タイトル:心がすっと軽くなる「気にしない力」
人生には、「なんであんなこと言われたんだろう」「どうして私だけ…」と、つい心に引っかかってしまう場面がいくつもあります。頭では「気にしないほうがいい」と分かっていても、心が勝手に反応してしまう。そんな自分に嫌気がさしたり、疲れたりしていませんか?
名取芳彦さんの『気にしない練習』は、そんな私たちの心にそっと寄り添いながら、「気にしない」という生き方をやさしく、温かく教えてくれる一冊です。まるで静かな禅寺の庭に腰かけて、お坊さんと静かに話しているような穏やかさと安心感。読んでいるうちに、じんわりと心が軽くなっていくのを感じました。
この本は、いわゆる「メンタル本」ではありません。励ましの言葉で心を奮い立たせるタイプの本でもありません。むしろ、がんばりすぎている心に「がんばらなくてもいいんだよ」と語りかけてくれる、心の処方箋のような本です。多くの仏教の教えがベースになっていますが、宗教的な難しさはまったくありません。現代の私たちにぴったりとフィットする言葉で、丁寧に、優しく紐解かれていきます。
「気にしない」とは、無関心になることではなく、「反応を手放すこと」。これが本書の大きな軸になっています。嫌な言葉を投げられたとき、その言葉に心がすぐさま反応し、モヤモヤしたり怒ったりしてしまうのが人間です。でも、その反応は、自分で選べる。心のスイッチを「入れっぱなし」にしておくのではなく、「自分でオフにできるようになること」が、気にしないということなのだと名取さんは教えてくれます。
例えば、著者は「バカ」と言われたときにどう反応するかを例に出します。「本当にバカなら怒る必要はないし、バカでないなら気にする必要もない」と。まるで禅問答のようですが、この言葉が妙に胸に残ります。真理とは、案外シンプルで力強いものなのだと実感します。
さらに本書では、人間関係のストレスや、他人の目を気にしすぎてしまう自分、過去の後悔や未来への不安など、現代人が抱えやすいテーマがたっぷり詰まっています。その一つひとつに、まるでお坊さんがそっと手を合わせて話してくれるような、やさしくて深い言葉が添えられています。
特に印象的だったのは、「比べない練習」の章です。他人と自分を比較してしまうのは、多くの人の悩みの根っこにあります。SNSで誰かの幸せそうな日常を見て、羨ましくなったり、自分の人生が見劣りするように思えたり…。でも名取さんは言います。「自分は自分。他人は他人。みんなちがってみんないい」。その言葉は、使い古された言葉ではなく、本当に腑に落ちるかたちで心に届きました。
この本のすごいところは、読み終わったあとに「よし、明日から気にしないようにがんばろう!」ではなく、「あ、もう気にしなくてもいいんだ」と思えてしまうところです。心が静かになって、世界の見え方が少し変わる。そんな読後感です。
感動は、感動のまま終わらせるのではなく、行動に変えてこそ意味がある――これは私の持論ですが、この本はまさに、「行動に移したくなる感動」にあふれています。ページを閉じた瞬間、「気にしすぎていた自分」と、そっと距離を置けるようになる。人間関係のトラブルも、失敗も、嫌な出来事も、「それでもいい」と受け入れる力が湧いてくるのです。
今、心が少しでも重い人、誰かの言葉に振り回されがちな人、自分に自信が持てない人。この本は、そんなあなたの心にそっと寄り添い、人生を少しだけ優しく照らしてくれるはずです。ページをめくるたび、肩の力が抜けていくような不思議な読書体験。そして気づけば、自分の心に「気にしない練習」の芽が静かに根を下ろしていることに気づくでしょう。
この本に出会えてよかった。そう心から思える一冊です。私はすぐに図書館に走りました。今もカバンに入れて、折にふれて開いています。あなたも、ぜひ一度手に取ってみてください。人生が、ほんの少しやさしくなる。そのきっかけが、ここにあります。