人生という長い旅の中で、私たちはしばしば「正しい道」や「成功する道」を探し続けます。幼い頃から、効率や成果を重視するような社会の中で、「できるだけ早くゴールにたどり着くこと」が美徳であるかのように教えられてきました。まっすぐ進むこと、遠回りをしないこと、それが「賢さ」であり「優秀さ」だと信じる空気の中で育った若い世代にとって、「回り道」は時に失敗であり、恥であり、無駄であると感じられてしまうのかもしれません。
しかし、相田みつを先生のこの言葉——
「道は一つじゃない 回り道に咲く花もある」
この一言は、そんな固定観念をやさしく、しかし深く揺さぶってくれます。
私たちはどうしても「まっすぐ行くこと」が正しいと信じてしまいます。人と比べて焦ったり、遅れを感じて自分を責めたり、「こんなはずじゃなかった」と悩んでしまう。受験に失敗した人、就職がうまくいかなかった人、夢を途中であきらめた人、人間関係でつまずいた人——そうした人たちの心に、この言葉は深く染み入るのではないでしょうか。
人生には無数の道があります。そして、「遠回り」だと思っていたその道の先にこそ、忘れられない風景や、かけがえのない出会いや、自分を成長させてくれる出来事が待っていることがある。相田先生は、それを「回り道に咲く花」と表現しました。なんと美しく、そしてあたたかい言葉でしょう。
この「花」は比喩でありながら、実に現実的な真理をついています。たとえば、挫折を経験した人にしか見えない景色、痛みを知った人にしか響かない言葉、失敗から学んだ知恵や人間としての深み。それらはすべて、回り道をしたからこそ得られるものです。
先生の書は、ただの詩ではありません。墨のにじみや文字のかすれ、そして力強さややさしさが同居した独特の筆跡に、人生の重みとユーモア、孤独と希望が溶け込んでいます。人間くさく、等身大で、かっこつけない。だからこそ、読む者の心にまっすぐ届きます。
若い人たちは、いま多くのプレッシャーを抱えています。SNSで見える他人の「成功」、親や周囲からの期待、自分に対する不安。思い通りにいかないことがあると、「自分は間違っているんじゃないか」と思い込み、心を閉ざしてしまいがちです。ですが、そんなときこそこの言葉を思い出してほしいのです。
「道は一つじゃない 回り道に咲く花もある」
この言葉は、人生を生きるうえでの許しです。「焦らなくていいよ」「自分のペースでいいんだよ」と、そっと背中を押してくれる。道に迷ったとき、それは“迷い”ではなく、“選択肢が増えた”ということかもしれません。回り道をしている今こそが、自分にとっていちばん大切な時間かもしれない。そう思えるだけで、心はふっと軽くなります。
相田先生の言葉は、決して「こうしなさい」と命令しません。ただ静かに、「君のままでいい」と語りかけてくるのです。その声に耳を傾けると、肩の力が抜けて、自然と前を向くことができるようになる。目には見えないけれど、確かに生きる力をくれるのです。
この言葉に出会えたあなたは幸運です。そして、あなたの心の中に、きっとすでに「咲きはじめている花」があるはずです。まだ気づいていないだけで、すでにあなたの歩いてきた道には、かけがえのない景色があったのです。どうかそれを、見過ごさないでください。
最後に、この文章を読んでくださったあなたに一つお願いがあります。
もし少しでも心が動いたなら、どうか「相田みつを 書」や「相田みつを 詩」で検索してみてください。先生の手によって描かれた言葉と書体の世界は、きっとあなたの人生に新たな光をもたらしてくれるはずです。書店や美術館、そしてネットの中にも、あなたを待っている言葉がきっとあります。どうか、その優しさと強さに、もう一歩近づいてみてください。