2005年10月03日


2005年のノーベル医学生理学賞を受賞したバリー・マーシャルさん

ノーベル医学生理学賞を受けたロビン・ウォーレン氏(AP)
 スウェーデンのカロリンスカ医科大学は3日、今年のノーベル医学生理学賞を、オーストラリアのバリー・マーシャル西オーストラリア大教授(54)と、病理専門医ロビン・ウォーレン博士(68)に贈ると発表した。ピロリ菌が胃炎や胃・十二指腸潰瘍(かいよう)の発生に深く関与していることを突き止めたことが評価された。近年は胃がんとの関係も次第に明らかになってきている。賞金は1000万クローナ(約1億4600万円)で、両氏で折半する。授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。

 豪州の王立パース病院の病理医だったウォーレン博士は79年、胃炎患者の胃粘膜に、小さな曲がった未知の細菌(ピロリ菌)がいるのを見つけた。

 マーシャル教授との共同研究で、さらに100人の患者の組織を調べた結果、胃炎や胃・十二指腸潰瘍を患っているほとんどすべての患者で、ピロリ菌を確認した。

 試行錯誤の末に82年には分離培養に成功、マーシャル教授自身が菌を飲む実験をして急性胃炎が起こることを確かめた。

 その後、胃の奥の幽門部(ピロラス)にある細菌という意味でピロリ菌と名付けられた。

 この発見までは、強い酸性の胃液がある胃の中では細菌は生息しにくいと考えられていた。消化性潰瘍などはストレスと生活習慣が主たる原因と考えられていたが、除菌が再発を防ぐことを臨床的に証明した。このおかげで、消化性潰瘍は、抗生物質と胃酸の分泌を抑える薬を組み合わせた短期間の治療で済む病気になった。

 慢性疾患を微生物が引き起こしているという発見は、他の多くの病気のメカニズムを解明する手がかりにもなった。

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 〈ピロリ菌〉 正式名はヘリコバクター・ピロリ。らせん形にねじれた棒状の細菌で、大きさ4マイクロメートル(1000分の4ミリ)ほど。鞭毛(べんもう)で動き、胃粘膜を覆っている粘液に潜り込み、長年にわたってすみ着く。酸を中和する酵素を持ち、強い酸性の胃酸から身を守っている。