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著者は1000人以上の死を看取って来た緩和医療医の大津秀一氏。
今際の際に発せられる人間の心底からの叫びが心に響くと同時に
私と同年代とは思えない卓越した文章能力と、超越したとも言える死生観は読み応えがあります。
個人的に興味深く拝読させて頂いたのは、以下の章でした。
健康を大切にしなかったこと
自分のやりたいことをやらなかったこと
感情に振り回された一生を過ごしたこと
他人に優しくなかったこと
自分が一番と信じて疑わなかったこと
自分の生きた証を残さなかったこと
神仏の教えを知らなかったこと
愛する人に「ありがとう」と伝えなかったこと
実は私も半年ほど前に体調を崩し、人生について考えさせられた時がありました。
積年の無理が祟り、肝臓と心臓に問題が発覚した後、更に日課となっているトレーニングで右膝の後十字靭帯を再度断裂と、身体面でのアクシデントが次々起こったのです。
トレーニングは気力の充実とメニュー次第でどうにでもなりますが、心臓と肝臓の問題は気力でどうこうという問題ではありません。
特に飲酒を制限されてしまったのは辛く(これは飲める方には共感頂けると思いますが)、人生の楽しみが半分になってしまったと、当初は嘆いてばかりおりましたが、半年ほど経過した頃に変化が現れ始めました。
週に一回少量許されている飲酒が非常に貴重で楽しみな会となり、お客様にも楽しんで頂く為にどんな食事にするか、どんなワインをチョイスしようかなどを真剣に考えるようになり、宴席の質が上がったと感じるようになりました。
また、深酒が出来なくなってからというもの、帰宅が早くなったことで夫婦仲もより円満になり(笑)、体調も良くなりと、プラスの面も次々に顕在化してきました。
そして何より仕事の面でのプラスが大きかったと感じています。
朝の僅かな遅刻がなくなり、集中力も早朝から持続するようになり、読み残した新聞や経済紙、経営課題を再考する時間が出来るなど、これはこれでよかったのだと、徐々にポジティブに捉えられるようになりました。
つまり、この経験により人生をどの角度からどう捉えるのかによって、見え方は大きく変わるのだと改めて痛感したのです。
本に描かれているように、私もきっと今際の際に幾つかの後悔はするのでしょうが、生きてきて良かったと言える人生にしたい。せめて私の周りの仲間やお客様には、あの人がいてくれて良かったと言われる人生にしたい。
読了後、仕事もプライベートも人生を謳歌しなければと強く思念致しました。