「な、何でそんなことを…。」
見ていて、辛かった。
自らは栄養失調寸前で死にそうなのに、食糧を一人の少女に託してまで、なぜ…町ぐるみで義賊のような事をするのだろう…。
二人には分からなかった。
と、セナが話してくれた。
「実は…みんな、重税に苦しんでるの。
一人当たり…月…数百万の地方税に。」
二人はただ、驚いた。
明らかに法外な地方税に…。
「…クシェロでも、そんなに高くないのに…。」
と、レオンが真っ青になると、
「それ以上に気付かんのか、レオン…。」
値段ばかりに目が行くレオンに、アスカが突っ込む。
「見返りが小さすぎんだよ。
地方税が数百万の町の情勢とは思えない…。」
さらにセナは話を続ける。
「…お金が払えなくなったら、命はないんだよ…。
あたしのパパは殺されて、ママは捕虜になって、首都に連れて行かれちゃったの…。
女はいい魂を持ってるから…って。」
アスカは、かなりの苛立ちを覚えた。
懐から文庫本(愛読書・運命の下り坂(文庫版・全三巻))が落ちたのにも気が付かずに。
「(何を考えてやがる!!
人の命を玩具同然に見下しやがって!!
…畜生、神様っていうのは…本当にインチキな奴だ…。
弱い奴には、何の救いもないじゃないか…。)」
と、そんなことをやっている隙にセナが本を拾った。
そして、一冊…ちょっと読んでみた。
だが、本好きアスカみたいにはいかず…
「(…うーっ…活字、わかんないよ…。)」
結局ギブアップしたのだった。
と、アスカはそれに気付いた。
「…セナ?」
「…あ、ごめんなさい。
勝手に本…読んじゃって。
あと…すみません、ちょっとお二人のお名前…。」
この一言に、二人は焦った。
「(あ、まだ名乗ってなかったな…。)
オレはレオンだ。
で、そちらさんがアスカ。」
「…悪いな、レオン…。
で、ワシに何か?」
「…すみません、本…お返しします。」
「ああ、確かに。」
セナは、アスカに本を返した。
さっきのやり取りを見る限り、アスカの苛立ちに関しては、ちょっと落ち着いたようだ。
と、