龍翁余話(836)「世界の人々から日本はどう思われているか」

 

 “コロナ禍”が一応、治まって以来、訪日外国人旅行者が戻って来た。日本政府観光局の発表によると、今年3月の訪日外国人観光客数は3,081,600人、“コロナ禍”前の2019年の3月に比べ11.6%増となったとのこと。桜シーズンによる花見に加え、今年はイースター(キリスト復活祭)休暇が3月下旬から始まったことなどで訪日外国人観光客が増え、単月として300万人を超えたのは初めてだそうだ。国別に見ると台湾・香港・韓国・シンガポール・フィリピン・ベトナム・インド・オーストラリア・アメリカ・カナダ・メキシコ・イギリス・フランス・イタリア・スペイン・ドイツほか北欧諸国からの観光客も増えたことが3月300万人突破の要因だと言う。東京で買い物をする外国人観光客がメディアで取り上げられる(インタビューされる)シーンをよく目にする。

 

「Youは何しに日本へ?」と言うテレビ番組(テレビ東京系列)がある。日本を訪れた外国人観光客を空港で迎えて「Youは何しに日本へ?」と直撃取材をする。お笑いコンビのバナナマンがMCを務めるバラエティ番組だが、なかなか好調な視聴率(10%~11%)を保っているそうだ。もう1つ、同局のBSで「ワタシが日本に住む理由」と言う番組がある。日本に住む1人の外国人に焦点を当て日本へ移住するに至った経緯や日本に住み続ける理由などをインタビューする番組(MCは俳優の高橋克典)。この2つの番組に共通するコンセプトは「日本の何に(どこに)魅力を感じているか」と言う点であろう。

 

「ニッポン」と言えば、かつては「アキハバラ」「カプセルホテル」「シンカンセン」いや、その前は「フジヤマ」「ゲイシャ」だったが既に“死語”、前述(2つ)の番組でも伺えるように今は(いかにも“客寄せ”的観光地よりも)日本の歴史・地域文化・グルメ、そして飾りっ気のない日常の日本人の暮らしぶりを肌で感じたい、そう言う目的で日本を訪れる外国人観光客が多いことを(翁は)とても嬉しく思う。

 

ところで、外務省では毎年「海外における対日世論調査」を行なっている。これは『世界の人々から日本人はどう思われているか』を認知・分析し、外交政策立案等の参考にしている訳だが今年3月に発表した「米国における対日世論調査」(2023年版)を見ると、米国人の中で一般の人と有識者の意識ではかなりの誤差があることが分かる。例えば「米国と日本は現在どのような関係にあるか」の問いに対し「友好関係にある」と答えた数は一般人で75%、「友好関係にない」11%、「分からない」14%、同じ回答で有識者は「友好関係にある」87%、「友好関係にない」8%、「分からない」4%、もう1つの問い「米国の友邦として現在の日本は信頼出来るか」に対し「信頼出来る」と答えた数は、一般人で73%、「信頼出来ない」12%、「分からない」15%、同じ回答で有識者は「信頼出来る」88%、「信頼出来ない」7%、「分からない」4%、このように米国の一般人と有識者の間では、12%~15%の差がある。(なお、一般人と有識者の定義にていての説明がないので両層の仕訳方は不明瞭)。

 

東京に在るAコンサルティング会社でも「2023年・世界12カ国の親日度調査」(日本に対する好感度と訪日意欲についての調査)を行なった。1部地域を含む12カ国とは、香港・台湾・中国・韓国・タイ・インド・インドネシア・マレーシア・ベトナム・アメリカ・イギリス・オーストラリア――先日、その調査結果が発表された。まず「日本への好感度」について「日本が大好き・好き」の1位は(同率71,3%で)タイとベトナム、次いで台湾。「大好き・好き」の理由として「四季の風景」「日本食」がダントツだが中には日本の歴史・文化に興味関心が強い、との回答もあったようだ。一方、「日本が大嫌い・嫌い」の合計値が最も高いのは韓国。しかし(翁は)これは以前の韓国における対日政策(反日政策)の余韻が残っているせいで、現在の伊錫悦政権の“親日政策”によって韓国民の対日感情は、多少は好転しているのでは、と勝手に想像している。

 

A社の調査のもう1つ「訪日意欲」についてであるが、「日本に行きたいと思うか」の問いに対して「すごく行きたい」「行きたい」の合計値が最も高かったのはタイ(97%)、次いでインドネシア(96%)、反対に「全く行きたくない」「行きたくない」の合計値が高かったのは韓国(19.6%)、次いで米国(17%)。更にもう1つ「日本への旅行で不安なことは」との問いに対して「スタッフとの会話が通じにくい」が圧倒的に多く(平均して約30%)、つまり日本人の語学力の弱さが指摘されている。逆に翁は、近年の日本人、特に若い人たちの語学力(特に英語力)のレベルは高くなっていると思うのだが、実はそうでもないらしい。国際語学教育機関(EF=エデュケーション・ファースト)が昨年発表した「日本人の英語力ランキング」では世界112カ国中80位、という不名誉な結果が出ている。

 

さて、将来的に気になるのは「今後の訪日外国人観光客の動向、特にリピーターの数」である。今やインバウンド(訪日外国人旅行)は日本経済にとって重要な要素であることは言うまでもない。そして、インバウンド需要を創出しているのは訪日数2回以上のリピーターである。日本政府観光庁の調べによると過去10年間でリピーターの数は60%を占めているそうだ。更にインバウンドは日本国内だけでなく日本観光を機に帰国後もインターネットを通じて日本製品を買う外国人の増加も期待出来る――ともあれ「世界の人々に好かれる日本」であるためには技術も施設も語学力も大切であるが、根本は“おもてなしの心”だろう。国を挙げて“おもてなし”を具現したい・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話』。