流れ星 -2ページ目

流れ星

思いつくままに書いた二次作品などの保存場所。某所で書いたものも含みます。勿論、私が勝手に書いているだけなので、どことも関係はありません。


彼女が座敷に上がるのを見送るのは嫌いだ。

俺は楼主で彼女は遊女だから、見送り見送られるのは当たり前の事なのだが。

平静を装い、送り出すいつもの言葉をいつも通りに吐くのが、日々苦痛だ。



そして夜。
戻りを告げる彼女を迎えて、漸く落ち着く。
…いつもなら。


漂う少し渋みのある香り。
あの男のいつも身に纏う香り。


だから嫌なんだ、あの男の元へ遣るのは。

あの男が来た日には、
俺の苛立ちは彼女の笑顔を見ただけでは消えない。

それと分かっていて、わざと強く香りを残す…

その嫌らしさが気に食わない。


だから、腕を引いて、閉じ込める。

いっそこの娘の肌の中まで、この香が行き渡れば

何時何処でも、俺だけのものだと、知らしめられるのに。


こんな事で心乱される自分を嘲笑いながら、

不快な香りのする着物を彼女から離した。





***


香り描写のある2人だからこそ、香りへの執着が強そうだったので…。