智子達は流星の話を聞いてから
施設に何度も足を運び
流星を自分の家に泊まらせた。
智子の息子が2人、旦那に
他の兄弟も智子と共に
暮らしていた。


その中で流星は智子の家に泊まっている時こそが、何よりの
幸せだと感じるようになり
施設でのイジメにも耐えられるようになった。
周りの人間も生き生きとしている流星に戸惑いの色を滲ませた。



流星はある日、智子から一枚の
CDを渡された。

流星が智子の息子である烈(イサオ)とコンポで音楽を聴いていたら
智子がやってきたのだ。


「この曲聴いてみ!!!」
真剣な表情で智子は行った。

「何なん?この曲?」
烈が訊いた。

しかし、智子は無言でCDをセッティングして再生ボタンを押した。


スピーカーから流れてきたのは






「globeっていうアーティストのOVER THE RAINBOWっていう曲や、覚えな。」
そう言い残して智子は去った。



流星は貰った歌詞カードを見ながら憶え始めた。



globe OVER THE RAINBOW


信じたくない出来事をあなたは
いつもどうやって乗り越えて
きましたか?
惰性とか妥協とか堕落とか
落ちる感覚が沢山の希望に
満ち溢れていたはずの純粋さを
泥まみれにしてしまったその時
誰があなたを救ってくれたのでしょう


OVER THE RAINBOW
空へ掛け上がる気持ちを持てるなら
例え虹を越えられなくても
素敵な感覚なんじゃない?
OVER THE RAINBOW
びしょ濡れになった僕の心を
君が癒してくれた証なんだから


永遠という文字あなたは
素敵な言葉と思っていませんか
安らぎはなかなか永遠とは
相性が良くないみたい
だけども君のひたむきで
力強い想いが雨音を
期待のリズムに変えてくれました

OVER THE RAINBOW
空へ掛け上がる気持ちを持てるなら
例え虹を越えられなくても
素敵な感覚なんじゃない?
OVER THE RAINBOW
びしょ濡れになった僕の心を
君が癒してくれた証なんだから

OVER THE RAINBOW
夕立が上がった頃に空を
眺めて見ましょうよ
OVER THE RAINBOW
ビルの隙間からでも
いいんじゃない?
きっとあなたにとっての
彼が彼女が虹を見せて
くれるでしょう!!!!

OVER THE RAINBOW
feel the rainbow
I was the rain
you become the rainbow

into my heart....



聴き終わった流星の目には
いつしか涙が溢れていた。
正に自分の心を映している
完璧な曲だった。


流星は一瞬でglobeの虜になった
そんな自分を受け入れるのに
然程時間はかからなかった。




流星は小学校卒業したのと
同時に福祉施設へと入れられた。家庭内での暴力と学校での
問題行動がそれの決め手となった。
枚方市から遥か遠い
貝塚市の山の上に建つ所に
「あゆみの丘」はあった。


春の桜が山の景色を
色気付けさせていた。









「はい、じゃあ流星君!自分の部屋に行こっか?お母さんにさよなら言って?」


あゆみの丘の職員が流星の
肩を叩きながら言った。
施設内での説明会が終わり
入所が決定した児童達が
それぞれの担任に連れられて
自分の部屋に案内されていた。

「ばいばい…」

流星は俯きながら呟いた。


別れに対する悲しさとか
寂しさは一滴も無かった。
むしろ自由になれた現実に
喜んでいた。





流星はすぐに友達が出来た。
同い年の男3人が部屋で
音楽を聴いていた流星に
ご飯を誘い、それがきっかけで
意気投合した。


前田聖(タカシ)、藤田翔悟(ショウゴ)
堤進一郎(シンイチロウ)

