人生を歩む上で、多くの人が迷いとともに生きている。何を選び、どの道を行くべきか。どの選択が正しいのか。この問いは、年齢に関わらず人間に寄り添い続ける。しかし、迷いの奥底に潜んでいるのは、実は選択そのものよりも、自分の内側にある覚悟の有無である。どれほど素晴らしい選択肢を与えられていても、覚悟のない決断には重みがない。覚悟のない決断には、人生を押し出す力が宿らない。上甲晃さんが残した言葉の中でも、特にこの一言は人生の核心に触れる大切な指針である。

覚悟を持って決めたことは、人生を動かす力になる。この言葉は単なる精神論でも美しい響きの教訓でもない。それは、人生の転機を自らの意思で迎えようとする人間への強い励ましであり、同時に挑戦へ踏み出す者への厳しくも温かな道しるべでもある。覚悟とは、自らの選択に対して逃げないと決める態度であり、どんな状況でもその決断に責任を持とうとする心の姿勢である。そしてこの覚悟を固める過程こそが、人を強くし、人生に方向性を与え、長い時間をかけて確かな成果を生み出していく。

若い人たちは往々にして悩む。夢が持てない。何をしたら良いか分からない。能力がない気がする。周りと比べて焦ってしまう。未来が見えない。こうした感情は決して特別なものではなく、多くの大人たちも若い頃に必ず通過してきたものである。しかし、迷いがあるからこそ、人は覚悟を持つことができる。迷いがなければ覚悟の必要もなく、覚悟がないところに本当の成長は訪れない。迷いは弱さの証ではなく、覚悟が生まれるための土壌である。上甲さんは、そのことを身をもって示し続けてきた。

覚悟には恐れがつきまとう。自分にできるのか。失敗したらどうなるのか。人に笑われたらどうしよう。覚悟とは、こうした恐れや不安を完全に消し去ることではない。むしろ、恐れや不安を抱えながら、それでも前へ進むという決断である。不安があるからこそ、覚悟は輝く。不安があるからこそ、前へ進んだ一歩には価値が生まれる。不安がなければ勇気も覚悟も必要ない。だからこそ覚悟とは、恐れを抱いた自分に対して静かにうなずきながら、それでも行くと決める心の声なのである。

覚悟を持った決断は、時間が経つほどに大きな力を発揮する。覚悟が浅ければ、困難が訪れた時にすぐに揺らいでしまう。環境のせいにし、人のせいにし、運のせいにしたくなる。しかし、覚悟を持っている決断は違う。壁が現れれば、その壁を越えるために力を尽くす。雨が降れば、濡れながらでも進み続ける。時には遠回りをしながらも、それでも進む。この積み重ねが、人の人生に確かな軌跡を残していく。

覚悟は、人間の能力そのものをさらに引き出す力でもある。本当にやると決めた時、人は自分でも気づかなかった力に目覚める。苦しい時にも踏ん張れる力が出てくる。今までの自分なら諦めていた場面でも、もう一歩を踏み出す自分と出会える。覚悟とは生まれ持った才能とは違う。誰にでも持てるし、努力によって鍛えられる。そして覚悟が力を持つ瞬間は、たとえ周囲から理解されなくても、自分自身が深い手応えとして感じるものである。

人生の岐路では、多くの選択肢が目に入るだろう。どれが正解か分からず、立ち止まりたくなることもある。しかし、選択の良し悪しを決めるのは他人でも環境でもない。覚悟のある自分自身である。どの選択をするかよりも、その選択をどう生きるかの方が何倍も重要である。覚悟を持って選んだ道であれば、どんな困難も人生の栄養になる。逆に覚悟なく選んだ道は、どれほど恵まれた環境でも実りを生みにくい。

若い人たちが覚えておくべきなのは、覚悟とは大きな目標だけに必要なものではないということだ。日々の小さな決断にも、覚悟は宿る。誰かのために優しくしようと決めること。今日一日を大切に生きようと決めること。学びを怠らないと決めること。誠実さを忘れないと誓うこと。これらの積み重ねに覚悟が込められる時、人間の芯は強くなり、やがて大きな決断にも耐えうる精神が育っていく。

覚悟を持つためには、自分の中にある弱さと向き合い、自分を受け入れる勇気も必要だ。完璧な人はいない。覚悟ある人は、弱さを隠して強く見せる人ではない。弱さを自覚した上で、それでも進む人である。自分の弱さを知るからこそ、人は他者の弱さにも寄り添える。そしてその心の広さが、人の信頼を呼び寄せ、人生にさらなる力を与える。

覚悟は、誰かに与えられるものではない。誰かに背中を押されて持つものでもない。覚悟は、静かに自分で決めるものである。自分の胸の奥でそっと生まれ、揺るぎない芯となり、長い人生の中で何度も自分を支えてくれる。どれだけ多くの助言を受けても、どれだけ恵まれた環境にあっても、最後に覚悟を決めるのは自分しかいない。

そして一度覚悟を持って決めたことは、その人の人生を深いところから動かし始める。道が切り開かれ、人脈が生まれ、自分でも想定していなかった可能性が現れてくる。覚悟とは未来を拓く灯火であり、人生を前に押し出す力であり、時には自分自身を救ってくれる優しい光でもある。

人生において大切なのは、覚悟を持つ瞬間を恐れないことである。覚悟が持てない自分を責める必要もない。大切なのは、いつか覚悟を持てるように日々を丁寧に生きることである。心が整った時、自分の中から自然と覚悟が生まれてくる。焦らず、慌てず、自分を信じて進めばよい。

覚悟は人生を動かす力になる。それは若い人たちにとって未来を拓く最も大切な精神の土台であり、困難な時代を生き抜くための強さの源泉でもある。自分の人生を自分の手で動かすために、覚悟という名の灯を胸にともしてほしい。どんな小さな決断でもよい。大切なのは真剣に選び、真剣に生きるという覚悟を持つことである。

最後に
上甲晃先生、人生の本質に触れる深い言葉を残し、多くの若者に生きる勇気と覚悟の意味を教えてくださったことに、心から感謝申し上げます。先生の言葉は、これからの世代の未来を照らし続ける力となるでしょう。