暗い時間の長い闇の中で、
ほんのり灯火を回らせる走馬灯を見つめる俺が居た。
この日はそれは、こんな情景を俺に差し出している。
布団に入って寝ている俺の耳に入ってくる、
「怒鳴り合い」の声。
それで毎晩、どうしても目が覚めてしまうことにも、すっかり慣れてしまっていた。
あまりにも長いあいだ続いている「日常」なそれのせいで俺は、
(夫婦というのは毎日喧嘩しあうもの、なんだ・・)
と子供ながらに考えていた。
明日は遠足だったっけ、天気どうだろうかな、
バスの隣の人、仲のいい友人でよかった、きっと楽しい時間になるかな
お菓子、いいの買えなかったけど、滅多に食べられないし、美味しいだろうな。
ふすまを隔てた隣の台所から続く、言い争いの怒鳴り声を聞きながら、
そんなことを考えて、また寝ようとがんばってみていた。
学校に行けばクラスは冷たい、
家に帰れば両親は喧嘩ばかり、
それに倣って弟とは毎日喧嘩を頑張っていたあの日々。
「どこ」に何を見つけたらいいかを探す気も起きないし、
気を起こしてもどうせ何も見つけられない、
それだけな日々はなんか嫌だったので、俺は
どんどんルーズ、自分勝手になっていった。
めんどくさいもんね、投げりゃいいのさ!
走馬灯はそう語っているような気がした。
つながりという名前の「暖炉」に当たることができないままに過ごした小学時代、
その時代の中で心に育ち続けたのは、「遺伝」として与えられた両親の「2つの欠点」
ルーズさと自分勝手さ。
運動会なときにリレーを見ていた俺は、
転んだ選手が起き上がって次の走者にバトンを渡すのを見ていた。
そのバトンは土で汚れた色をしていた。
さぁ「命」だよ、走り始めなさい!と、俺が両親から与えられたバトンは、
土の色のように、錆びていた。
暗い淡い光を味方につけながら回る走馬灯は語りかける。
「どこで両親は転んで、バトンを錆びさせてしまったのかな~!」
走馬灯はどこまでも意地が悪い・・
それでも渡されたからには、走るしかない。
「自分のもってるバトンは、錆びているんだ」と
心に言い聞かせ続けながら、走るしかない。
錆びたバトンを持つことを、拒む方法を知るはずもない。
渡されたそれを持って、走ることに必死になることしかできなかった。
走馬灯は語り続ける。
「遠足の時のお菓子、味がしなかっただろ?
でも美味しいと思えたよな?
バトンが味付けをしていたからなんだぞ!
呪われたバトン、それがお前の「荷物」なのさ!」
俺は走馬灯を見つめる・・
そしてそれは回転しながら、その雨だった遠足の時の空の色のような、「明るい」灰色の光で
この日は、俺を照らしていた・・