車の公式シャシー編その1
シャシー
回転運動の運動方程式
ヨー慣性モーメントIz=Mm/γ=κ^2m
ヨー慣性半径係数κN=√(Iz/(lf・lr・m))
x軸回りの慣性モーメントをロール慣性モーメントといい式で表すと、Ix≈mh^2
y軸回りの慣性モーメントをピッチ慣性モーメントIyと呼び、Ixの0.85倍程度である。
尚、Izはタイヤの質量や慣性モーメントを含むのに対して、Ix,Iyは含まない。
コーナーでの遠心力
遠心力[kg]=車両重量[kg]/9.8[m/s^2]・(速度[m/s]^2/曲率半径[m])
ステア特性と旋回挙動
ステア特性によって加速旋回時の走行軌跡が変わる。
速度を少しずつに増した時の旋回半径は、
R/R₀=1+KsV^2
ここでKs:スタビリティファクター V:車速 で表わされる。
Ks=m/2ℓ^2(ℓr・Cpr-ℓr・Cpf/(Cpf・Cpr)
ここでCpr:前輪コーナリングパワー Cpr:後輪コーナリングパワー
m:車体重量
Cs:操安性キャパシティー
Cs=(Cp,f+Cp,r)/2M+((Cp,f・ℓf^2+Cp,r・ℓr^2)/2Iz
Cp,t:前輪コーナリングパワー Cp,r:後輪コーナリングパワー
ℓf:前輪~重心点距離 ℓr:後輪~重心距離 M:車両重量 Iz:車両ヨー慣性
コーナリング時の内外輪荷重移動
遠心力は重心点に働き、コーナリングフォースは接地点に働くので、ロールモーメントを生じることになる。
その大きさは重心点高さをH[m],車両重量をW[kg],加速度をay(G)とすると、
遠心力F=W・ay=コーナリングフォースの4輪分合計
ΔW=M/T=W・ay・H/T
コーナリングのΔWは内輪から外輪であるが、加速時は前輪から後輪への荷重移動である。
スリップ率S
S=見掛けのスリップ速度/タイヤ回転速度
発進時の力
発進時には前輪を持ち上げ後輪を押し下げる力が働く、F・R/L(R:タイヤ半径 L:ホイールベース)
前進力Fは、サスペンションアームを介して車体後部をF・tanθで押し下げる。
発進時には慣性力も働き、駆動力が車両中心点に働くことになる。F・H/Lの力(H:重心高)
従って、車体姿勢の変化はこれらの3つの力が働くことになる。
スカットをゼロにするには、スカット力とアンチスカット力が等しくするようにすればよい。
即ち、F・R/L+F・H/L=F・tanθ となるようにリンク配置でθをを決めればよい、この式を整理すると、
(R+H)/L=tanθ となる。
トーシションバースプリング
トーシションバースプリングはばね鋼を捻って使うバネで、長さℓ,直径dの中実断面のトーシションバーの
バネ定数ktは、横弾性係数をGとしてkt=πd^4・G/32ℓとなる。(G:ばね鋼の場合=8000kg/mm^2)
この撓みの小さな線形範囲で、その先端のバネ定数kは、
k=kt/R^2=πd^4・G/32ℓR^2 となる。
リンク先端P点の上下方向のバネ特性δ=Rsinα F=T/Rcosα
アーム振り上げ角αの時のバネ定数kは、
k=dF/dδ=kt(1+α・tanα)(1/(R^2・cos^2・α))
コイルスプリングバネ
線径dとして、
d^3=8FD/π・τ₀
τ₀:許容応力(ばね鋼=110kg/mm^2)
D:スプリングの中心径
有効巻数n
n=Gd^4/8kD^3
G:横弾性係数(ばね鋼=8000kg/mm^2)
応力及びバネ定数は修正係数κを用いて、次式のように修正する。
τ=κ・τ₀=κ・8DF/πd^3
ここで、κ=(4c-1)/(4c-4)+0.615/c c=D/d
または、κ=F/δ=Gd^4/8nD^3 となる。
リンクレバー比とバネ定数
1.スプリングをアクセルハウジングにマウントする場合
Kw=Ks
2.スプリングをリンクにマウントする場合
Kw=(b/a)^2・Ks b/a:リンクレバー比
固有振動数(スプリング固さを判断する)
f=(1/2π)√(9800・κ/W)
κ:ばね定数[kg/mm]
W:荷重[kg]
ショクアブソーバー
減衰力発生の原理(オリフィス通過時の流体抵抗)
オリフィス通過時の圧力差と流量の関係
P₁-P₂=ρ/(2Cd^2)(Q/a)^2
F=S・(P₁-P₀) Q=S・v 従って、F=1/2ρ(S^2/(Cd^2・a^2))V^2
Cd^2:流量係数
ρ:液体速度
減衰力発生の原理(バルブ通過時の流体抵抗)
F=KV^(2/3)
K:定数
Cc:臨界減衰係数(動きが振動的にならない限界の減衰力の大きさ)=2√(κ・W/9.8)
κ:スプリングのバネ定数[kg/m]
W:荷重[kg]
減衰比C/Cc=C/2√(κ・W/9.8)
キャビテーションと減衰力の追従性
ピストン速度が速いと、リザーバー室からピストン下室へ流れる油が追従しなくなり
キャビテーションが発生する。
キャビテーション発生限界は、
Pr-P₂=ρ/(2Cd^2)(Ar^2/a₀^2)V^2
a₀:ピストン下室~リザーバー室連絡断面積
P₂=0
従って、
Pr=ρ/(2Cd^2)(Ar^2/a₀)V^2 となるピストン速度が限界スピードである。