上司が部下にAIを使わせて資料をまとめさせ、仕上がったファイルを眺めながら「この部分、少し怪しいけれどエビデンスは取れるかな」と問いかける。部下は「できますよ」と軽やかに答え、ワンクリックで引用元を表示する。それを確認した上司は「頼れるね」と微笑み、二人は満足げにうなずき合う。
最近よく目にするこのCMを覚えている人は多いだろう。確かに、日本のオフィス風景を巧みに切り取った“実物大”の映像作品と言えるかもしれない。
だが、こうした光景を当然のように繰り返している限り、日本企業が世界の先頭に立つ日は遠いのではないか。部下が行っているのは、AIの簡単な操作にすぎない。本来なら、報告者と思われる上司自身が行えばよい作業だろう。にもかかわらず、部下に任せて「助かったよ」と満足してしまう。これではAI導入の目的が、人件費の節約でも効率化でもなく、単なる“新しい雑務の創出”になってしまう。
昭和の時代、コピーやFAXを女性社員に任せてふんぞり返っていた上司像があった。しかし、AIというさらに簡便な道具の操作まで部下に委ね、その成果に感心している現代の上司は、ある意味でそれ以上に哀しい存在なのかもしれない。
文責:蔵研人
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