運命が変わった場所

 

「#11」や「#12」などで書いて来たように、僕は、教職大学院に入学してからというもの、大学と大学院のレベルの違い(「教職大学院」という、より専門性に特化した学校なのもあるかもしれないが)に、戸惑いを覚えるようになり、「このままじゃダメだ…。」「何とかしないと…。」という気持ちを、日増しに強めるようになっていった。

 

ただ、具体的に、何をどうすれば良いのか、というのは、定まっていなかった。ひとたび考え出すと、自分には足りないところだらけじゃないか、というのもあったと思う。また、時間的猶予もなければ、精神的猶予もなかった。全ての面でレベルアップしたいという向上心は持っていたとしても、日々の講義をこなすのがやっとで、自主的な学習は、ほとんど出来ていなかった。それもまた自らの首を絞めたようにも思われる。

 

今思えば、「このままじゃダメだ…。」と思ったタイミングで、同じコースに所属している学友達に、もっと助けを求めるべきだった。当時の僕は、”同じことをやっているだけじゃダメだ”という観念を、強く持ち過ぎていた気がする。確かに、馴れ合いの関係になってしまっては、お互いにプラスを生まないだろうが、少しベクトルをかえれば、切磋琢磨し合える関係を構築することも出来たはずだ。にもかかわらず、僕は、周りと距離を置くようになっていった。

 

ただ、自分の気質的な問題もあったと思う。僕が所属しているコースの院生は、全員でも30人足らず、確か、25人程度だったと思う。また、自習室は、一人一台分の座席とパソコンが設けられており、講義外の時間は、そこで、各々の時間を過ごしているらしかった。それを聞いた僕は、直感的に「自分はそこに居ると環境に甘えてしまいそうだな…。」と感じ、あまり足を運ぼうとしなかった。パソコンが必要な課題等が出た場合は、自宅のパソコンを用いて、資料等を作成するようになっていった。

 

あの時は、それが最適解だと思った。ただ、今思うと、「もっと別のやり方もあったんじゃないか…。」とも思う。確かに、自分の気質的には、みんなでワイワイ何かを行なうよりも、一人で淡々と何かを行なう方が、集中出来るし、質の良いモノを創り上げることが出来るタイプだと思う。それは今でも変わらない。だが、それを差し引いたとしても、もっと、自分の方から、歩み寄るべきだったなとも感じるのだ。

 

端的に言えば、僕は、孤立していた。周りからどう思われていたかは、実際に聞いたことがないので良く分からないけれど、少なくとも、僕の目から見た時に、「あっ、俺、浮いた存在になっているな…。」というのは、強く感じていた。そうハッキリと自覚した頃には、”時すでに遅し”の状態であると思った。今から立ち居振る舞いを一変させるのは難しい、と思った。自分で蒔いた種なので自業自得と言う他は無いが、この”疎外感”が、自らを苦しめることになっていった。

 

「俺、先生に向いてないな・・・。」

 

周囲から浮いた存在であると自覚し始めた頃から、そんな憂鬱感を覚えるようになっていった。「みんなと馴染めない自分に『学級経営』を行なえるのか?」などと思ったりもした。「教科指導」に関する悩みだけでなく、「生徒指導」に関しても悩むようになった。”悩み”というよりも”不安”と言った方が良いかもしれない。学校の先生が為すべき業務、一つ一つが「俺には務まらないだろう…。」と思うようになっていったのだ

 

現状にもがけばもがくほど、理想と現実の乖離(かいり)が激しくなるような気がしてきた。正直、一人では抱えきれない、悩みや不安があった。教職大学院に進学を決めた時は、大学での教職課程では不十分だと感じて、”もっと自分に自信を持てるように”という思いがあったはずなのに、実際に行ってみると、ますます自信を持てなくなる事態に陥った。また、そういう気持ちを、周りの人に言い出すことも躊躇(ためら)われた。

 

この辺りから、教職大学院での日々が、苦痛に感じるようになっていった。そんな中でも、講義には出席していたし、課題やレポート等も、自分のベストを尽くして臨んだつもりだった。向上心も失ってはいなかったと思う。ただ、とにかく、楽しくなかった。必然的に、パフォーマンスも低下していたようにも思う。

 

こう書くと語弊があるかもしれないが、極論、馴れ合いの関係であったとしても、気心知れた存在が、1人でも、身近に居れば、全然、違っていたのかもしれない。その点が、大学と大学院で、大きく異なっていた部分だった。大学では、お互いに足を引っ張り合っていた感もあるが、軽口を叩き合える友人が居た。大学院では、そういう存在が居なかった。いや、そもそも、つくろうとしなかったのだ。”甘えを生む”と思ったから。

 

それが、間違いの始まりだったのかもしれないと、今更になって思う自分が居る。

 

 

 

 

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