お盆休みも明け


ついに その金曜日…



約束の店へと 足を運ぶ薫

結婚してから 数年…

女性と2人きりで デートみたいな時間を過ごしたことは なかった


しかし 相手は 会社の部下
平静を装うしかない…


先に店に着いた 薫は 落ち着く為に
タバコに火を付け 水を口に含み 深く深呼吸をした

そのタバコが 燃え切る頃に
紗希が『スイマセンお待たせしちゃいました?』と言いながら 合い向かいの椅子へと 座った

約束の時間5分前だった


そして
薫が『あっ… 何頼みますか? とりあえず 飲み物を…』



2人が 注文したのは
生ビール


仕事上がりの2人は
『お疲れ様でした~』の 声に合わせて グラスを合わせる

徐々に料理を頼み
日頃の会社での出来事で会話を進めていた2人

お互いに 生ビール4杯目にさしかかった時に

薫『こんなとこ 紗希さんの彼氏にでも 見られたら ヤバいッスよね?』

紗希『何それ?イヤミですか?? 彼氏なんて いないし そもそも 逆じゃないですか!! 奥さんにバレたら ヤバいですよね… 無理に誘っちゃってスイマセン』


薫『 大丈夫 今日は会社の同僚と飲みに行ってくる って言ってきたし 事実 紗希さん 会社の仲間だし 嘘ついてないし』

そう 薫は普段 家では 愛妻家で子煩悩
時に こんな状況でも 疑われる心配は 一つもなかった………



紗希『今日は 薫さんに 一言 言いたくて 無理にお願いしちゃいました ずーっと言いたかった一言 言ってもいいですか?』

笑いながら 薫が言った『仕事の苦情とか パソコンをちゃんとやれ とか 無しですよ』

紗希『違います!!』と ちょっと むっとした




紗希『 言いますよ!?』


薫は 耳をふさいで おどけてみせた… 『どうぞ』


紗希は テーブル越しに その薫の両手を耳から離して
微笑みながら
『ちゃんと 聞いてください』
と 言った…


薫は『あっ とりあえず 飲み物頼みましょう! 何飲みますか!?』と 少し はぐらかした…


この時 すでに 紗希から どんな言葉が 出てくるか なんて
薫は 気づいていたからだ…