本田宗一郎という人間は、単なる技術者でもなければ、ただの経営者でもありませんでした。彼はまさに“生きること”そのものをエンジンのように燃やしながら、自分の道を突き進んだ男でした。戦後の焼け野原から立ち上がり、世界に“ホンダ”の名を知らしめたその道のりは、決して平坦ではなかった。しかし、彼には貫いていたものがあった。それが「信念」です。
「最後に頼れるのは、自分の信念だ。」
この言葉に込められた思いを、あなたは感じ取れるでしょうか。
どんなに頭の良い人でも、どんなに環境が整っていても、どれほど人に恵まれていたとしても、人生の本当に苦しいとき、頼れるのは“他人”ではありません。希望すら見えなくなった夜、誰にも理解されない孤独のなかで、それでも前に進もうとするとき、人がすがるのは「自分が信じている何か」だけなのです。
本田宗一郎は、学歴がなかった。戦争で工場が焼け落ちたこともある。創業間もない頃は失敗も連続し、周囲から「無謀な夢だ」と揶揄されることもあった。それでも彼は立ち止まらなかった。なぜか――それは、どんなときでも「自分の信じた道」が、目の前にあったからです。
彼の信念は、単なる頑固さや意地とは違います。それは「もっと良いものを作りたい」「人を感動させたい」「世の中の役に立ちたい」という、純粋な情熱と誠実な願いから生まれたものでした。誠実に物を作り、誠実に生きる。それが、彼の根っこだったのです。
例えば、こんなエピソードがあります。
あるとき、レース用のエンジンで致命的な故障が起こり、チームの士気が下がったことがありました。誰もが顔を曇らせるなか、本田宗一郎は怒りもせず、ただ静かにこう言ったといいます。
「これは、挑戦の途中で出た“答え”なんだよ。問題が出たということは、進んでいる証拠だ。ここからが本当の勝負だ。」
失敗を恥じることなく、正面から受け止める。そして、その失敗から次に進むための糧を得る。そこにあったのは、ブレることのない信念でした。
今、あなたがどんなに不安で、どんなに周囲と比べて自分が劣っているように思えたとしても、信じてほしいのです。あなたのなかにも、燃えるような“自分だけの信念”があることを。それは、まだ言葉になっていないかもしれない。まだ形になっていないかもしれない。でも確かにある。その火を消さないでください。
他人の声に惑わされるとき、SNSやニュースに気持ちが引きずられるとき、「あの人みたいになれない」と心がくじけそうになるとき――そのときこそ、自分の信念に耳を澄ませてください。
「本当は、どうしたいのか」「自分は、何を信じているのか」「誰の評価ではなく、自分の中の声に正直でいられているか」
その問いかけを忘れないでください。なぜなら、それこそが人生の羅針盤だからです。
本田宗一郎は、部下や若い技術者にいつもこう言っていたそうです。
「偉くなろうなんて考えるな。ただ、面白いことを一生懸命やれ。」
成功や評価を追うな。今、自分が面白いと思えることに没頭しろ。人から褒められることより、自分の胸が高鳴ることを選べ。そうすれば、周りが何を言おうと、人生は充実する。
その生き方は、華やかに見えるかもしれません。しかし、実際は誰よりも“自分との戦い”の連続でした。
「自分は本当に正しいことをしているのか」「この挑戦は、誰かのためになっているのか」
そんな自問自答を何度も繰り返しながら、本田宗一郎は生涯を通じて挑み続けたのです。
あなたにとっての信念とは、何でしょうか。
人に優しくすることかもしれません。嘘をつかないことかもしれません。夢をあきらめないことかもしれません。誰かの笑顔のために働くことかもしれません。
それは小さな想いでかまいません。派手でなくていい。人に理解されなくてもかまわない。だけど、自分だけはその信念を疑わないでください。人生のどんな嵐の中でも、あなたの“軸”になってくれるのですから。
信念は、目に見えないエネルギーです。誰かに見せびらかすものではありません。ただ静かに、心の奥で燃えている炎。
あなたが泣きながらも一歩を踏み出せるのは、その信念があるからです。あなたが誰に何を言われても立ち上がれるのは、その信念があなたを支えているからです。
本田宗一郎は、自らの信念をもって、世界と戦いました。あの時代に、世界の大企業と渡り合うなど、誰もが「無理だ」と言った。それでもやり遂げたのは、たった一つ、自分を信じ抜いたからです。
あなたの人生も、同じです。
周囲がどう言おうと関係ない。どれだけ時間がかかろうといい。あなた自身が「信じるに足る生き方」を貫けば、必ず人生は応えてくれます。
最後にもう一度、この言葉を胸に刻んでください。
「最後に頼れるのは、自分の信念だ。」
それがあなたの人生を支え、あなたの未来を照らす光となることを、心から信じています。
――ありがとう、本田宗一郎さん。
あなたの言葉が、今日もまた誰かの人生を動かします。