「ねぇ。秋斉の驚いた顔、見たくない?」
ちょっとした出来心だった。
置屋に…あの子に会いに遊びに行ったら、俺と話してるのに秋斉の話なんかするから。
口にするだけで幸せそうな顔しちゃって、妬けるったらね。
アイツに仕返しの一つや二つくらいしても罰なんか当たらないだろう?
「それで…どうするんですか?」
あれこれ言いながらも、桜は結局乗ってきた。
きっと、いつもと違う顔って誘惑に負けたんだろうね。
言い訳してる最中から、顔に書いてたから。
「あのね…」
そんな必要もないのに、耳打ちをして。
いつもならこんな事したら真っ赤になるくせに、今日は平気なんだね。
そのくらい、気になっちゃった?
お前は本当に可愛い子だね。
それから暫く後に秋斉の部屋に呼ばれた。
もう嗅ぎ慣れた香りが、落ち着きとほんの少しの苛立ちを生む。
「桜はんは、何ぞ知りまへんか?」
俺に向けるのとは、違うものを含んだ目。
責めつつも、それは変わらないんだ。
お前達は、気付いてないんだろうけどね。
「ぇ?ぁ、いや…秋斉さんがいつも頑張ってらっしゃる事は知ってます!」
慌てた桜が答えた、会話としてはちぐはぐだけど、本音だろう言葉を聞いて
秋斉は少しだけ固まってから、そらおおきにと言って扇子を広げた。
お前はホント可愛くないよね…照れ隠しなんだろう?
もう少し素直になれば良いのにさ。
つい口元が緩んでしまい、それを勘付かれなかったかと少し焦る。
ただ、何か段々風向きが怪しく…いや、強くなってきて。
桜と俺ではどうやら対応を変えるつもりでいるらしい。
勘弁して欲しい。
昔から怒った秋斉は凄絶だった。
笑顔の怖いこと怖いこと。
ちょっとした出来心でアレの再来は見たくない。
ちらりと彼女の方を見ると、どうも同じ事を考えてる様で。
頷き合うと、秋斉の方を向いて姿勢を正した。
「「……ごめんなさい。」」
…ちょっと苛めてやろうと思っただけなのに、とんでもない目に遭うところだった。
でもホント、世の中って不平等だよね?
桜を拾ってきたのは俺なのに、俺じゃないなんて。
まぁ、たまに弄って、後は助けてやろうかな。
あーあ。
そんな事を考えながら、俺は掃除に勤しんでいた。
***
「日常」の慶喜目線です。
可哀想に、秋斉さん好きの私に書かせると彼には片思いをさせてしまうばかりになりそうです…。