野夜鷹さんのミスターに関するコメに触発されて(←またこのパターンww)、ちょっと書いてみましょうかねっと。

先の記事にて、クオーツがどのようなものかは書きましたので、割愛させていただきます。

『あんな駄文じゃわかんねーよ、バカヤロウ』という方は、根掘り葉掘りお聞き頂ければ、納得いただけるまでご説明いたしますので、いつでもおっしゃってください。

夢の中にまでステップ運針の音が聴こえて来るまでお話させていだたきますww

先の記事にも書きました、セイコーが初めて実用化に成功したクオーツ式の腕時計は、42年前の1969年に誕生いたしました。

当時の価格で45万円。

今の価値に換算すると、100万円近いか、それ以上でしょう。

パテック・フィリップのエントリーコレクションが購入できるかもですね。


さて、クオーツは、電池からの電流で云々はお分かりいただけたかと思います。


しかし、アストロン以前にも、電池で動く腕時計は存在しました。

ハミルトンの『ベンチュラ』と、ブローバの『アキュトロン』です。

ベンチュラは電池を使いモーターを回す、初の腕時計、アキュトロンは、クオーツではなく、音叉の振動を利用して精度を出す方法を取りました。

昨年、アキュトロンのスケルトンモデルが復刻されたのは記憶に新しいことでしょう。

ハミルトンはスイスに拠点を移し、ブローバはシチズンの子会社になる事で、ある程度の変化はありました。

が、共にアメリカンスピリッツ溢れる自由なコンセプトを披露してくれる、良い会社だと思います。


が、結局の所、様々な理由から(この辺りの説明、複雑なので割愛)、クオーツが一般的なものとなります。

現在の腕時計のほとんどがクオーツ式であり、生産本数は機械式を圧倒します。

理由としては

①電子機器であることから、生産ラインがオートメーション化でき、低コストで大量生産できる。

②薄型に設計でき、快適な装着感を得られるコレクションを生産できる(スカーゲンのコレクションなど)。

③低コストで使い勝手が良い事から、廉価に販売できる。ユーザーも、ファッションや実用ツールとして、手軽に購入できる。

④機械式にすると高額になる複雑機構を電子制御することで、圧倒的な低価格で販売できる(1万円台でクロノグラフが購入できる)。

⑤ムーブメントを小型化する事で、機械式では不可能なサイズのレディスウオッチを生産できる。

⑥機械式では困難なデジタル表示のコレクションを生産できる。


本格的な高級メゾンが安易にクオーツを生産する事について、疑問を持つこともありますが、手軽さと言う面においては機械式を圧倒する使い勝手の良さがあります。

また、品質面は考えないでおくと、中国などですら、数百万本のクオーツを生産し、輸出しています。

ノンブランドや100均、露天の1000円程度のクオーツは、ほとんどがコレに当たります。


これらのことについて、色々と問題提起したのが『時計Begin(Vol.54)』。

機械式はエコだと絶賛し、徹底的にクオーツを叩いているのは非常に不快痛快です。

なお、この雑誌、Vol.65の158ページで、『クオーツだっていいじゃないか!』という連載を始めました。

Vol.50のETAに関する特集ではユニタスを絶賛しつつ、Vol.57の36~37頁では人気のある『汎用ムーブ』だが問題だらけとこき下ろし。

余談になって申し訳ありません。

この雑誌、売り上げはトップですが、矛盾だらけのメディアですので、鵜呑みにしたら痛い目に合うことを断言しておきます。

最終的には自分が信じた時計を購入しましょう。


さて、話を戻します。

基本的に、クオーツ式のムーブメント(内部の機械)は、修理を前提とせず、廉価なものはモジュールそのものを交換と言うのが基本です。

それどころか、時計そのものを買い替えです。

プラスチックなど、経年劣化で簡単に壊れてしまう腕時計が存在する事からも、その事は明らかです。

コレについて色々な意見はあると思いますが、車を考えてみてください。

10万キロ、もしくは、数年をメドに、乗換えをしますよね?

なぜ、車は良くて、時計はダメなのか?

一番の理由は維持費だと思います。

何しろ、電池交換をすれば、時計は動くのですから。

OHにしても、数万円です。

車の場合、古くなると燃費は悪くなり、税金は高くなり、車検費用も、小型普通者以上なら、ほとんど10万円を下回る事は無いでしょう

パッソであろうが、レクサスであろうが、それは同じ事。

特に、電子制御である現行の車は、部品についてもアッセンブリー交換が基本で、修理を前提としていません。

共に、自分の生活に密着し、かけがえの無い友人であるのにも関わらず、車は買い替えられ、時計はなんとか修理して使おうとする。

中には、1万円程度の時計は初めから使い捨てと考えている人もいますが。

同じ工業製品であり、部品の保有期間も法律に則って守られている場合、腕時計だからと言って、『修理出来ないのはおかしい』とお考えの方は、機械式を購入しましょう。

それも、特殊なムーブメントを使用していない(CAL.2824-2など、長期間生産されているETAのムーブメントを、改造しないで使用している)、メジャーなメゾンで(倒産する危険性が小さい)、最も無難なコレクションです(売れているから代替部品が手に入りやすい)。

ケースなど、外装部品が完全に使い物にならない限りは、内部が修理できないダメージを受けたとしてもムーブメントを交換するなどの対応で、かなり長期間にわたって使用できるでしょう。

これは、極論でも何でも無く、実に真っ当な考え方だと言う事は、時計に詳しい方なら察しがつく話です。


この、『クオーツ式は使い物にならなくなったら買い替え』というのは、廉価なコレクションだけで無く、GS、ザ・シチズン、ミスターにも言える事です。

セイコーのGS担当の方にお電話し、話を伺うと、スプリングドライブの電子部品についてはやはり、「可能な限りの対応はさせていただく(=修理できない場合もある)」と、言葉を濁しましたから。


1万円程度のGがパッソなら、ミスターはレクサスでしょう。

しかし、先の文にある通り、あくまでも電子機器。

一部の部品は永久に直せるものではありません。


高級なクオーツ式を購入する時は、この記事を思い出していただければと思います。

それで、納得した上で購入するなら、それはそれで『好きだからしょうがない』事。

嗜好品に他人が口を出すほど、野暮な事はありません。

ただし、必ず、アフターフォローについてや、正しい使い方、注意点など、納得の行くまで店員の方に質問してください。

時計店で今まで、こういった事は『聞かないと教えてくれない』事ばかりでしたから(車でも同じですよね?僕はディーラーに勤めていた時、ちゃんと行ってましたが、細かい機能の使い方まで、全て説明を受けた方、ご報告願います)。

悲しい事に、どんな業界でも、『お客さま第一主義』と言いますが、実際は『セールスを第一とし、アフターは第二』というのが現実なのです。