生物薬剤学分類システムとは、大局的な消化管吸収挙動を予測する上での指針である。
これは、FDAによって規定されたもので、溶解性と膜透過性によって定義される。
(BCS は、Biopharmaceutics Classification System の略語)
薬物の溶解性と膜透過性は、医薬品開発の成否にかかわる重要な物性要素である。
生物薬剤学分類システム(BCS)では、
溶解性と膜透過性の物性をもとに、薬物を4つのクラスに分類する。
■溶解性(横軸)
横軸の水に対する溶解性の指標としては、Dose number (Do) が用いられる。
Do の本来の定義は、下記の通りである。
Do = 投与量 ÷ 消化管内の水分量 ÷ 溶解度
BCSの表で考える場合には、以下のように修正する。
Do = 臨床最高投与量 ÷ 250 (ml) ÷ 溶解度
まず、臨床最高投与量が、水 250ml に溶けたと仮定する。
その値を、薬物の溶解度で割る。
これを、Do として定義する。
溶解度は、pH 1~7.5 (37 ℃)における最小値を用いる。
もし、薬物の臨床最高投与量が、
水 / 250 ml に溶け切らなかったとすると、Do の値は1以上になる。
逆に、臨床最高投与量が、
水 / 250 ml に溶け切るならば、Do の値は1以下になる。
横軸の溶解性に関するクラス分けは、Do = 1 が境界となる。
Do ≦ 1 ⇒ クラス1 or クラス3
Do ≧ 1 ⇒ クラス2 or クラス4
図の左側に分類されれば、溶解度は良好であると判断できる。
■膜透過性(縦軸)
横軸の膜透過性(吸収率)に関しては、Fa や F (バイオアベイラビリティ) が用いられる。
Faは、消化管から吸収される率のことである。
一方、F は Fa と Fg (小腸アベイラビリティ)と Fh (肝アベイラビリティ)の積である。
FDA は、90% 以上の薬物吸収率を規定している。
したがって、膜透過性を Fa で考えた場合、下記のように分類される。
Fa ≧ 0.9 ⇒ クラス1 or クラス2
Fa ≦ 0.9 ⇒ クラス3 or クラス4
図の上側に分類されれば、膜透過性は良好であると判断できる。
吸収率については、原文で以下のように記述されている。
A drug substance is considered HIGHLY PERMEABLE when the extent of absorption in humans is determined to be > 90% of an administered dose, based on mass-balance or in comparison to an intravenous reference dose.
要するに、吸収率を "人で" 評価することになっている。
したがって、静脈内投与や標識体投与が必要である。
しかし、BCSに準拠して研究を進める場合、探索研究者の立場としては、
膜透過性がイシューになりうるか、もっと早い段階で想定する必要がある。
このため、動物試験、膜透過性試験 (in vitro) などを用いた代替評価が必要になる。
そして、その結果に応じて、化合物選定の優先順位が決定してしまう。
したがって、適切な評価系、信頼性の高い代替法の構築が重要になってくる。
■BE試験(生物学的同等性試験)
クラス1に属する薬物の場合、速溶であればBE試験が免除される。
クラス3の薬物も吸収性の改善を要するが、BE試験が免除される可能性がある。
■詳しい解説
■BCSに関する正確な規定
The Biopharmaceutics Classification System (BCS) Guidance / FDA
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