ETA2010年問題の真っ只中。

6月28日(りゅーずの誕生日ですが)、スウォッチ・グループの創業者であり、会長のニコラス・G・ハイエック氏がオフィスにて執務中に急逝。

色々な意味でスイス時計界に大きな足跡を残し、スイス時計産業の再興を成功させた功労者の一人として数えられる人物である。

最期までグループ内のブレゲを特に愛し、『マリー・アントワネット』のレプリカ製作も成功させた。

まさに巨星墜つ。

御冥福をお祈り申し上げます。

さて、ココからが本題。

最初にあげた、ETA2010年問題は、時計ファンなら周知の事実であり、スイス時計界を震撼させた事件である。

スウォッチ・グループの傘下にあり、世界最大のムーブメント(時計内部の機械)製造会社である、ETA(エタ)社が、機械式時計の、エボーシュと呼ばれる未完成ムーブメントのパーツ類をグループ外のメーカーに対して販売しないことを決定しているのである(ただし、完成品ムーブメントについてはこの限りではない)。

ETAの機械式ムーブメントはスウォッチ・グループ以外のメーカーにも、多く採用されている。

IWC、ブライトリング、タグ・ホイヤーなど、日本でも特に有名なメーカーだけでなく、クロノ・スイス、チュードル、パネライ、エポス、グリシン・・・・・・数え切れない程の大なり小なりのメーカーがムーブメントやエボーシュを購入し、独自のカスタマイズを行うか、そのままの形で使用している。

ETAがエボーシュの対外的な販売を中止した理由としては、真相はどうあれ『ETAのみがムーブメントの開発と言うコストもリスクも高い事を行う事はいかがなものか。各社がムーブメント開発を行わないことで、スイスの時計産業の衰退も起こす』というもの。

業界やユーザーに対するしわ寄せはどうあれ、一個のメーカーとしての考えであれば、「まさに、おっしゃる通り」である。

さて、そこで各社は自社製のムーブメントを開発するか、ETA以外のムーブメント製造会社に頼るしか無くなった。

後者の中でも最近有名になってきたのがセリタやソプロードといったメーカー。

既にユリス・ナルダンなどの名門も、セリタからのエボーシュを購入している。

これにて、一件落着な感があったが、そこで一つの疑問が生まれる。

Chronos (クロノス) 日本版 2010年 01月号 [雑誌]/著者不明

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『クロノス』の2010年1月号を再読していたところ、気になる記事を見つけた。

代替ムーブメントの事に対し、37ページの2段目に『しかし、これらの新しいエボーシュが、果たして真にスイス・メイドなのかという疑問は残る。』

これも時計ファンにとっては周知の事実であるが、スイス・メイドの定義は『ケーシングとムーブメントの組み立てをスイスで行うこと。部品のコストが全体の50%を上回る事。』

つまり、中国など、国外のエボーシュを仕入れ、スイス国内で組み立てる事によって人件費などのコストにより全体の50%を超えた場合、『スイス・メイド』の時計として販売できるのである。

実にルーズな取り決めであり、意味のあるものなのかが疑問に残る。

それに加え、今回ブックマークに加えた『B-Barrel(ビーバレル)時計製作者のつぶやき・・』の2010年9月15日の記事。

なぜ、中国のメーカーのカタログに、セリタの製品である『SW200』『SW300』などが載っているのか。

偶然の一致?

セリタはスイス国内での製造と言っているが、真相はどうなのだろうか。

このあたり、『クロノス』の記事と照らし合わせて、非常に心配になるところである。

最近、イタリアの某ブランドの人気が急上昇中で、品切れも続出している。

サッカー選手が着用している事なども含めて火がついた様だが、これも中国製だとか。

正規店の中にはイタリア製として売っているところもあるが、果たして真実はどうなのか。

スイスだけでなく、時計界は生産国をうやむやにする癖がある様にしか見えないが、決してファンを裏切るような事をしてはいけないのは、どんな業界に関しても同じ事。

中国製なら、中国製として認めれば、これらの疑問は起こらない。

一人の時計ファンとして、これらの真実を知りたいものだ。