第2296回「戦争論、第15、16章 自己犠牲と正義 小林よしのり著」(政治漫画) | 新稀少堂日記

第2296回「戦争論、第15、16章 自己犠牲と正義 小林よしのり著」(政治漫画)

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 第2296回は、「戦争論、第15、16章 自己犠牲と正義 小林よしのり著」(政治漫画)です。


 「第15章 痛快な戦争体験」

 「戦争論」中、最も長い章(64ページ)です。実在の人物である高村武人さんという方の戦争体験です(出版当時、既に78歳になっています)。幼年学校から士官学校を卒業し、パラオを振り出しに、南方戦線を転戦し、ビルマに至ります。そこで、内地勤務になりますが・・・・・。残った兵士たちは、1年後全滅します。そして、終戦を迎えます。


 このエピソードのどこが痛快なのか分りかねます。高村さんの日記を漫画で再現したものですが、当然高村さんの同意を得てのことと思います。戦争体験について、真に聞くべきものを持つ者は語ろうとしません。戦争肯定・否定にしろ、その沈黙の証言者の言葉を聞きたいものですが、しゃべるわけがありません・・・・・。高村さんの個人的な体験が、果たして"痛快な戦争体験"と言えるのでしょうか。


 ごーまんかましてよかですか、「今の人々には"死ぬことに生き甲斐を感ずる"なんてことは絶対にわかるまい    それどろかきみたちは生きることにすら生き甲斐を感じられないんじゃないか?」


(補足) 写真は、インパールで従軍するグルカ兵です(ウィキから引用)。著者は、インパール作戦については言及していません。牟田口廉也中将とインパール作戦、とても痛快とはいえません。ウィキペディアから、一部引用します。


 『 戦後は東京都調布市で余生を送った。インパール作戦失敗の責任を問われると、「あれは私のせいではなく、部下の無能さのせいで失敗した」と牟田口は頑なに自説を曲げずに自己弁護に終始した。さらにラジオやテレビ、雑誌などで、機会さえあれば同様の主張を繰り返している。・・・・ 』


 公務員の責任を問えないことは、戦前も、戦中も、戦後も同じです。牟田口中将の戦後の発言も、戦争に対する証言です。「インパールは、すべて無能な部下がやったことだ」


 「第16章 自己犠牲の戦争体験と正義」

 著者は、知人の戦争体験を紹介します。そして、戦争に対する感じ方が異なることを描写していきます。さらに、東条英機の「戦陣訓」を批判しますが・・・・。やはり、洗脳という点にこだわります。


 ごーまんかましてよかですか、「その電極をはずせ日本人!  日本の戦争に正義はあった!  祖父たちの物語を守るべきだ!」