デジタル三省懇談会への意見書 | こんな本があるんです、いま

デジタル三省懇談会への意見書

「デジタル・ネットワーク社会における出版物の利活用の推進に関する懇談会」への意見

2010年5月19日

出版流通対策協議会
会長/高須次郎
東京都文京区本郷3-31-1 盛和ビル40B
TEL 03-6279-7103/FAX 03-6279-7104

まず、現状、国会図書館をはじめ、他の図書館や組織・団体の従来の貸出・貸与等の利用形態においても著作権者・出版者に対する配慮が充分ではないという認識及び現在までに保存されている出版物に対するアクセスを容易にするために信頼に足る書誌データベースの構築が優先されるべきであるとの認識を確認された上で、次のような意見を考慮されたし。

1.「デジタル・ネットワーク社会における出版物の収集・保存の在り方」については
・まずは、紙に印刷された出版物が優先されたし

現在、紙媒体の出版物が大多数であり、また、印刷・紙質・製本方法などを含めての製作物であり、それを収集し、丸ごと保存してこそ意味を有する。保存と利用という相反する要素に関しては、複本収集も視野にいれ考えるべきである。デジタルデータには、利用に対して大きな利便性があるが、保存に対しては実績がないのである。

2.「デジタル・ネットワーク社会における出版物の円滑な利活用の在り方」については
・著作権者、出版者等の作り出す者の権利や立場を配慮されたし

出版物は著作権者がなければ成り立たないのはもちろん、原稿そのものだけでなく、如何なる形態・方法・価格で広めるかは、出版者がその発意・決断・リスクを負って行っているものである。デジタルの出版物であってもそれは残るであろう。それらへの配慮がないと、現在の著作権者、出版者が立ち行かなくなるばかりでなく、いずれ「利活用」の源泉である出版物が枯渇していくことになる。

3.「国民の誰もが出版物にアクセスできる環境の整備等」については
・デジタル化が標準となったときに、排除される人々が発生することを考慮されたし

デジタルデータとしての出版物にアクセスできることで、「国民の誰もが出版物にアクセスできる」と思い込むのは思慮に欠ける判断である。デジタルデータとしての出版物にアクセスするには、最低限、デジタル機器と通信網が必要となる。加えて、デジタル機器の費用、操作する知識、通信費用などが必要となるが、現状では「国民の誰もが」これを持ち合わせてはいな
い。
また、前項の内容と重複するが、出版物をデジタル形態でアクセスできるようにするかどうかの判断は、その出版物を公のものにする(publish)主体=出版者(publisher)にゆだねるべきである。