の普通のおばさんがしゃべっている大阪弁に感動したことがあります。実に美しく、ていねいな言葉だったのです。


 東京の電車内でしゃべっている汚い大阪弁とか、ミヤネ屋のインタビューに答えるオバハンたちのしゃべり方とはまるっきり異なる大阪弁でした。2枚目の写真は、浪花千栄子さんです。出身は河内なのですが、若い頃の苦労のためか、伝統的な船場言葉で、実にキレイな大阪弁でした。


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 ただ、河内の方でも、ビジネスで大阪弁を話す必要がある方は、きれいな大阪弁を話されていました。良くも悪くも、吉本興業の漫才言葉が、かつての大阪弁を駆逐したのかと思います。本来の大阪弁には、丁寧語もあれば、尊敬語もあります。明治維新時、大坂が日本の首都になっていましたら、美しい標準語になったのではないでしょうか。


 映画は実にシンプルなストーリーです。物語は、予定調和の中、エンディングを迎えます。原作を読んでいなくても、映画を観ているうちに、次第に結末の予想はつきます。ですが、そのことが映画の面白さを減じることはありません。楽しい2時間が過ごせます。


 舞台は、タイトルが示していますように、大阪です。主要登場人物には、武将の姓が使われています。松平、鳥居、真田、長宗我部、蜂須賀、・・・・。シナリオは、笑える内容になっています。キャストも、カメオ出演ながら、玉木宏さんを、たこ焼き屋のあんちゃん役に使うなど贅沢です。「ねえちゃん、落とさんように」、玉木さんが綾瀬はるかさんに話しかけるセリフです。当然、"ねえちゃん"は落とします・・・・。


 原作は、パラレルワールドに近い雰囲気なのですが、映画化作品では、SF的な設定を意識せずに観られます。ただ、「希薄な父と息子の絆とは何か」を、中心テーマに据えています。極めてテーマ性の高い取り上げ方です。ある意味、"宗教的"だとも言えます・・・・。


 「その日、大阪が全停止した」、いいコピーです。何故、大阪は停止したのか、そこに作為はあったのか、あったとすれば、その意図・目的は・・・・。大阪のオッサンだけでなく、東京のお父さんにも観てもらいたい映画です。四国のジイサンは、昨日観て来ました。プロットに矛盾はありますが、あえて些事だと言いうるほど面白いストーリーです。


 次回、ストーリーについて書く予定です。


(補足) 浪花千栄子さんは、キレイな船場言葉を話すと書きましたが、多くの役は、普通の大阪のお母さん役が多かったと印象に残っています。ホウロウ製の看板は、私の子どもの頃には、路地などでも多数見かけました。オロナイン軟膏は、当時家庭の常備薬でした。私も、擦り傷、切り傷が絶えませんでしたので、随分やっかいになりました・・・・。