幸せは、誰かが運んできてくれるものだと思っている人は少なくありません。いい仕事、素敵な恋人、十分なお金、安定した暮らし。それらが手に入れば、自分は幸せになれるはずだと信じている。しかし、相田みつをさんは、その思い込みを静かに、しかしはっきりと否定します。

「幸せは いつも 自分のこころが決める」

この言葉は、外の世界や他人の評価ではなく、自分の心の持ちようこそが幸せの源泉だと教えてくれます。

私たちは日々、さまざまな出来事に翻弄されます。計画通りにいかない仕事、誤解から生じる人間関係のすれ違い、不安定な未来。それらはしばしば私たちの心をかき乱し、「こんな状況では幸せなんて感じられない」と思わせます。しかし、同じ出来事に遭遇しても、笑って前に進む人もいれば、不平不満ばかりを口にして立ち止まる人もいます。その差は、出来事の大小ではなく、心の向け方にあるのです。

相田さんの言葉は、単なる精神論ではありません。それは、彼自身が不遇や失敗をくぐり抜け、苦しみや葛藤の中から掴み取った実感のこもった言葉です。彼は若いころ、思い通りにならない現実と何度も向き合いました。けれど、書と向き合う時間の中で、自分の心を整え、そこにある感謝や喜びを見出す術を身につけていきました。その過程で生まれたのが、この「幸せは いつも 自分のこころが決める」という究極にシンプルで力強い真理だったのです。

私たちは、つい「もっと〇〇だったら幸せになれるのに」と考えがちです。学生なら「成績が良ければ」、社会人なら「給料が上がれば」、恋愛なら「理想の相手がいれば」。けれど、その条件が揃ったとしても、心が不満や比較に囚われていれば、満たされることはありません。一方で、たとえ状況が完璧でなくても、小さな喜びや今あるものへの感謝を感じられる人は、穏やかな幸せを日々味わえるのです。

ここで思い出すのは、ある若い女性の話です。彼女は夢だった仕事に就きましたが、職場の忙しさと人間関係に疲れ果て、「こんなはずじゃなかった」と嘆く日々を送っていました。そんなとき偶然目にしたのが、相田みつをさんのこの言葉。最初は半信半疑だったそうですが、試しに毎日、「今日は何に幸せを感じられるか」を日記に書き出すことにしました。朝のコーヒーの香り、同僚の笑顔、道端の花。やがて彼女は、同じ職場にいながらも、以前よりずっと満ち足りた気持ちで日々を過ごせるようになりました。外の環境は変わらなくても、心の見方が変われば、世界の色も変わるのです。

もちろん、人は感情の生き物ですから、いつも前向きでいることは難しいです。悲しみや怒り、不安や焦りは、避けられない人生の一部です。しかし、相田さんはその中でも「心の舵取り」を自分で握ることの大切さを教えてくれます。嵐の海でも、舵を放り出してしまえば流されるばかり。けれど、どんなに波が荒れていても、自分の手で舵を握り、少しずつでも進む方向を決めることはできる。その舵こそが、自分の心の選択なのです。

この言葉は、若い世代にこそ響くものだと思います。情報があふれ、他人の成功や華やかな生活がSNSを通して次々と目に飛び込んでくる時代。比較は避けられず、「自分はまだ足りない」という思いに押しつぶされそうになることもあるでしょう。そんなとき、「幸せは いつも 自分のこころが決める」と思い出すことは、心の支えになります。他人の基準ではなく、自分の感じる小さな幸せを大事にできれば、外の嵐に振り回されずに、自分らしい人生を歩めるはずです。

相田さんの書は、この言葉をただ文章として読むのとはまた違った深みを与えてくれます。墨の濃淡、余白の取り方、文字の形や勢い。それらが一体となって、言葉に命を吹き込むのです。活字で読めば一瞬で過ぎる一文が、相田さんの筆によって、じっと心に留まり、何度も思い返す宝物のような存在になります。

あなたが今、何かに迷い、疲れ、幸せが遠いと感じているなら、この言葉を静かに心に置いてみてください。「幸せは いつも 自分のこころが決める」。これは、あなたの人生を誰にも奪わせないための、大切な鍵です。外の出来事や他人の評価は変えられなくても、あなたの心の向け方は、あなた自身の手に委ねられています。

人生の道のりは、きっと順風満帆ではないでしょう。けれど、この鍵を持っていれば、どんな場所にも自分なりの幸せを見つけられます。喜びも悲しみも、自分の中で消化し、味わい、歩み続けることができる。それが、相田さんが書に込めた願いであり、優しさなのだと思います。

そしてもし、まだ相田みつをさんの書を目にしたことがないなら、ぜひ一度その作品を探してみてください。墨の香りが漂ってくるような温かい筆致と、飾らない言葉が、必ずあなたの心に寄り添ってくれるはずです。

どうか、自分の幸せの舵を、自分の心で握り続けてください。
そして、ぜひ先生の書を検索してね。