運命が変わった場所

さぁ書くぞ。今日こそ。いよいよだ。「❼」にして、ようやく、本題に入る。研究授業の前後の内容ではなく、研究授業そのものに焦点を当てて詳述していく。無論、覚えている範囲内ということになろうが、全力を尽くす心構えだ。書き始める前から覚悟は出来ていた。今日は書く。絶対書く。「明日やろう」ではない。「今日から俺は!」である。

 

研究授業。時間にしてみれば、たったの50分間だ。1時間弱、教壇に立って、生徒達の前で、用意してきた授業内容を進めて来るだけのことだ。なんだ、簡単なことじゃないか。そうなんだ。僕自身、そう思う。それに、生徒達は、これまでの実習授業で、何度か授業を受け持ったことのあるクラスの生徒達でもある。いわば顔見知りの間柄なわけだ。やりやすいことこの上ない。普段と異なるのは、先生方が、僕の授業をチェックしているか否か、ただそれだけなのだから。

 

そう。ただそれだけのはずなのだ。なのだけれども、それが、どうしたって、気になってしまうのもまた事実。それを裏付けるように、研究授業直前の、授業と授業の間の休み時間の時に、事前準備に取り掛かっている最中、今から教えるクラスの生徒の子から「いつもと比べてソワソワしてるね?(笑)」と、声をかけられたのだから。

 

忘れもしない。女子中学生(3年)に、僕の緊張を見破られた。それに、こんなことは声を大にして言うべきことでもないが、僕僕の、生徒指導的な関わり合いは、お世辞にも、褒められたものではなかった。他の実習生と比べて、生徒達との触れ合って得た知見等のフィードバックが、僕は一番、少なかった。これはおそらく間違いない。ほぼ”聞き専”になっていた。相手がそれに気付いていたかどうかは定かではないが、僕は内心、「実習生という身分で、限られた期間内しか接することが出来ないのが難しい、なんて言い訳がましいこと言ってるから、駄目なんだろうな…。」と、自己嫌悪に陥っていたから、よく覚えている。また、その事実を、正直に打ち明けることも出来なかった。僕は、そういう人間だ。人に道理を説けるだけのものを持ち合わせていないのだ。ナニカが欠損している。そのナニカは僕もまだ判然としていないのだけど。

 

・・・ダメだダメだ。またやってしまった。話を戻すぞ。今日は書くんだ。今日こそはちゃんと書くと決めていたんだ!

 

女子中学生にちょっかいのようなものをかけられた僕は、「まあなぁ…。」「緊張するねんなぁ…。」と、包み隠すことなく、言った。ハッキリと「緊張」というワードを持ち出した覚えは確かにある。彼女は「ふーん(笑)」程度の軽い相槌を打って、そのまま、教壇から去って行ったけれど、一声かけてくれたことが、僕は、とても嬉しかった。僕からすれば「今日は研究授業だね!頑張ってね!」と、ストレートなエールを送られるよりも、元気付けられるというか、勇気付けられるというか、「ようし、やってやるぞ!」と思えたものだ。今更にしても程があるが、今一度、あの子には感謝したい。当時は、確か、2017年の出来事になるはずなので、ざっと7年前、ということは、今は、22歳ぐらいになっているのか・・・。あの時は、ありがとう。おかげで、肩の力がフワッと抜けた心持ちになれたよ。

 

僕は、一通りの準備を済ませた後、授業開始の合図となるチャイムが鳴るまで、黒板回りの整理をしていた。これは、一種のルーティンでもある。他の先生方(実習生も含む)は良く分からないが、僕は、「マイチョーク」を持って、板書を書くようにしていた。「他の人が触ったチョーク触れないの?(笑)」などと、からかわれたこともあるが(本当にそう思われていた可能性もある。僕のことを潔癖症と捉えている人もチラホラ居るみたいなので、その線を疑ったのかもしれない)、そういうわけじゃなくて、ただ単に、使い慣れているものじゃないと落ち着いて書くことが出来ないから、というだけの意味なのだ。

 

もう一つ挙げるとすれば、共用のチョークを用いて授業を行うとなると、書いた後、自分が立っている周辺に置いて、また書く時に、「あれっ、あの色のチョーク、どこに置いたかな…。」と探したりする手間が省ける、というのもあると思う。僕はチョークセットを教卓の隅に置いていた。今は忘れてしまったが、当時は、色毎に、順番が決まっていた。付け加えると、「教卓の隅」も、自分の中で、場所がキチンと決まっていた。「教職実践演習」の頃にお世話になった実習校では、左上のところに、席順と名前が書かれた紙がプリントされていたので、その真下に置くようにしていた。

 

こういう、細々としたことを揃えておくことで、勝手にリズムが生まれて、本来のパフォーマンスを発揮しやすくなるのだと、僕は心得ている。そういう気質が、前述した「潔癖症っぽい」というレッテルを貼られやすい要因なのかもしれない。また、僕に限らず、こういった気質の短所としては、イレギュラーに弱いということだ。いわゆる「マイルール」が、他の人よりも多いとなると、突発的な出来事が発生すると、「どうしよう、どうしよう…。」とパニックになりやすかったり、想定外の出来事が起きると、「こんなはずじゃなかった…。」と目の前の物事に真正面から向き合いにくくなったりすると、僕は感じている。

 

そのザマが、今日の、この記事の内容である。

 

・・・明日こそは、必ず。

 

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