わらじの先輩たちは左岸を以前から登攀していた。その記録を読んでいて自分の中で左岸は泥臭いクライミングを要求されるのだろうとイメージが膨らみ、見た目すっきりしている右岸に興味が湧き、2014年5月に、本滝の右岸を初登したのだった。

右岸は初登で充実感もありそれはそれで満足したのだったが、大峰台高で私達に残された大滝が残り少なくなった今、登攀することはごく自然なことだった。年月を追って登攀欲を熟成されて、今日この日いろんな条件が整い左岸基部に立つことが出来た。

 

滝の全景

 

1P目:シブのリードで登攀開始。

しかし、オフウィドスからのチョック岩の乗り越しでパワーが要るようで、攻守交代する。

改めて滝横のガリーから取り付く、ブッシュ交じりのボロい岩場から、剥がれた大岩の間をオフウィドスで上昇し、最後にチョック岩はワンムーブで乗り越える。小さな岩テラスまで。荷物を背負っていれば、このピッチは辛いだろう。セカンドのシブはスリング繋いで自ら荷揚げして対処していた。

 

2P目、3P目:

小さな岩テラスから、まずコーナーをモンキークライムで直上して行き居心地の悪い樹林帯の中を顕著な木の根のテラスまで。

思った以上に傾斜があるピッチで、パワーに劣る女性には厳しいピッチでここも3P目で攻守交代する。

右はますます側壁が立っていて登れそうにない。ここからの滝身に様子を伺いにいく。

気持ち悪いが進路は滝身(左)へ出て行く以外なさそうだ。

 

4P目:シブにも滝身へ様子を見に行かせるが、ここしかないだろうということで意を決める。

木の根のテラスから思い切って滝身の方へ左上して行く。水飛沫がキラキラして、飛沫も気持ちいい。ただし、細いツタやブヨブヨした草付きの足場で精神的に悪い。ツタには、悪い記憶があるからだ。そのツタに幾つか支点を取りつつ慎重に前進していくが高度感で胸の高鳴りがマックスだ。落ちられないツタのある岩壁を上昇して行くが壁は次第に傾斜を増し緊張感一杯の所で、残置ボルトが一つ見付け少し緊張が緩む。

少し上方にリスを見付け自らやっと支点をハーケンで作り一安心。このハーケンにスリングを通そうとモゾモゾと土・砂をほじっていると、ほんの1cmに満たない上に残置ハーケンが現れてビックリ。残置ハーケンにブッシュが自生していたのだ。

ここから左の少しばかり傾斜の緩んだ岩壁に、ワンムーブで乗り移り、左上して行くと流水のすぐ脇のテラスに躍り出る。ここからの高度感も素晴らしい。ハーケン3つでビレイ点を作る。セカンドのシブは、この流水で口を潤していた。

 

5P目:

滝身すぐ右のコーナーを直上していく。ハーケン、カムが良く決まる安心できるピッチ。真上にクラックが走る被った岩があるすぐ下の小さなテラスまで。コーナーの終い、右壁に残置ボルトが一つあるが、無くても良い。

 

6P目(最終P):

ハングした岩に綺麗に縦に走るクラックにカムを決めつつ上昇する。クラッククライミングに長けた人なら楽しいピッチだろう。

しかしここは、地上から約100メートルで高度感抜群。確かなエイドで突破させてもらおう。このクラックの右のすっきりしたフェイスには残置ボルトが3つ、ビレイ点にあったものを含めて計4つもあった。クラックの終わりにあるガバホールドを使い一気にハン岩を乗り越えれば、後は簡単な岩場を落ち口の横まで。

全ピッチ荷物をボッカしてフォローしてくれたシブも充実したとのこと、握手で締めくくった。

 

ちょうど満開の1本の山桜が対岸の尾根で、無事おめでとうと祝福してくれているようだった。

 

登攀を総括すると、左岸は右岸と比較して全般にパワーを要する。

右岸は全体にスマートだが、左岸はエイドも混じり全体に本チャンの醍醐味を味わえるだろう。

最後に、この滝も中身の濃い登攀できる舞台を提供してくれて大満足だった。