~取り戻せない過去と空気の読めない猫~
「……はぁ、はぁ…まさか、自分と戦うことになるとは思いませんでしたよ。」
メガネを押さえながら、ため息を零す青年、ヒューバート・オズウェル。
「……はぁ、はぁ…そういうな、ヒューバート。…俺だって訳がわからない。」
ヒューバートの後に続いたのは、ヒューバートの兄、アスベル・ラント。
性こそは違うが、正真正銘の実の兄弟。
「あたしもさすがに全速力で逃げるのは疲れたー!にしても、やたら強かったよね~。アスベル、弟くん、弱くなったの?」
「ちょ、パスカル!!」
腕を頭の後ろに組んで、パスカルと呼ばれた女性はケタケタ笑う。
彼女の言動に地味に傷付いた兄弟は、無言で立ち尽くしていた。
「もう、パスカル!おじいちゃんも言ってたけど、この場所は不思議な場所なんだから、今のアスベル達より昔のアスベル達が強いのはしょうがないでしょ!」
フォローを入れたつもりの女性、シェリア・バーンズの言葉は、さらに兄弟の傷を深くした。
「…ヒューバート、剣の訓練をしないか。」
「……そうですね、付き合いましょう。」
トボトボと剣を持ち、彼等は歩いて行った。
その寂しそうな背中を見たシェリアは、慌てながら怒り出す。
「もう、パスカルのせいなんだから!」
「そっかな~。最後のトドメはシェリアだった気がするけどなぁ。」
子供の頃。
思いついたら即行動!の兄を持ったからこそ、自分がしっかりしなければならないと思っていた。
自分がしっかりしないと、これから先の兄の面倒を見ていけない…そう思っていた。
しかし、ソフィとリチャード王子と出会って間もなく、兄弟は離れ離れになった。
弟、ヒューバート・ラントは、ストラタにあるオズウェル家に養子を出されたのだった。
「…昔の自分なんて、見たくありませんね。」
兄との稽古を終えたヒューバートは、木の影に座る。
「…七年前のあの時、ゾーオンケイジで戦った小さな僕と同じ力があれば…僕は守れたのだろうか。」
あの時のソフィを、兄を、シェリアを…恨んでいた父を。
自らが愛用する双剣を手に取り、ヒューバートは瞳を閉じる。
…今はもう会えない、愛する父を想う為に。
「おっとうとく~ん!」
「うわぁぁ!?」
静かに瞑想していたヒューバートの後ろから、先程空気が読めなかった女性、パスカルが大きな声で声をかけた。
「な、な、な、な、パ、パスカルさん!いきなり何なんですか!?」
ヒューバートは余程驚いたのか、心臓の鼓動が速くなっている。
「なんか面白いのないかなぁって思ったら、弟くんを発見したんだ。」
面白い…なんとも複雑な言われように、ヒューバートはため息を零す。
「で、弟くん。何してたの?」
「休んでいただけですよ。」
あの人を想いながら。
「大丈夫だよ!次は小さい弟くんに勝てるよ!」
「本当にあなたと言う人は…。」
このパスカルと言う人物は、遠慮がない。
というか、気遣いが出来ない。
頭はいいのに、気遣いといった思慮が欠けている。
さらに言えば、お風呂が嫌いで、臭えば入るという女子力もない。
シェリアみたいな女性と比べれば、女性としてどうだろう?と疑問を抱く。
…でも。
「でもさ、やっぱり兄弟っていいよね!あたしもお姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんがいて良かったよ!」
兄を恨んだ事もあった。
姉に、恨まれた事もあった。
それでも、大切に想うのは血の繋がり故か。
「弟くんはそう思わない?」
「…まぁ、いないよりは…いた方がいいのではありませんか。」
素直じゃないなぁ、とパスカルは笑う。
…いつからだろう。
彼女の笑顔に目が行くのは。
彼女の声が聞きたくなったのは。
「あたし、今度ゾーオンケイジに行ったら、小さい弟くんに教えてあげようかな!弟くんは、おっきくなったらかっこよくなったってね!」
何も考えずに、殺し文句をはくパスカルに、ヒューバートは頬を染める。
「…僕も教えてあげなけれはいけませんね。」
「ん?何を?」
頭が良くても、空気は読めない、遠慮がない、風呂にも入らない、こんな女子力のカケラもない人を、こんなにも好きになる事を。
長期戦になる、という覚悟を。
「秘密です。」
