………。寒い、眠い、気分が悪い。やっぱり裁縫は下手だ。慣れていないのではない。ケチな性分ゆえ、たまにジーパンや籠手の手の内の自己修繕をしているが、その折から自分の不器用は承知している。どうもテキパキいかないのである。ひょっとするとこれもベロー〇ェにおける鈍重さと関連があるかもしれない。白衣の修繕箇所に印をつけたところで気が付いた。ハットを白くしなければ。新聞紙をもって、テーピングを巻いたハットをもって外のガレージへ。冷たい…。新聞紙上に置かれたハットにスプレーを吹き付ける。シンナーの臭いで気分が悪くなりつつもどうにか白くなった。2時間くらい待てとある。
再び裁縫にもどることにした。白衣はジャケットにするにはどうもヨレヨレである。しかも生地が薄い。これで素肌となれば、漫画でよく見る変態である。とりあえず襟元を縫い付けることで折り目を際立たせることにした。短く切った箇所であるが、これを綺麗に整えるのに時間がかかる。これが結局諸作業における峠となった。ボタンであるが、替えのボタンで良いのがない。チャチであるがマジックで白衣の白いボタンを黒く塗る。
そろそろ二時間、ハットは乾いたか。ガレージに戻る。乾いていない。寒いからか。仕方がない、やりたくはなかったが。家の中で乾かそう。シンナー臭を発する、ベトつきハットをソロリソロリと二回のトイレに運ぶ。折れた竹刀の先にハットを掛け、便蓋、ドア、出窓を閉めて密室にして乾燥機をかける。まるで放射能物質のようである。人体に有害な物質を発散していることで共通してはいた。
再び裁縫に戻る。とうとう「峠」をクリア。ジャケットになってきた。しかし、何かが足りない…。あ、そうだ。袖のボタンをつければいいのだ。幸い高校のジャケットの小さい黒ボタンが4つあった。これでいけそうだ。安堵の雰囲気。
そこへ、寝ていた親がすごい形相で降りてきた。正気ではない感じだった。「上のトイレにあるやつなんとかして……!!」 シンナー臭は以前から感じられたが、それは自分についたものとばかり思っていたが、違った。やはり放射能は漏れていたのである。トイレをあけると、白い便器上に折れ竹刀に掛けられた白ハットがシンナー臭を発していた。非常に不気味な光景であった。一瞬「オペラ座の怪人」のあの白いマスクを連想する。しかし、ハットは前よりも大分乾いていた。もう少しである。
「窓を全部開けて!!」 命ぜられて親の部屋以外の二階の全窓をあける。外気が家に入ってくる。こうして本作業一番の寒さを迎えることになった。臭い、寒い、気持ちが悪い、、白い。何をやってるんだろう、俺?今更ながら思う。たかだか3時間足らずの時間のコスプレのためにもう20時間くらい使っている。馬鹿馬鹿しい。
しかし眠気がないのである。それは不思議であった。出窓が黒から青に変わっている。もう朝である。やっとジャケットが完成した。白ハットは…ごく一部を除き乾いている。ハットのテーピングを剥がす。テープが貼ってあった箇所は元の黒のまま。遠目ならばハットの黒リボンに見えるだろう。シャワーを浴びる前に試着。やっぱり生地が薄い。しかし、タオルを掛ければ大丈夫か。これも遠目ならば大丈夫か。以外にも袖ボタンがアクセントになってジャケットらしさを際立たせてくれている。
シャワーを浴びて髭を隙なく剃る。そしてリーゼント、背広。よし、準備OK!
しかし、徹夜だから六本木は見られないと予想。