宮川・堂倉谷遡行(2002年8月10~16日)


山域   :紀伊半島・大台ケ原 2万5千分の1地形図「大台ケ原山」「大杉峡谷」「河合」
山行形態:沢登り
お勧め度:★★★★★

奥七つ釜にて


【概要】

8月10から16日まで大台ケ原の堂倉避難小屋に籠もって堂倉谷とその支流を遡行してきました。堂倉谷は日本で一番水のきれいな三重県・宮川の大杉谷の上流部にあり、日本有数の降雨量を誇る大台ケ原の水を集めたその渓谷は大杉谷の七つ釜と呼び並ばされる中七つ釜、奥七つ釜といった淵や巨大なスラブ滝を幾つも抱えて、迫力・美しさ共に日本屈指の渓谷と言えるでしょう。今回はその堂倉谷本谷とその支流の石楠花谷、奥の左俣、奥の右俣、ミネコシ谷をそれぞれ源頭まで詰めました。

【8月10日】
この日は、堂倉谷遡行のベース地である堂倉避難小屋へのアプローチにあてました。前日まで国道169号線が土砂崩れの為に通行止めでしたが、とある筋からこの日通行可能となるとの情報を得て、9時頃コージ宅を出発、お昼を“たたら亭”でよばれた後、大台ケ原駐車場から堂倉避難小屋に向けて出発しました。今回は食べ物を贅沢しようと、リンゴ・ナシ、きゅうりなどの生もの、お米は炊いておかずはレトルト、ビールは500mlを6本ボッカしていきました。お陰で私のザックは25キロ、コージ君のザックは30キロは優に超えるものとなりました。何よりの楽しみは遡行後のお酒&晩飯です。これは絶対、外せません。

【8月11日】
この日は堂倉谷本谷上流部を遡行しました。林道を30分ほど歩き、堂倉橋の橋げた脇から入谷、本谷源頭部まで詰めて正木ケ原に出ました。
さっそくの泳ぎ



石楠花谷出合付近のゴルジュ帯には釜を備えた滝が幾つかあって泳ぎ&シャワークライミングを楽しめますが、流域が伐採されたせいか、本谷に入った途端に水量は少なくなり、土砂や倒木で沢を荒らされてました。ある程度クライミングの経験ある方なら、ここの滝はすべてノーザイルで直登可能です。要所には残置ハーケン&シュリンゲがありました。下山は周遊路から日出ケ岳に登り、大杉谷方面登山道を使って避難小屋まで戻ってきました。堂倉下部、奥の右俣以外はすべてこのルートで下山しました。


【8月12日】
曇りがちの昨日とは打って変って、朝から眩しい日差しが降り注いで、今日は堂倉の下部に行こう、ということになりました。堂倉下部は幾つもの深くて広い釜や淵があり泳ぐ箇所が多いのでどうせなら六日間ある天気のいい日を選んで行こうという事だったのです。


大杉谷方面に向けて登山道を降り、堂倉滝の上部から入谷。吊橋を渡り登山道をしばらく行くと右手斜面の笹薮に踏み跡があるんで、それに従って滝脇の岩盤上に出ます。上に着いたらモノレール伝いに稜線上を左手に少し行くと、ルンゼがあるのでそこを下降していけば、楽に沢床に出られます。実を言うと、この沢床に出るルートを捜すのに結構苦労しました。

 
 

斜滝25mは右を大きく巻き、次の大きな釜を持った5mの滝は泳いで滝左脇にあるクラックに取り付いて越します。左から枝沢が流れ込んだ後の15m斜滝は右側壁をクラックに従って登ります。ホールドがしっかりしていて案外楽に登れますが、頭付近に出た途端ツルツルの岩肌となり、残置シュリをビレイ代わりに掴んで越えました。

奥七つ釜は釜を持った連滝と並行してナメが広がる不思議な場所です。奥七つ釜最後の15m巾広スラブ滝は泳いで流れが割れてる滝の中央に取り付いて絶妙な?フリクションを効かせて登りました。大きな堰堤がありますが、これはザイルを出し堰堤左脇の岩場を残置シュリを利用して高度感あるトラバースで越えました。なお、ここにはしっかりした巻きもあるので、そちらで行けばザイルなしで越すことができると思います。堂倉下部最後のフィナーレは2mの滝、両サイドには門のような岩盤が控え、泳いで突破です。

 

【8月13日】                                                      
                                                 石楠花谷の廊下

 

13日は堂倉支流の石楠花谷、本谷上部が今一つだっただけにどうなのか?と思ってましたが、滝の登攀を楽しめる予想以上に楽しい沢でした。

始めは淵が土砂や倒木によって埋められ沢は荒れてます。倒木を跨いだり乗り越したりしながら進んで行くと、不意に浅い釜のある20mの滝が現れます。右の側壁をクラックに従って登っていきますが、途中でそのクラックがなくなったのでハーケンを2個打ってそれを足場にしたり、シュリンゲ掛けてA0したりで登り、頭脇まで来ましたが、横の壁が邪魔をして頭にでれません。そこでまたその壁にハーケンをブチ込んでそれを足場にし、頭上の若い杉の木を掴んで突破しました。
                                                    
