一人暮らし中の怖かった思い出

 

 

僕は、大学のサークルの夏合宿に備えて、身支度を済ませなければならなかったのに、前日までダラダラと過ごしてしまい、バイトが終わってから、深夜~早朝帯に、バタバタで荷物の準備等を済ませて、そこから眠ったら100%遅刻すると思って、一睡もせぬまま、集合場所へと向かって行ったことがある。ただ、これだけだと、今日のテーマとは、何ら関係が無いので、合宿に関する諸々は、また別のお話・・・。

 

実は、荷物の準備等を済ませていた「深夜~早朝」の間に「ピンポーン」と、突然、部屋のチャイムが鳴ったのだ。これが、今回のテーマと合致する話。なので、ココにフォーカスして、深掘りしていきたい。

 

大学時代、僕は、居酒屋でアルバイトをしていた。その日のシフトによりけりだが、この日は、よりにもよって(まぁシフトが分かりながらも前日まで準備を怠った自分が悪いのだが…。)、遅めの時間帯から、ラスト(お店の閉店時刻|AM2時)まで入ることとなっていた。そこからまかないをかきこむ。腹が減っては戦は出来ぬ(食費を浮かす意味合いも大きかった)。「じゃあ明日早いんで~お先失礼します~」と言いながら、足早に店から出て行った。

 

「さぁここからが長いぞ今日は…。」

 

バイト先から自宅までの道中、僕は、チャリに乗りながら、覚悟を決めていた。物心が付いた頃から、ギリギリまで追い込まれたら、火事場の力を発揮するタイプなのである。決まって、KAT-TUN『Real Face』が脳内再生される。「ギリギリでいつも生きていたいから~♪」。ホントは余裕を持って生きたいはずなのに…。「ギリギリでいつも生きていたい」なのか、「ギリギリでしかいつも生きられない」なのか、僕自身、サッパリ見当が付かない有り様なのだ。

 

そうこうしているうちに自宅に着いた。当時住んでいた家は3階建てのアパートだった。僕は3階に住んでいた。螺旋階段式。エレベーターなんて文明の利器は無い。バイトで疲れた身体には少々堪えたものだが、今日ばかりは、そんな弱音は吐いていられない。僕は、自転車を停めるやいなや、エイヤッと、2段飛ばしぐらいで駆け上がって、あっという間に部屋の中に入った。

 

「さぁ始めるとしようか…。」

 

当時、冷蔵庫に完備されていたエナジードリンク「モンスター」を、リッチに、氷を入れたグラスに注いで、それを一口、味わうように飲んでから、ひたすら、身支度の作業に取り掛かった。BGMは、もちろん、KAT-TUN『Real Face』、ではない。それは脳内再生オンリー。ごめんなさい。ハッキリとは覚えていないけれど、確か、J-POPごちゃまぜだったと思う。アジカンとか、AquaTimezとか…。多分、そこら辺の曲が流れていた気がする。何となくだけど。

 

「消して~♪リライトして~♪」

「くだらない超幻想♪」

「忘れられぬ存在感を♪」

 

「どうせならもう~♪」

「ヘタクソな夢を描いていこうよ~♪」

 

もうすっかり、ランナーズハイならぬ、前夜祭ハイ(他に良い呼び方あったら教えてくれ)になっていた僕は、疲労感が吹き飛んでしまったかのように、テキパキと身支度を整えていった。

 

その時、

 

「ピンポーン」

 

突然、部屋のチャイムが鳴った。反射的に時刻を確認する。3時を回ったぐらいの頃だ。3時と言っても、夕方3時ではない。朝3時。早寝早起きの人でもまだ活動しておらず、遅寝遅起きの人でもベッドに入っていることが多そうな、一番、活動している人が少なそうな時間帯。そんなタイミングに、部屋のチャイムが鳴ったのだ。

 

(えっ・・・。)

 

僕は、かたまった。なんなら「怖かった」という感覚すら、感じる余裕が無かったかもしれない。まず頭に浮かんで来たのは「深夜~早朝なのに騒がしいんだよ!」という騒音に関するクレームだ。

 

別に、アジカンのゴッチばりに、「消してえええええええ!」「リライトしてえええええええ!」と、叫びながら歌っていたわけではない。口ずさむように「消して~♪」「リライトして~♪」と、曲に合わせて歌っていただけだ。身支度に関しても、僕なりに、時間帯を気にしつつ、作業を行なっていたつもりだ。実際、掃除機をかけたのは、家を出る直前ぐらいの、朝方になってからだった。「深夜帯に掃除機をかけるのはマナー違反だ」という話を小耳に挟んだことがあるからである。

 

僕が、フリーズしたまま、思索を巡らせていると、

 

「ピンポーン」

「ピンポーン」

「ピンポーン」

 

(うわっ・・・。)

 

まただ。部屋のチャイムが鳴った。今度は連続して何回も鳴った。もうなんか、ここまでくると、霊的なナニカが、頭をよぎり始める。「ワタシ、メリーさん。今、アナタの家の前に居るの…。」的な。とてもじゃないが、チャイムに応じる気にはなれなかった。”騒音問題で怒られるのが怖かった”からではない。”霊的存在に命を奪われるのが怖かった”からだ。

 

「・・・・・・・・・・」

 

(・・・・・・・・・・)

 

どれぐらいの時間が経ったのだろうか。部屋のチャイムは鳴らなくなった。僕はフリーズしたまま。今、思い返すと、せいぜい1~2分くらいだったかもしれない。けれども、当時の僕にとっては、永遠とも思えるぐらい、長い時間が経過したような気がした。

 

「・・・あっ、身支度を最後まで済ませないと」

 

やるべきタスクがあったのが幸いしたのか、僕は、我に返ることが出来た。そこからは、先ほどまでと比べて、2倍、いや、3倍ぐらい、騒音のことを気にしながら、作業を進めていった。近隣住民から「あの部屋留守っぽいね?」と思われるぐらい、音を立てないようにした。これは大袈裟ではない。本当にそれぐらい、細心の注意を払って、作業を行なっていた。繰り返しになるが、騒音を怒られたからではない。霊的存在に僕のことを認知されないためだ。

 

そこからは、特に何事も無いまま、作業は完遂して、朝を迎えて、家を出る時間となった。

 

この頃には、深夜のピンポンのことはすっかり忘れて、オール状態の眠気もすっかり忘れて、ただただ、合宿へのワクワク感で満たされていた。足早に螺旋階段を降りる。1階に出て、最寄り駅に向かうために、バス停まで行こうとした。

 

その時、

 

???「あっ、ちょっと待って!」

???「コレ!気を付けなさいよ~!」

 

僕「あっ・・・」

僕「すいません・・・」

 

突然、アパートの管理人の方が、僕に声をかけながら、あるモノを手渡してきた。

 

 

それは、自転車のカギだった。

 

管理人「さしっぱなしにしてたら危ないからね~!」

管理人「代わりに抜いて預かっておいたよ~」

管理人「チャイム鳴らしたんだけど出て来なかったから…。」

 

僕「あぁ・・・」

僕「すいません・・・」

僕「ありがとうございます・・・」

 

思いもよらぬところから真相が明らかになった瞬間だった…。

 

めでたし、めでたし(?)

 

教訓:急いでいる時こそ自転車のカギの閉め忘れに気を付けよう!

 

 

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