日本のクラシックコンサートホールと、その残響時間の歴史から・・

日比谷公会堂

↑日比谷公会堂(千代田区)

戦後、オーケストラの演奏会が復活した時、東京での会場は、日比谷公会堂で行なわれました。

しかし、もともとが演説会場であり、残響時間は1.0秒と短く、とてもオーケストラの美しい響きを聴く様な条件では、なかったのです。

例えて言うなら、布団をかぶって、音楽を聴く様な響きです。


神奈川県立音楽堂  

↑神奈川県立音楽堂(横浜) 

ロイヤルフェスティバル

↑ロイヤルフェスティバルホール(ロンドン)

1954年に、日本最初の音楽専用ホールの、神奈川県立音楽堂が、完成しました。

ロンドンのロイヤルフェスティバルホールの設計資料を、参考にして計画され、残響時間は1.2秒と短めですが、実際にはもう少し長く感じられて、当時は好評でした。

日本のコンサートホールの原点と言われていますね。


東京文化会館

↑東京文化会館(上野) 

1961年に、東京文化会館は完成しました。

音響は、NHK技研が担当をして、残響時間も1.6秒となりました。

多目的ホールではありましたが、ようやく日本国内でも、オーケストラの響きの音が、楽しめる事となったのです。


ザシンフォニーホール

↑ザ・シンフォーニーホール(大阪市)

1982年に、日本で初めて大型音楽専用ホールが完成しました。

アリーナ型を採用をして、残響時間も2.0秒と良好でした。

ようやく、日本にも本格的なシンフォニーホールが完成しました。


前田ホール

↑洗足学園大学の前田ホール(川崎市)

1984年完成の、ヨーロッパのシューボックス型の音響条件を忠実に再現した、前田ホール。

残響時間は2.0秒と良好で、シューボックス型特有の、音に包まれる感じ実現して、話題になりました。


サントリーホール

↑サントリーホール(六本木)

1986年に、東京最初の大型音楽専用ホールが完成。

ベルリンフィルハーモニーホールをモデルにした、アリーナ型です。

六本木のアークヒルズという好立地条件で、身近にクラシック音楽の客層を拡大させたホールです。


オーチャードホール

↑オーチャードホール(渋谷)

1989年に渋谷のBunkamuraに完成しました。

都内で二番目の、大型音楽専用ホールとして、オープンしました。

室形は、シューボックス型で、残響時間もサントリーホールと同じ2.0秒ですが、アリーナ型のサントリーホールとは、異なった音響特性を持ち、引き締まった響きがあります。

そしてこちらでは、コンサートホールでありながら、オペラやバレエの上演もできる点も、特徴です。


東京芸術劇場

東京芸術劇場大ホール(池袋西口)

1990年完成。扇型を採用。

残響時間は少し長めの2.1秒で、響きすぎる点が好みの分かれるところです。

1階ロビーから大ホールまで、長いエスカレーターでアプローチをします。


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ヨーロッパの主要なホールが、残響時間を2秒前後として、それが世界のホールの標準となりつつあります。

ただし、ピアノ独奏会の場合には、残響時間が1.6秒と短い方が、聴きやすく、又演奏しやすいという事も、言われていますね。

その場合は、可動式の吸音材なども、使われたりします。

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東京の音楽専用ホールは、3つのホール型式を体験できる、世界でも珍しい都市です。


1、サントリーホール (アリーナ型)

真ん中部分にステージがあり、それを囲む様に客席がある。つまり演奏者の後姿を見る席もある。建築的なふいんきは優れているが、音響的には問題点が多いのも事実です


2、オーチャードホール (シューボックス型)

横幅が狭く天井が高い、長方形の形。バルコニー席がある場合もある。音響的は最適な構造だが、客席数は多くとれません。


3、東京芸術劇場 (扇型)

アリーナ型に似ているが、真後ろの客席はない。つまり客席は半円形にステージを取り囲む。音響的には、問題点が多い様です。


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世界の代表的なホールの紹介・・・

ベルリンフィル

↑ベルリン・フィルハーモニー

オーケストラを中心において、聴衆が取り囲むアリーナ型の元祖と言われています。

ベルリンフィルの本拠地です。

音響的にも優れたホールであるが、席の場所によっては、かなり差があります。


ムジーク

↑ウィーン楽友協会 大ホール(ウィーン)

ウィーンフィルの本拠地で、シューボックス型です。

ホール全体が楽器となり、素晴らしい音です。

ステージの見えないバルコニー席でも、良好の音です。

(一度は行ってみたいなぁ・・)


ミュンヘンフィル

↑ミュンヘン・フィルハーモニー

ミュンヘンフィルの本拠地で、扇型です。

建築的には壮大な空間ですが、壁からの反射音に乏しく、音響的に問題があります。

(広すぎて音が散ってしまうそうです。)



↑シドニー・オペラハウス・コンサートホール

2700名の収容人数という過酷な要求のために、全長65メートルという長さになってしまった。

そのせいか、音響的には評判は良くない評価です。

(見学だけですが、行った事があります^^)

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自分の家を持つ、フランチャイズホー

例えば、ベルリンフィルハーモニーのホールは、音響的にはクセののあるホールです。

ただし、そこをフランチャイズとしているベルリンフィルの楽員達は、弾きこなし方を熟知して、ホールの特性を活かしながら演奏するのです。

言い換えれば、ホールそのものが、「巨大な楽器」になっているのですね。