運命が変わった場所

「❶」では、研究授業に臨むにあたっての、事前準備や心構え等について書き記した。いわば導入部分というわけだが、あの内容から、”研究授業を行う前からプレッシャーに負けている状態”であったことが、お分かりいただけかと思う。(我ながら情けない話ではあるが…。)

 

そうこう言っても、研究授業の日は、やってくる。そりゃあそうだ。「教育実習」の時だってそうだった。研究授業を行わないと、”教育実習を修了しました”と認定されないのだから。みんな、やっていることなのだから、僕だけ抜け駆けするわけにはいかない。

 

人間、逃げ場がない状態に追い込まれると、”もう遮二無二やるしかない”という精神状態になれるものだ。そういうのを「火事場の馬鹿力」と呼んだりするのだろう。後から振り返ると「もう少し早めに着手しておけばよかったのに…。」と思うことばかりだが、多分、それが出来ないのが、人間なんだろうな、とも思う。もしくは、早め早めに着手出来る人は、他の人とは違った結果を出せる、とか。「火事場の馬鹿力」というと、特殊な能力のようにも思えるけれど、案外、ほとんどの人間が、持ち合わせているスキルなのかもしれない。

 

当時の僕も、実習授業を終えて、残りは研究授業のみ、というタイミングになって、ようやく、重たい腰を上げた。本来、もっと早くの段階から、やれることはあったはずなのに、手を付けてこなかった。「目の前のタスクをこなすのに精一杯だったから仕方あるまい」という声もあろう。まぁ確かに間違いではない。のほほんと過ごせるほど、教職実践演習は甘くはない。なぜなら「教職課程を取っている大学生」ではなく「教師の卵である教職大学院の院生」として見られるのだから。ある程度、厳しい目で見られるのは、当たり前のことだ。

 

とはいえ、もっとやりようはあったはずだ、とも思う。事実、週末、学校に顔を出す必要が無い時は、”プチ現実逃避”と題して、教職とは全く関係の無いことに、時間と労力を費やしていた気がする。これも、今思うと、愚行と言わざるを得ない。「お前は生徒達の大切な授業時間を預かって何をやっているのか?」と問いたくなる。ただ、当時の僕の言い分としては、「リフレッシュする時間がないと、とてもじゃないがやっていられない」である。まぁそれもそうなんだが…。

 

こういう話に関しては、人それぞれ、様々な意見をお持ちだと思うし、何が正解というわけでもないが、僕からすれば、「子ども達の前で授業を行うことを想像するだけで心がウキウキする!」だとか「子ども達と共に生活して喜怒哀楽を感じ合って共に成長していけると思うとワクワクが止まらない!」などと、心の底から思える人が、教職に就くべきなんだろうな、と思っている。そういう人は割合でいえば極僅かなのかもしれない。ただ、僕の身近に、一人、そういうタイプの人が居て、「あぁ、こういう人が、教師になるべきなんだなぁ…。」と、ハッキリ感じてしまった以上、相対的に、「じゃあ俺は教師になるべきじゃないんだろうなぁ…。」とも、ハッキリ感じてしまったわけである。その一部始終は、生涯、忘れることが出来ないだろう。

 

かくいう僕自身、教師を志しはじめた頃は、「生き甲斐。遣り甲斐」を強く求めていた。「教師はブラックだからやめておけ」などと言われるたびに「客観的に見ればブラックなのかもしれないが、主観的に見ればブラックではないかもしれない」「拘束時間うんぬんを言い出したら仕事とプライベートの区別が曖昧な職業はいったいどうなる?」などと、反発心を抱く自分が居たものだ。

 

まぁ、あくまでも「反発心」であって、相手に伝わる状態で「反発」していたわけでもないのだが。「まぁそういう声もあるよなぁ…。」と、苦笑いを浮かべながら、心の中では、ブツブツと、悪口雑言の数々をぶちまけていたわけなのだが。こういうところも、やはり、教師として、というか、人として、欠落した部分がある気がしてならない。

 

今回のように、僕は、ひとたび、思索に耽ってしまうと、最終的には、「まぁ俺みたいな人間は人に教えを説くタマじゃないよな…。」などと、自嘲じみた笑みを漏らしては、自信を喪失させる癖がある。考えれば考えるほど、とめどなく、自己嫌悪の念が湧いて出て来るのだ。

 

「思考は現実化する」とはよく言ったもので、自らへのダメ出しを繰り返していると、本当に、そのような状態になってしまう。そう。今の僕は、「自分は教職に向いていない…。」という自己認識に従うように、教職の道から外れて、無頼漢のような生活を送るようになった。

 

その結果が、これである。「研究授業❷」と銘打ちながら、今回は、研究授業に関する話は、ほとんどしていない。「研究授業を行う範囲は分かっているにもかかわらず直前になるまで準備に取り掛かろうとしなかった」という話から、一人語りを始める始末だ。「タイトル詐欺」と指摘されても言い返せないレベルである。

 

「研究授業❸」では、もっと、踏み込んだ話を書いていこう、と思う。

 

ごめんなさい。

 

 

 

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