昔々 私は食べることが とても苦手だった
キャベツと かっぱえびせんと 紅茶以外は
美味しくないと 感じていた
肉や魚は 臭くて 食べられない
炊き立てご飯は 熱いし むせる
こんにゃくとか 豆腐とか
食材そのものや 食感が苦手など
多分 理由は たくさんあったが
本当の原因は 別にあった
母は 料理の味付けに 醤油を大量に 投入する
そして 酒やみりんは 使わず
○の素や ○んだし 白砂糖を どばどば入れる
もちろん 面倒がって 下ごしらえはしない
多分 料理をはじめ 家事全般が
苦手というか 嫌いだったのでは? と思う
そもそも 私は 産まれながらに
母乳を拒否して 飲まなかった
母乳の匂いや感触が 嫌だったのだ
母との 行き違いは
すでに そこから 始まっていた
親子でも 相性の 良し悪しはある
母は 私が 嫌いだった
私も 母が 嫌いだった
母は 食事の度に 食べない私を
ひどい言葉で なじり責めた 手も出してきた
だから ご飯の時間が 辛くて怖くて
私はどんどん ガリガリに痩せていった
そして ついに 栄養失調になった
それなのに 他のことでも
マジに 生死が 危うくなってきた
眠ると 無防備になって 危険だから
○されないように 寝ずに 見張る夜が
七日ほど過ぎて そろそろ限界が近づいた頃
私は、少しの間だけ 救われることになった
母が 入院したのだ
責められない バカにされない 人格否定されない
痛くない アザもできない 安らかな日々
この解放感は すごかった
その代わり 私が 家事をするようになった
はじめは 祖母が 来てくれていたのだが
外泊して 帰ってきた 母が
祖母に 喧嘩を売って 私にするように なじった
祖母は 来なくなった
私が家事をする以外の 選択肢がなくなった
元々 普段から
朝刊の配達と 掃除や洗濯 食器洗いの 約半分は
私がさせられていたので 楽勝だったが
食事だけは 母が作っていた為
白米の炊き方から 料理の諸々を 父から習った
しばらくすると ご飯作りも 板についてきた
なんでも 経験してみるものだと思う
なぜなら 私は この時期に
人生を左右するほど 大きな発見をした
それは
自分で作ったご飯は とても美味しい ということ
図書館で 料理の本を読んで メモして
私は 料理の基礎を学んだ
預かったお金から 香辛料や 調味料を買った
そして 色んな料理を作ってみた
やはり どれも美味しい
キチンと 下こしらえをすれば
さばの味噌煮や カレイの煮付けなどの 魚料理は
魚の臭いが 気にならなくなるとか
昆布と鰹節で 丁寧にお出汁をとるとか
だし巻き玉子や お味噌汁に 凝ってみたりした
父や妹が 美味しいと言って 食べてくれると
益々 やる気がでてきた
たまに 不思議な味を 作ったりもしたけれど
おおむね好評で 母が退院した後も
いつの間にか 私がご飯を作ることが 増えてきた
でも 家族みんなが寝ている とても寒い早朝に
新聞配達に行け!と 私を起こしておいて
また布団に入って寝る 母を見ると
辛くて悔しくて 腹が立って 堪らなくなった
とうとう ある日私は 勇気を出して行動した
何をされても 何を言われても 新聞配達を拒否した
すると母は あっさり 新聞配達をやめた
母が配達していることに なっていたので
いい加減な人だと 思われたくなかったのだろう
私への腹いせは ものすごい ものだったけれど
立ち向かった事実と達成感で ひたすら耐えた
栄養失調は 普通に 食べるようになってから
改善したが まだ痩せたままで
太るところまでは いかなかった
いま 思えば それが私の
ベスト体型 だったのだろう
だけど相変わらず 体型やその他
あらゆることで責められ 叩かれ
さげすまれ 人格否定されたので
このままの自分ではダメなんだ という劣等感で
痩せている自分を 許せなくなっていた
だから 何度となく 食べ過ぎて 下痢をしながら
頑張って 太ろうとした
けれど 悉く 失敗するのだった
この試みは 将来 成功するんだよと
この時の自分に 教えてあげたい
そして無理に 自分らしさを否定しなくてもいいよと
伝えて 安心させてあげたい
でも それは いまだから言えることだ
すべての出来事には ひとつも無駄はなかった
それが いまここにいる自分を 構築したのだ
自分を守る必要があれば 自分を守る術ができる
何かを失えば 何かで補填するようになる
目が見えなければ 三つ目の眼が拓く
体が危機を感じれば 自分で治せるようになる
寒い夜に 明日を楽しみに眠れる この幸せを
いま 私は 知っているから
小学6年生の あの寒い冬 懸命に生きていた
思い出の中の 自分と いま現在の 自分を
時空を超えて 感謝のエネルギーで包んで
リンクして つないで 祝福をした
いま 苦しんでいる人たちが この物語をみて
明るい未来があることを 知ってくだされば
この物語の結末は ハッピーエンドになります