美しさとは、どこから生まれるのでしょうか。容姿が整っていること、服装が洗練されていること、姿勢が良いこと。たしかに、それらは見た目の美しさをつくる大切な要素かもしれません。しかし、五木寛之さんはそれ以上に大切なことがあると教えてくれます。それが「美とは、心の姿勢である」という言葉に込められた深い意味です。
この言葉には、時代を超えて私たちの心を静かに打つ力があります。外見にとらわれがちな現代において、本当に大切なのは、見えるものではなく、見えないもの。つまり、心の持ちよう、在り方なのだと、五木さんは私たちに語りかけています。
たとえば、困っている人にそっと手を差し伸べる人、誰かの悲しみに寄り添い、黙ってそばにいてくれる人。そうした行為は、けっして派手ではありませんが、深い心の美しさを感じさせます。その人の振る舞いや表情の奥にある、他者を思いやる姿勢。まさに「心の姿勢」こそが、美しさの本質であるといえるでしょう。
五木さんは、どこか寂しさや儚さを感じさせる世界観の中で、人間の根源的な姿を見つめ続けてきました。そしてその眼差しは、いつも「人の内側」に注がれています。どれだけ飾っても、心が荒んでいれば、言葉は冷たくなり、行動にはとげとげしさが表れます。逆に、たとえ質素な身なりであっても、心に温かさがあれば、自然とその人の佇まいから「品格」がにじみ出てくるのです。
美しさというと、特に若い人たちは「外見的魅力」に意識を向けがちです。SNSの時代、写真や動画を通じて「見た目」を磨くことが大切にされる風潮があります。もちろん、それも一つの努力であり、否定すべきではありません。しかし、その努力の根底に「誰かのために美しくありたい」という思いや、「自分をよりよく生きたい」という信念があるかどうかが、最も大切なのだと五木さんは教えてくれています。
つまり、「美とは、心の姿勢である」とは、自分がどんな気持ちで生きているのか、何を大切にしているのか、そしてその思いが日々の言葉や行動にどう表れているのかという、生き方そのものへの問いかけなのです。
五木さんの作品には、人生の痛みや苦しみに耐えながら、それでもなお、人としての誠実さを失わない人物たちが描かれています。たとえば戦争を生き延びた人、社会の片隅で声をあげずに生きている人、あるいは家族や社会との断絶の中で悩む若者。そうした人々が持つ静かな覚悟や優しさ、哀しみを受け入れる強さは、まさに「心の姿勢」の美しさと言えるでしょう。
また、五木寛之さんは「老い」や「死」といったテーマにも真正面から向き合いながら、その中にある「生の意味」を問い続けてきました。それは単なる哲学ではなく、人としてどう生きるかという根源的なメッセージです。美しさは若さの特権ではない。どれだけ年を重ねても、いや、むしろ歳を重ねることでしか得られない美しさがあるということ。心を育て、深め、しなやかに保つことが、歳月のなかで生まれる本当の美しさなのです。
この言葉を、現代を生きる若者たちに贈りたいと思います。外見ばかりに心を奪われ、自分を見失いそうになるときこそ、心の姿勢を正してほしい。自分の信じることを大切にし、人を思いやる気持ちを忘れず、正直に、謙虚に、そしてしなやかに生きること。それこそが、誰よりも美しい生き方なのです。
たとえば、挨拶を大切にすること、感謝の言葉を忘れないこと、人の話を最後まで聞くこと。そうした何気ない習慣の一つひとつが、心の姿勢をつくります。そしてそれが、周囲に温かさをもたらし、自分自身の人生をも美しく彩っていくのです。
人は見かけだけではありません。真の美しさは、誰かと出会ったときの第一印象ではなく、長く付き合う中でじわじわと感じられていくもの。心の中にある信頼、誠実さ、優しさ、そんな姿勢が、やがて大きな魅力となってその人を輝かせていくのだと思います。
若いうちは、どうしても結果や評価に目が向きがちです。でも、人間の価値は「どう見えるか」ではなく「どうあるか」にこそあります。何かを得ることよりも、どういう姿勢で生きているか。成功よりも、どんな志で歩んでいるか。その在り方が、人生の深さと広がりを決めていくのです。
だからこそ、この言葉を胸に刻んでほしいのです。「美とは、心の姿勢である」。たとえ不器用でも、うまく生きられなくても、真剣に生きる心がある人は、それだけで美しい。何かを守り、何かを信じ、誰かを思いながら、自分の道を歩む。そんな生き方の中にこそ、美は宿るのです。
五木寛之さん、私たちに大切なことを気づかせてくださって、ありがとうございます。外見だけではなく、心の奥を見つめることの大切さを教えてくださって、ありがとうございます。どんなに時代が変わっても、変わらない価値があるということを、静かに語ってくださって、心から感謝します。
これからも、私たちはあなたの言葉を胸に、心の姿勢を美しく保ちながら歩いていきます。どうかその言葉の灯火が、迷う心を照らし続けてくれますように。ありがとうございました。