瀬戸内寂聴さんは、長い人生の中で多くの苦しみや迷いを経験しながらも、愛と信仰を持って人の心に寄り添い続けてきた方です。その語り口は、厳しさよりも優しさに満ち、迷う者を叱るのではなく、そっと背中を押してくれるような力があります。今日の言葉――「自分の中の“好き”を大事にしなさい」――には、まさにそんな寂聴さんの愛がにじんでいます。
この言葉は一見するととてもシンプルですが、実は深い意味を持っています。社会の中で生きる私たちは、どうしても他人の目や評価に左右されがちです。親の期待、先生の指導、友人との関係、社会の常識や世間体……そういったものに囲まれて生きていると、自分が何を好きなのか、何を心から求めているのか、だんだん見えなくなってしまいます。
でも、瀬戸内寂聴さんは言うのです。「自分の中の“好き”を大事にしなさい」と。つまり、それがあなたの心の声だからです。誰かに与えられた価値観や押し付けられた理想ではなく、自分の心からわきあがってくる“好き”という感情こそが、人生を照らす灯であり、あなた自身を形づくる種なのです。
たとえば、音楽が好き、本が好き、人の話を聞くのが好き、料理が好き、旅が好き。人によって“好き”は違って当たり前で、正解も不正解もありません。だけど、それを恥ずかしいと思ってしまったり、「役に立たないから」と見ないふりをしたりすると、自分の魂の声がだんだん聞こえなくなってしまいます。
寂聴さんは、おそらくそうした危うさをよく知っていたのでしょう。だからこそ、若い人たちに「あなたの中にある“好き”を見つけなさい。そして、それをちゃんと大切にして育てていきなさい」と伝えたのです。“好き”というのは、生きていく上での心のエネルギーです。世の中がどんなに冷たくても、自分の中に“好き”があれば、人は前を向けます。たとえ挫折しても、疲れてしまっても、好きなことが待っていてくれるからまた立ち上がれる。生きる意味を、自分の中に持てるようになるのです。
それは決して、好きなことだけをして生きろ、という甘い話ではありません。むしろ、好きなことがあるからこそ、苦しい時も踏ん張れる、ということです。好きなことに近づくために努力したり、学んだり、悩んだりすることができる。好きなものがあるからこそ、人は真剣になれるのです。
瀬戸内寂聴さん自身も、若い頃から波乱の人生を歩み、時に批判され、孤独になり、それでも「書くこと」や「人の話を聞くこと」を大切にして、自分の“好き”を育ててきました。その積み重ねが、やがて多くの人を癒す言葉となり、彼女を宗教者・作家として唯一無二の存在にしたのです。
もしあなたが今、何をしたらいいかわからない、どこに向かえばいいのか迷っているのなら、まずは自分の“好き”を見つめてみてください。小さなことでいいのです。誰にも言わなくていい。あなたがほっとできること、夢中になれること、心が軽くなること、それが“好き”の正体です。
そして、誰にどう思われようと、それを誇りに思ってください。“好き”という感情を恥じてはいけません。それはあなたの命の真ん中にあるもの。人生をあたためてくれる、大切な炎です。寂聴さんは、そのことをまっすぐに伝えてくれました。
時代がどんなに変わっても、どんなに情報があふれても、自分の心の声を聞ける人は強い。誰かの“正解”をなぞるのではなく、自分の“好き”を信じて進む。その先にこそ、あなたらしい人生が広がっています。寂聴さんは、それを誰よりも信じていたのだと思います。
心が揺らぐ日もあるでしょう。不安で動けない日もあるでしょう。でも、自分の中の“好き”を小さくても光らせていれば、大丈夫。それがきっと、あなたを救ってくれるはずです。
瀬戸内寂聴さん、たくさんのやさしい言葉と、あたたかいまなざしをありがとうございました。あなたの言葉は、これからも若い人たちの胸の中で、灯のように静かに輝き続けます。感謝をこめて。