第2851回「十角館の殺人、その3、ストーリー(十角館連続殺人事件)、ネタバレ 綾辻行人著」 | 新稀少堂日記

第2851回「十角館の殺人、その3、ストーリー(十角館連続殺人事件)、ネタバレ 綾辻行人著」

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 第2851回は、「十角館の殺人、その3、ストーリー(十角館連続殺人事件)、ネタバレ 綾辻行人著」です。"青屋敷四重殺"につきましては、島田潔は、ひとつの解答に至りました。そのことにつきましては、"その2"に書いています。http://ameblo.jp/s-kishodo/entry-10728698727.html


 青屋敷と同じ角島にある"十角館"に、推理研の7人が集結したところから、今回は書き始めます。

 『 角島の十角館に集まった7人は、海外推理小説家の名前で呼ばれています。ヴァン(・ダイン)、(バロネス・)オルツィ、(エドガー・アラン・)ポウ、(ガストン・)ルルウ、(ディクスン・)カー、アガサ(・クリスティ)、エラリイ(クイーン)は、お互いを、作家名であるニックネームで呼び合います。


 十角館は、名前が示すとおり、十角形をしています。センターに十角形のホールがあり、10の各辺がドアになっています。10のドアのうち、7つが客室、ひとつが厨房、ひとつが洗面所兼浴室兼トイレ、ひとつが玄関になっています。7人は、まず自分の部屋を決めます・・・・。 』("その1"から再掲)


 合宿の準備をしたのは、ヴァンです。先行して、島に乗り込んでいます。彼の不動産屋の伯父が、この島を買収していたのです。合宿の企画は、ルルウとエラリイが行っています。男5人、女2人(アガサとオルツィ)、計7人による合宿です。1日目は、特に問題はありませんでした。


 2日目に入ると、ロビーのテーブルに、7枚のプラスティックのプレートが置かれていました。それぞれには、"第一の被害者"、"第二の被害者"、"第三の被害者"、"第四の被害者"、"最後の被害者"、"探偵"、"殺人犯人"と書かれています。冗談かと思ったのですが・・・・。なお、彼らが出発した時には、死者である中村青司からの手紙は、まだ届いていません。


 3日目、殺人が始ります・・・・。

① オルツィ・・・・ 文学部2年生、おとなしい性格であり、自分に自信が持てません。同じ女性であるアガサにコンプレックスを感じています。中村千織とは、仲のよい友人でした。そんな彼女が、最初の犠牲者になります。左手を切り取られていました。殺害方法は、絞殺です。ポウは、被害者が女性であることを理由に、死亡確認は、一人で行い、全員を締め出しています。


② カー・・・・ 法学部3年生、攻撃的な性格なため、トラブル・メーカー的な存在となっています。そんな彼が、全員でコーヒーを飲んでいるときに、突然苦しみだし、嘔吐します。数時間後、医学部生であるポウに見とられながら亡くなります。毒殺です。では、犯人は毒をどのようにして入れたのでしょうか。第2の被害者です。カップは、盆から、各人が適当に取っていました。


 4日目、エラリーが、中村青司生存説を打ち出し、全員で島内を調べます。青屋敷の地下を侵入しようとした時、縦階段に仕掛けられたテグスによって、エラリイは転落します。ですが、捻挫程度で済みます。疑心暗鬼が、全員に広がります。


 5日目、事態が急変します。

③ ルルウ・・・・ 文学部2年生、推理研の会誌編集を担当しています。性格的には、おとなしいタイプです。5日目、昨日飲んだ睡眠薬のため、もうろうとした状態で起きだします。そのまま、戸外に出て行ったのですが・・・・。青屋敷跡で、撲殺死体として発見されます。足跡から判断すると、明らかに、海から上がってきた何者かによって、殺害されたようです。


④ アガサ・・・・ 薬学部3年生、美貌と知性の女性です。ですが、今回の事態に、自信を喪っています。気分を引き立てるために、化粧室で、濃い目のルージュをつけようとしたのですが・・・・。口紅には、毒が塗られていました。そのまま、息絶えます。発見者は、ヴァンです。遺体は、ルルウより先に発見されています。


 生き残っているものは、7人中3人です。エラリイ、ヴァン、ポウの3人、プレートの内容が正しければ、いずれかが、、"最後の被害者"、"探偵"、"殺人犯人"となります。ここで、再度エラリイは、"中村青司"生存説を強調します。その場合、全員殺害、"そして誰もいなくなった"ということにもなりかねません。


 3人は、犯人探しを行います。ここまで煮詰まってきますと、お互いがお互いを疑う状況になりかねません。そんな中、ポウに異変が生じます。


⑤ ポウ・・・・ 医学部4年生、冷静な人物、これまでの殺人事件では、簡単な検視を行っています。死因は、タバコに仕込まれた毒物によるものです。


 生き残ったものは、エラリイとヴァンのみ、いずれかが犯人であり、探偵なのでしょうか。ですが、深夜、十角館は炎上します。その燃える様子は、本土からも眺められました・・・・。以下、最後まで書きますので、ネタバレとなります。


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 発見された遺体は、6体です。検視の結果、合宿に参加した"6名"の氏名が判明します。合宿には、6名しか、参加しなかったのです(ええっ?)。6日目、本土側に、3人の探偵(?)が集まります。前回から再掲します。


⑥ 島田潔・・・・ 寺の三男坊で、ひょろりとした体型をした30男です、一応無職です。本格ミステリに登場する名探偵とは異なり、推理過程を気楽に話します。


⑦ 湖南孝明・・・・ 好奇心の強い青年です。推理研に所属していましたが、雰囲気が気に入らず、辞めています。千織がなくなった時には、早めに切り上げています。島田の探偵癖を刺激したのは、彼でした。


⑧ 守須(もりす)恭一・・・・ 推理研に所属しているが、角島の合宿には参加していません。モーリス・ルブラン? 彼にも、手紙が送られていました。湖南に刺激され、最初は手紙に隠された謎を探ることに熱心でしたが、不謹慎であることと、趣味の絵("国東半島の磨崖仏")を描くことで忙しいとの理由により、"探偵"からは抜けています。


 島田潔は、守須に、推理研での愛称を聞きます。守須は、答えます。「モーリス(・ルブラン)ではなく、ヴァン」です。読者は、ここで守須が犯人だったことを知らされます。第7日目、守須の回想が始ります・・・・。事前準備と個々の犯行が、詳細にトレースされていきます。


 十角館の7室の客室のうち、1室は雨漏りのため使えなかったのです。参加メンバーには秘密にしていましたが、第三者には、ヴァンは参加しなかったことになっていたのです。あとは、湖南を使って、アリバイ作りをすることになります。本土と角島との往復は、ゴムボートを使っていました。


 合宿の参加者の間では7人、第三者には6人、これが本書での最大のトリックです。動機は、中村千織のための復讐でした。オルツィの左手を切断したのは、千織の遺品である指輪が、指に食い込んでいたためです。リングの内側には、ヴァンと千織のイニシャルが彫られていました・・・・。


 そして後日、島田潔は、海辺にたたずむ守須のもとにやってきます。何か、話があるようです。守須は、自分の犯行に自信があります。反論すべく、島田に向かって歩き始めたのですが、足元に、"あの瓶"(プロローグ)が落ちていたのです。守須は、これが運命(神の裁き)だと諦観します・・・・。


(蛇足) 庭師の遺体は、十角館の地下で、半ば白骨死体で発見されました。このことによって、青屋敷四重殺人事件における"中村青司"犯人説が裏付けられました。