七殻の少年 | ケセラセラで行こう - 蟋蟀 竜之佑 Official Blog


あの頃ね、
具合が悪くて学校をお休みして
一人で寝ている時の事を思い出した。

その日は特別、
おっきなテレビが置いてある部屋で
寝ていて、
普段なら教室で授業を受けている時間に
テレビを見れる優越感と、
熱でぼぉーっとした頭で見る
教育テレビは格別楽しかった。

思い出せる記憶の空はなぜか雨で、
その音は静かだった。

布団に横になり、
テレビを見て過ごす時間は
特別だったけど
子供の僕が厭きるまでに
そう時間はかからなかった。

水枕の中の氷を右へ、左へ移動させたり
のど飴をパクパク食べたり
天井の染みを何かに例えたり
動かずに出来ることを色々してみた。

次第にやることがなくなり、
テレビの音も雨の音も
何の感慨も湧かないBGMになった。

その瞬間、
いつも家族で過ごしているこの部屋で
一人で寝ている、
という事に気付かされる。
時間はまだ昼間だけど、空は雨
電気はついていない
引き戸で仕切られている台所は
一際薄暗く感じられた。

蛇口から落ちる水滴や
風で部屋が軋む音
ほんの小さな物音が
とてもハッキリ聞こえてくる。

少し頭が痛くて目を閉じる
心拍数が早い
心臓の鼓動と共にズキズキと痛む頭
だるい身体と軋む骨
床に張り付けにされている気分だ。


なんか、

なんか、

何かわからないけど、

涙が出た。


熱で正常に働かない思考
動かない身体
広く感じる家
特別な日常

寂しかった。

一人でいるのは
とてもとても寂しかった。

親は働いていて夜まで帰って来ない。
鍵っ子だったから。

友達も兄弟も学校
下校にはまだまだ時間がある。
こういう時に感じる3時間や4時間は
途方もない時間に感じるものだ。

世界を、客観的に冷ややかに見る
天の邪鬼は子供の頃からで
可愛くない子供だった僕は
本当は気の弱い小さな人間だった。
それは今も変わらない。



いつの間にか眠っていた。。

とても暖かいものがおでこに触れる。

聞き慣れた声と優しい体温で

安堵した僕は、

少しだけ、寝たフリをした。。




とてもとても、

遠くの記憶。。。