本田宗一郎という人は、ただのエンジン開発者ではありませんでした。彼は、「夢」に命を懸けた男であり、「情熱」に人生を賭けた男でした。どんな困難にも負けず、何度も倒れては立ち上がるその姿は、今の時代を生きる私たちに、深い問いと希望を投げかけてくれます。
今回ご紹介する言葉。
「仕事を愛せ。愛された仕事は裏切らない。」
この言葉に込められた意味は、単なる職業への忠誠や、仕事熱心を説いたものではありません。本田宗一郎は、ただ「頑張れ」と言いたかったのではないのです。彼が伝えたかったのは、人生のエネルギーの注ぎ方、そしてそれによって生まれる信頼関係と人間の誇りです。
若いあなたに、まず問いかけたい。
いま、あなたは自分のしていることを「好き」と言えますか?
学校、バイト、仕事、人間関係――日々の営みの中で、心から「これが好きだ」「これを極めたい」「これに自分を懸けてみたい」と思える何かに、出会っていますか?
本田宗一郎は、貧しい家に生まれ、学歴もなかった人です。でも、エンジンの音に惚れ、油まみれの手に喜びを感じ、機械と対話する毎日に、心が震えた。彼は、心の底から「機械いじりが好き」だったのです。
そして、ある日こう悟るのです。
「好きで好きでたまらないものに打ち込めば、どんな失敗も自分を強くしてくれる」
「誰かに笑われても、愛してやまないものは自分を裏切らない」
だから彼は言いました。
「仕事を愛せ。愛された仕事は裏切らない。」
ここでいう「仕事」とは、給与の出る義務だけの活動ではありません。
あなたが情熱を燃やすもの。
眠れなくなるほど心を奪われること。
誰よりもその時間が好きだと言える活動。
それが「あなたの仕事」です。
たとえ今、それが人に理解されなかったとしても――。
たとえ結果がまだ出ていなくても――。
それでも「自分はこれが好きだ」と思えることがあるなら、それは、あなたにしかできない「人生の仕事」になっていくのです。
本田宗一郎は、幾度となく失敗しました。
飛行機開発に夢を抱き、空襲で工場を失い、資金が尽き、仲間が去り、体も壊しました。でも、彼は仕事を、夢を愛していた。だから、倒れてもまた立ち上がれたのです。
なぜなら、彼の中に揺るぎない確信があったから。
「この仕事は、絶対に俺を裏切らない」
愛してきた。
向き合ってきた。
血と汗と涙を注いできた。
そんな仕事が、自分を見放すはずがない。
その想いが、彼を世界のホンダに押し上げたのです。
若い皆さん。
夢をもつことは素晴らしい。
でも、夢を「叶える人」と「諦める人」の差は、何でしょうか?
それは、「好き」の熱量です。
好きだから、寝る間も惜しまず調べる。
好きだから、失敗してもすぐに次を考える。
好きだから、やめたくない。
そんな「好き」という情熱が、人生を支える本物の仕事をつくり出すのです。
そして、その仕事を愛しぬいたとき、仕事があなたに報い始めます。
あなたの元に人が集まり、信頼が芽生え、結果が形となって返ってきます。
遅いかもしれません。でも、必ず返ってきます。
本田宗一郎は、言葉ではなく「背中」で語る人でもありました。
若い社員に「やってみろ」と言い、失敗しても怒らず「で、次はどうする?」と問いかけた。
悩んでいる若者には「自分で考えろ」とだけ言い、自分で答えを見つけさせた。
上手くいった時には、誇らしげに肩をたたいた。
彼のまなざしは、いつも「人間を信じる目」をしていたのです。
そして、その根底にあったのが、「仕事は人間の誇りである」という哲学でした。
若い皆さんへ。
いま、辛いこともあるでしょう。
自分に自信が持てないこともあるでしょう。
仕事が合っているのか分からなくなる日もあるでしょう。
でも、そんなときこそ、思い出してください。
「仕事を愛せ。愛された仕事は裏切らない。」
この言葉は、「人生を愛せ。君の命を捧げる価値は必ずある」という、優しくて、でも厳しいメッセージでもあります。
焦らなくていい。
すぐに答えが出なくてもいい。
でも、自分の人生を賭けるに足る「好き」を探してほしい。
そして出会ったなら、全力で愛してほしい。
そうすれば、その「仕事」はきっと、あなたを裏切らない。
本田宗一郎の生き方は、「好きなことに命を懸ける」ことが、人を最も強く、優しく、美しくするのだと教えてくれます。
今、この時代を生きるあなたにこそ、その魂を受け継いでほしいのです。
社会や誰かの評価ではなく、自分自身の「心の熱」で、これからの道を照らしてほしい。
心をこめて。
本田宗一郎さんに、そして今、これを読んでくださったあなたに――
ありがとう。