経済・経営・経理マンの巣窟

経済・経営・経理マンの巣窟

大・中・小あらゆる企業で経理実務経験約40年の蔵研人が、本音で語る新感覚の読み物風の経理ノウハウブログです。

 

 イランをめぐる戦火が広がり、ホルムズ海峡が閉鎖されてから約二週間が経過した。

 資源に乏しい日本は、原油の約95%を中東に依存しており、そのおよそ七割がホルムズ海峡を通過しているとされる。すでにその影響は現れ始め、ガソリン価格は急速に上昇し、リットル180円台を突破した。状況が長期化すれば、将来的に400円台に達する可能性も否定できないとの指摘もある。

 しかし問題は、単なるガソリン価格の上昇にとどまらない。
 石油は自動車燃料だけでなく、物流を支える軽油、航空燃料、さらには石油化学製品の原料として、現代産業の根幹に深く組み込まれている。したがって原油価格の高騰は、製造業・物流・物価の広範な領域に波及することになる。

 もっとも、日本は過去の石油危機の経験を踏まえ、世界有数の石油備蓄を整備してきた。国家備蓄、民間備蓄、産油国との共同備蓄を合わせると、現在およそ254日分、すなわち約八か月分の備蓄があるとされる。

 このため短期的には供給が途絶する事態には至らないとみられる。
 しかし、今回の紛争が長期化すれば事情は大きく変わる。円安の進行と相まって輸入インフレが加速し、ガソリンのみならず、電気・ガス、食品、化学製品、運賃など幅広い価格上昇が起こり得る。いわゆる日本型スタグフレーションの懸念も現実味を帯びてくるだろう。

 さらに事態が深刻化すれば、備蓄の取り崩し、物流コストの急騰、貿易赤字の拡大などが重なり、景気後退を招く可能性もある。

 しかし、より本質的な問題は石油そのものより、そこから生まれる副産物にある。なかでも重要なのが「ナフサ」である。

 ナフサは石油化学産業の基礎原料であり、ナフサ → エチレン → 各種プラスチック原料という流れを通じて、現代産業の基盤素材を生み出している。この供給が滞れば、社会のさまざまな領域に影響が及ぶ。

たとえば石油化学製品。
 ポリエチレン、ポリプロピレン、PVCなどの樹脂は包装材、家電、自動車部品、医療材料などに用いられ、ほぼすべての製造業の基礎材料となっている。

自動車産業も例外ではない。
 現代の自動車は重量の三〜四割がプラスチック部材で構成されており、内装部品、ワイヤー被覆、バンパー、電子センサーなどに幅広く使用されている。

医療分野でも石油化学製品は不可欠である。
 点滴バッグ、シリンジ、カテーテル、注射器、人工透析回路、医療用手袋など、多くの医療器具がプラスチック素材によって支えられている。

さらに食品物流も同様だ。
 コンビニ弁当の容器、スーパーの肉トレー、冷凍食品の包装袋など、食品流通はプラスチック包装なしには成立しない。

半導体産業もまた石油化学材料を多く使用する。
 フォトレジストや有機溶剤、樹脂材料などが製造工程に不可欠である。

ではナフサの代替は存在しないのだろうか。
 実際には、米国、中国、韓国ではエタンを原料とする石油化学プラントの建設が進みつつある。エタンを用いることでナフサ依存を低減し、コスト面でも競争力を高めることができるからである。

 さらに、LPG(プロパン・ブタン)、バイオナフサ、リサイクルプラスチック(ケミカルリサイクル)など、代替原料の研究も進められている。とはいえ、日本にはナフサ原料を前提とした巨大石油化学コンビナートが数多く存在し、構造転換は容易ではない。
 いずれにせよ、中東情勢の緊張が世界経済に深い影を落としていることは間違いない。特に中東依存の高い日本にとって、その影響は小さくない。
 当面は石油備蓄の放出やガソリン補助金によって急場をしのぐことになるだろう。しかし、それだけでは長期的な解決にはならない。


 もういこんな状況下での消費税減税論議は終結し、その財源とエネルギーをイラン危機対策に転用すべきである。そして円安の早期是正、過度な中東依存の脱却、さらにはエネルギー安全保障の再構築、原料調達の多様化など、日本の産業構造そのものを再検討する契機として受け止めるべきではないだろうか。

文:蔵研人

 

下記のバナーをクリックすると、このブログのランキングが分かりますよ! またこのブログ記事が役立った又は面白いと感じた方も、是非クリックお願い致します。

 

 

にほんブログ村 経営ブログ 財務・経理へ
にほんブログ村