みんな大阪出身で
堤に関しては同じ枚方だった。



4人は間もなく本性を
現した。







夜間徘徊やイジメ等
一秒たりとも暇を感じない程に
暴れ回った。
前田と堤とは特に仲良くなり
同じ部屋でいつも溜まってた。




「流星、飯行こ!」

「前田、風呂行こ!」

「堤、ゲームやろ!」


いつもいつも3人で
行動しいた。
周りの人間はそんな流星達を
(ズッコケ3人組)と呼んだ。



しかし、そんな幸せな日々は
続かなかった…






いつも3人で行動している事に
不満を持ち始めた者がいた。



藤田翔悟だった。





いつもリーダーシップを取る
流星に腹を立てて
前田や堤、その他の者をも
脅して流星を仲間外れにするように言い聞かせた。


ある日の朝から
みんな流星と口を聞かなくなり
流星はひとりぼっちになった。
でも流星は平気だった。
こんな事はこれまでに
日常茶飯事にあった事だから。
時期終わるだろうと…






現実は厳しかった







流星は自分の服も物も体も
壊されて行くようになった。

身体的な暴力がまた始まった。
藤田は仲間を得た事に
有頂天になり流星を集中的に
イジメた。


次第に流星はご飯も風呂も
行かなくなった。
ずっと部屋に引きこもるように
なっていた。







そんな時、流星の元に
面会人が現れた。




職員に呼ばれた流星は
驚きながらも付いて行った。





そこに待っていたのは
もう何年も会ってなかった
長女の智美とその家族だった。







流星はその時、初めて
大声上げて泣き叫んだ。


「で、何が言いたいん?」

流星は目を細めた。

翼は流星の質問には答えず
周りをキョロキョロしてから
流星の耳元で囁いた。

「周りにばらされたくなかったら俺のもやれ。」

翼の口は笑っていた。

まるで獲物を窮地に追い込んだ
虎の様な目を向けて…


流星は迷わず従った。


近くの草むらで翼が
満足するまで弄ばれた。
この時に流星の中で何かが
プツリと切れたのが分かった。



その日から流星は
裕人や翼に留まらず
こっそりと広まった噂に
次々と飢えた男友達の
性欲処理に使われる日々を
人形の様に送っていた。

もう自分が男か女か解らない。
何故、自分が男ばかりから
狙われるのか…
日増しにそんな事も考えずに
奉仕に尽くした。



家に帰れば直子達からの暴力。
夜は裕人の性欲処理。
学校では嫌われ者で
特定の人間の性欲処理。
それプラス友達からのイジメ。
先生からは問題児扱い。


流星はそろそろ限界に来ていた。






ある朝、流星は学校の屋上に
立って下の景色を眺めていた。
登校してくる楽しげな生徒が
蟻の様に小さく見えた。


「もういいや…」


流星は呟いた。
そんな言葉とは裏腹に
手刷りを掴んだ両手は震えた。
でも、もう全て終わりにしたい!

流星が覚悟した、その時…







「流星~!!!飛び降りろっ!!」



教室の窓からクラスメートが
手を振って流星に叫んだ。
女子も男子もみんな流星に
飛び降りろ、と怒鳴った。


「飛び降りろ!!飛び降りろ!!
飛び降りろ!!飛び降りろ!!」


飛び降りろコールが学校中に
響き渡った。
その中に流星が慕っていた
友達がいた。



流星はその友達の顔を
見た瞬間に頭が真っ白になった。





何も考えたくない!!







流星は思い切り体を
投げ出そうと前に進み出た。





その時






「こらーーーっ!!村野っ!!!」




後ろ髪を引っ張られて
一気に体が柵の中へと戻った。






そこには担任の先生と教頭と
校長先生が息を切らして
流星を睨んでいた。




「何をしとんねん、お前は!!
命を粗末にすなーっ!!」


担任が涙目で怒鳴った。

流星は自然と涙が溢れ出し
何も口にする事が出来ない。

そのまま校長室に連れて行かれ
すぐに母が飛んで来た。

ひたすら頭を下げて
流星を殴り倒す母。
それを止める先生達。



流星は下を見つめ
魂が抜けた様に黙っていた。











その事件があった後、流星は
自分自身の心に何かが起きたのを、しっかりと感じた。




今まで憎たらしく思っていた
男友達に対して、心が疼く…
性欲処理に使われている時に
流星は相手に対して恋心を
焦がす様になっていた。



「自分は女なんや…体がそれを求めている…愛しくなる…相手を好きになっている。」








流星はその現実に泣いた。










「自分は女と男、両方を愛せる」

つまり、バイセクシャル。





この自分で生きて行く事を
決意した。