「え~!!何何!?教えてよ~!」
恋する、楽しさをね。
「……はぁ、はぁ…まさか、自分と戦うことになるとは思いませんでしたよ。」
メガネを押さえながら、ため息を零す青年、ヒューバート・オズウェル。
「……はぁ、はぁ…そういうな、ヒューバート。…俺だって訳がわからない。」
ヒューバートの後に続いたのは、ヒューバートの兄、アスベル・ラント。
性こそは違うが、正真正銘の実の兄弟。
「あたしもさすがに全速力で逃げるのは疲れたー!にしても、やたら強かったよね~。アスベル、弟くん、弱くなったの?」
「ちょ、パスカル!!」
腕を頭の後ろに組んで、パスカルと呼ばれた女性はケタケタ笑う。
彼女の言動に地味に傷付いた兄弟は、無言で立ち尽くしていた。
「もう、パスカル!おじいちゃんも言ってたけど、この場所は不思議な場所なんだから、今のアスベル達より昔のアスベル達が強いのはしょうがないでしょ!」
フォローを入れたつもりの女性、シェリア・バーンズの言葉は、さらに兄弟の傷を深くした。
「…ヒューバート、剣の訓練をしないか。」
「……そうですね、付き合いましょう。」
トボトボと剣を持ち、彼等は歩いて行った。
その寂しそうな背中を見たシェリアは、慌てながら怒り出す。
「もう、パスカルのせいなんだから!」
「そっかな~。最後のトドメはシェリアだった気がするけどなぁ。」
子供の頃。
思いついたら即行動!の兄を持ったからこそ、自分がしっかりしなければならないと思っていた。
自分がしっかりしないと、これから先の兄の面倒を見ていけない…そう思っていた。
しかし、ソフィとリチャード王子と出会って間もなく、兄弟は離れ離れになった。
弟、ヒューバート・ラントは、ストラタにあるオズウェル家に養子を出されたのだった。
「…昔の自分なんて、見たくありませんね。」
兄との稽古を終えたヒューバートは、木の影に座る。
「…七年前のあの時、ゾーオンケイジで戦った小さな僕と同じ力があれば…僕は守れたのだろうか。」
あの時のソフィを、兄を、シェリアを…恨んでいた父を。
自らが愛用する双剣を手に取り、ヒューバートは瞳を閉じる。
…今はもう会えない、愛する父を想う為に。
「おっとうとく~ん!」
「うわぁぁ!?」
静かに瞑想していたヒューバートの後ろから、先程空気が読めなかった女性、パスカルが大きな声で声をかけた。
「な、な、な、な、パ、パスカルさん!いきなり何なんですか!?」
ヒューバートは余程驚いたのか、心臓の鼓動が速くなっている。
「なんか面白いのないかなぁって思ったら、弟くんを発見したんだ。」
面白い…なんとも複雑な言われように、ヒューバートはため息を零す。
「で、弟くん。何してたの?」
「休んでいただけですよ。」
あの人を想いながら。
「大丈夫だよ!次は小さい弟くんに勝てるよ!」
「本当にあなたと言う人は…。」
このパスカルと言う人物は、遠慮がない。
というか、気遣いが出来ない。
頭はいいのに、気遣いといった思慮が欠けている。
さらに言えば、お風呂が嫌いで、臭えば入るという女子力もない。
シェリアみたいな女性と比べれば、女性としてどうだろう?と疑問を抱く。
…でも。
「でもさ、やっぱり兄弟っていいよね!あたしもお姉ちゃんが大好きだから、お姉ちゃんがいて良かったよ!」
兄を恨んだ事もあった。
姉に、恨まれた事もあった。
それでも、大切に想うのは血の繋がり故か。
「弟くんはそう思わない?」
「…まぁ、いないよりは…いた方がいいのではありませんか。」
素直じゃないなぁ、とパスカルは笑う。
…いつからだろう。
彼女の笑顔に目が行くのは。
彼女の声が聞きたくなったのは。
「あたし、今度ゾーオンケイジに行ったら、小さい弟くんに教えてあげようかな!弟くんは、おっきくなったらかっこよくなったってね!」
何も考えずに、殺し文句をはくパスカルに、ヒューバートは頬を染める。
「…僕も教えてあげなけれはいけませんね。」
「ん?何を?」
頭が良くても、空気は読めない、遠慮がない、風呂にも入らない、こんな女子力のカケラもない人を、こんなにも好きになる事を。
長期戦になる、という覚悟を。
「秘密です。」
「え~!!何何!?教えてよ~!」
恋する、楽しさをね。