次の15m滝は右の側壁に斜めに走ってるクラックを利用して登れそうでしたが、登攀はさっきの滝で堪能したんで今回はあっさり左から巻きました。倒木を利用しながら登り、大きな杉の木から3m滝の頭に根子を掴みながら降りました。ここは少しでも巻きすぎると壁があるので、巻きすぎると懸垂です。

ここの沢は小滝は少なく、20m・15mと登るとザイルで支点を取りながらの登攀の必要な滝ばかりで、それらの滝を登攀するか巻くかによって沢の味わいが変ってくるようです。

【8月14日】
奥の左又は黒光りするナメの続くいい沢でした。


奥の左俣の遡行図は入手してなく、一体どんな沢なのか楽しみでした。前夜、お酒を飲みながら地形図を眺めその谷の姿に思いをはせました。

遡行してみた感想は、奥の左俣は沢が土砂などで荒れることなく、石楠花谷以上に滝が多くてすばらしい沢でした。堂倉を詰めるなら、私はここかミネコシ谷がお勧めです。

黒光りする長大なナメ滝が連続し、すべて直登か側壁を登ることができました。それらの滝の一つに曲がりくねった滝があったので“へび滝”なんで命名したりしました。私たちはノーザイルで行きましたが、高度感ある所やそこそこ難しい所もあったので、場所によってはザイルを出した方が無難かもしれません。最後の詰めは涸れ沢の登りが結構、長かったです。


【8月15日】


奥の右俣は左俣との出合からいきなり釜を持った多段の滝がお出迎えで、さっそくシャワークライミングです。その滝を越すと直ちにまた釜を持った8mの滝があり、泳いで滝の右に取り付いてみましたが、最初のワンムーブが不安定で自信がなかったので、コージ君に変ってもらいましたが、彼も足を滑らしズリ落ちて来ました。、諦めて戻り、左の斜面を巻くことにしました。この滝は下山時に私のムーブ指導?の元、コージ君が再チャレンジしましたが、見事に登り切りました。ポイントはフットホールドで、ミクロチップなホールドに上手いこと足先で乗り込むのがコツです。

12m、15mそして40mの滝はツルツル岩で歯が立たず、いづれも左を巻きました。この沢の核心は40mの滝の巻きで、右岸のルンゼから巻きにかかりますが、途中から熊笹や立ち木を掴みながら藪を漕いで岩盤の隙をついて右にトラバースして岩盤上に出、滝の上部に降り立ちました。

この滝の巻きの時、暑かったので私は途中でウェットスーツを脱いだのですが、その時に首に掛けてたコンパス、呼子などを付けたスリングを忘れてしまいました。気付いたのは、滝の頭にすでに降りた時で、そのスリングには大切な思い出のナイフも付けていたので、とても落胆しました。明日ミネコシ谷行く前に一人で取りに行こうかと考えましたが、話し合って登山道まで詰めてからまたこの沢を下って二人で探すことになりました。

下山の時に利用したのですが、この滝の巻きにはルンゼを登り切って完全に岩盤上に出て大巻きするしっかりした踏み跡がありました。確実に巻きたい方はこの方が無難かもしれませんが、しかし、このルンゼは落石の巣、降りてる時に頭くらいの石が上からたくさん転がってきました。

源流まで詰めてから山腹をミネコシ谷に向かってトラバースし、ミネコシ谷源頭から登山道を確認後、再び奥の右俣を降りて下山しました。大切なスリングは下山時、ちゃんと見付けられました。この沢は二度楽しんだので、もう来なくていいかな、という感じです。


【8月16日】
ミネコシ谷にて

 


最終日はミネコシ谷。これもちゃんとした遡行図を持ってなかったので、一体どんな展開を見せる沢なのかとても楽しみでした。今まで遡行してきた沢すべて、同じ堂倉の沢というのに全く違った姿をしてましたから・・・

本谷との出合は伏流ですが、直ぐに流れを取り戻して滝のお出迎え。堂倉上流の沢では滝の多さは一番かもしれません。しばらく行くと滝が二つ流れ込む不思議な所。左の滝が簡単に登れそうなのでそこを登って進むと、右の滝との流れと合流。ゴーロを乗り越えて高度を上げて行くと、沢は開けてとても明るい感じに。しかし、それでも滝は尽きません。あんまり入ってる人がいないのか、巻きはいづれも笹の猛烈な藪漕ぎ。圧巻は最後の三段40mの滝で右の側壁を登っていきましたが、最後の上段で行き詰まり、右から巻きにかかったのですが、立ち木があまりないので、気を使いました。この滝を越えると源流部という雰囲気で、ブナやヒメシャラの生い茂る明るい森が広がってました。最後の遡行に相応しい本当、静かで美しい源流でした。


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