1980年5月に韓国で起きた光州事件の映像は、今まで何度も観ました。
学生をはじめとした光州市民に軍隊が催涙弾を放ち、棍棒で滅多打ちにし、市民に紛れ込んだ私服姿の特殊部隊の軍人が拳による打撃を学生たちの体に叩き込む。
さらには自動小銃で実弾を放ち、射殺された市民の遺体が路上に転がり、重傷を負った市民たちが担ぎ込まれ病院が血の海となり、遺族たちの阿鼻叫喚が響き渡る。
それらの映像は光州市民が撮ったものだと思っていましたが、映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』を観て、ドイツ人記者が命を賭して撮影した映像であったと知りました。
実在したドイツ人記者と、彼を光州まで乗せたタクシー運転手、光州で出会った市民たちとのあいだに芽生えた精神的な絆は、友情という言葉では包括できない、同志としての信頼と言えるかも。
ドイツ人記者を演じた俳優さんの演技も素晴らしかったですが、エンドロール手前、実際の記者さんが「タクシー運転手のキムさんともう一度会いたい」と語る姿に、恥ずかしいほど泣いてしまいました。肺からしゃくり上げ、涙と鼻水を流し。
国家による蛮行、国家による情報統制に憤り、真実を世界に知らしめ、取材の過程で交流し、共に闘った現地の人々との絆をその後の人生における精神的支柱とするスタンスに、敬意をいだかずにいられません。
対して、平和な国に生まれ育ったのは偶然に過ぎないのに、それをもってまだ平和でない国の一般国民を見下す資格が自分にそなわっているなどと錯覚するのは、軽蔑されても仕方がないほど愚かなスタンスに違いありません。
今後も韓国映画のスタッフや俳優たちには、他国を敵視する映画ではなく、自国の権力に対する警戒心、自国国民たちによる過ちを反省する作品をつくり続けるよう期待したいものです。
