龍翁余話(828)「メートル法」

 

翁が現役時代は、年に2~3回(テレビ番組取材で)海外に出かけることがあり、旅先では習慣や文化の違いなどでいろいろ困ったり恥をかいたりしたこともあった。特にまごついたのは(例えば)日本とアメリカとの「度量衡(どりょうこう)」の使い方の違いだった。つまり「度」(ど=長さ・寸法)、「量」(りょう=体積・容量)、「衡」(こう=重さ)の名称と数値が、日本の「メートル法」とアメリカの「マイルポンド法」とは異なるので、翁が距離を測ったり物の寸法、重量の計算に思い違いをして失敗したことも幾度かあった。“コロナ禍”以前は、約40年間、毎年ハワイ旅行をしていたが、それでもアメリカ流と日本流の「度量衡」の違いには大いに手こずったものだ。

 

では『メートル法』とは――(今更、説明は不要と思うが)「長さ・寸法」はミリ・センチ・メートル・キロメートルなど、「体積・容量」はミリリットル・センチリットル・デシリットル・リットル・キロリットルなど、「重さ」はミリグラム・グラム・キログラムなど、

「広さ」平方センチ・平方メートル・平方キロメートルなど、「距離」と「速度」(時速)はキロメートル・・・アメリカ(と2,3の国)を除いて、日本及びほとんどの国が『メートル法』を採用している。一方、アメリカの『ヤードポンド法』とは――「長さ・寸法」はインチ・フィート・ヤードなど、「体積・容量」はカップ・パイント・クオート・ガロン

など、「重さ」はオンス・ポンド「距離」と「速度」はフィート・マイル、「面積」は平方インチ・平方フィート・平方ヤード・平方マイル・エーカー(業種によって多少異なる)。

 

余談だが――翁が現役時代、テレビ番組取材で外国(特にアメリカ)へ行った時は、必ずレンタカーを使用した。昔のアメリカ車のスピードメーター(速度計)は、日本の「キロメートル表示」はなく「マイル表示」ばかりだったので、翁自身が運転する時は、道路標識の制限速度と車の速度計をチラチラ見比べながらの運転でかなり疲れた。ましてや、目的地までのマイル表示をキロメートルに換算しなければならないので、これも大変だった。

現在のようにスマホがあれば直ぐに換算出来たものを・・・近年、アメリカ車は「マイル表示」と「キロメートル表示」を併用しているようだから、レンタカーも安心だろう。更に余談だが、アメリカのスーパーや衣料品店で買い物をする時、分量やサイズで判断ミスをしたこともしばしば。いや、それ以前、現地に入り込む前、飛行機内への持ち込み重量やサイズもポンドとインチで決められているので換算する必要がある。それが面倒臭いので翁は個人的には機内持ち込みはなし。撮影クルーが一緒の時はカメラなどの撮影機材は当然持ち込みなので(スタッフが搭乗前に)チェックを受け特別許可を貰っていた。

 

ところで、日本でも「ヤード表示」の場所が1か所ある。それはゴルフ場だ。日本はゴルフが輸入された当時(1901年~)、ずっと「ヤード表示」だった。それが日本人プレーヤーの要望で1975年~1984年の約10年間は「メートル表示」が続いた。翁がゴルフを始めたのがちょうど1985年、その頃は(関東のゴルフ場は)「メートル表示」と「ヤード表示」が半々くらいだった(と思う)。それが1990年代になると、ほとんどのゴルフ場が「ヤード表示」に移行した。最初の頃(キャディから)「グリーンまでの距離は100ヤードです」と言われても(メートル習慣の翁)、「はて、何メートルかな」と質問、するとキャディ嬢「およそ10%引いた数字がメートル数です」。と言うことは、100ヤードは90メートル、200ヤードは180メートル、それなら簡単、翁、今でもその計算でプレーしている。ところが、グリーン上(そのホールの最後にボールをカップインさせる、やや円形の緑の芝生のエリア)だけは、何センチとか何メートル(と『メートル法』)に変わる。ゴルフ番組(国内外の中継)のアナウンサーもゲストもグリーン上では『メートル表示』で話している。何故か?確かな理由は分からないが、多分、日本人には短い距離は『メートル法』に馴染んでいるので、それの方が分かり易いからだろうと思う。(米国はインチ・フィート)

 

4月11日は「メートル記念日」だそうだ。日本の『メートル法』は1885年(明治18年)に国際メートル条約に加盟した。しかし、日本人は江戸時代(あるいはもっと古くから)の『尺貫法』(「距離」=里・町・間、「長さ」=丈・尺・寸・分、「広さ」=反・畝・坪、「重さ」=貫・斤・匁、「量」=斗・升・合・勺など)が日常の習慣になっていたので、なかなか『メートル法』には馴染めなかった。1921年(大正10年)4月11日に『メートル法』を基本とする「改正・度量衡法」が公布され、その4月11日を「メートル記念日」と定めたことにより、徐々に国民生活の中に(『メートル法』が)浸透するようになったとか。完全移行(実施)は1959年(昭和34年)からだそうだ。

 

古い人間の翁、時々「何里」とか「何坪」、「何寸・何尺」を口にすることがある。翁の好きな諺で、座右の銘の1つにしている言葉に「100里の道を行く者は90里で半分と思え」(最終目的に達するまでは気を抜くな、油断するな、の戒め)がある。翁が愛車を乗り回していた頃、出先から我が家に近づく5分くらい前の地点で、よく呟いた「100里の道を行く者は・・・」「車を停め、エンジンを切るまで気を抜くな」・・・

 

翁は「広さ」も「平方メートル」より「坪」のほうが馴染みがある。公園や競技場などの広さを表わす時、よく「東京ドーム」が比較される。調べて見たら「東京ドーム」の建築面積は約47,000㎡(約1万4200坪)。ちなみにサッカーコートの1面は(平均)7,140㎡

(約2,160坪)、オリンピックプール(水泳競技場)は1,250㎡(約378坪)だそうだ。翁のように(いまだに)「尺貫法」を愛する人間もいる。それは「尺貫法」の中に“日本の歴史”が潜んでおり、回顧の念に浸りたい心理があるのかも知れない。が、それも80歳以上の後期高齢者だけ。いずれは「尺貫法」は消え失せ『メートル法』一色になるだろう。が、それも時の流れか・・・っと、そこで結ぶか『龍翁余話。