「ー20度」 | 泳ぐ写真家龍之介

「ー20度」

北海道が、いきなり-20度の寒波に襲われたそうです。
11月に-20度は、めったにないことだそうです。

そのニュースを聞いて、ある記憶が蘇って来ました。

NYに住んでいた頃の話です。
冬は大体0度~-4度くらいの気温なのですが、
稀に、いきなり、-20度くらいの寒波に襲われることがあります。
そんな寒波に襲われた、ある早朝、
アパートを出てダウンタウンに向かっていると、
物陰に、ホームレスが仰向けに倒れていました。

声をかけると無言です。
手が硬直していたので、
「ああ、凍死したんだ」と分かりました。

顔を覗き込むと、黒人の青年でした。
もしかしたら、まだティーンエージャーだったかもしれません。
目は空いたまま。虚空をうつろに眺めています。
彼の目尻から一筋の白い糸が
冷たい地面に繋がっていました。
よく見ると、
その白い糸は、涙が凍ったものでした。

その後、友人にその話をすると、
彼が住んでいるアップタウンでも、ホームレスの凍死者を
複数、見かけたそうです。

その頃、公開されたニューヨークを舞台にした
「フィッシャーキング」という映画で
同じようなシーンがありました。

きっと私と同じようなシーンを目にした人が
シナリオを書いたのでしょう。


しばらくして、日が昇ってきて、街が目覚めると、
何千ドルもしそうな毛皮のコートを着た女性が
足早に、その脇を通り過ぎて行きました。

グローバリズムとか言う、勝手な資本主義の論理が
暴走し始めたのが、ちょうどその頃だったと思います。