「リチウムイオン電池」 | 泳ぐ写真家龍之介

「リチウムイオン電池」

リチウムイオン電池と言えば、
携帯電話から、電気自動車まで、幅広く使われている
ハイテク電池の代表的な存在です。
デジカメも、リチウムイオン電池がなかったら、
こんなにコンパクトなボディで、
長時間使えるようにはならなかったでしょう。
このリチウムイオン電池の発明者は日本人です。
旭化成の吉野彰博士です。
旭化成の撮影を長年担当している私は、
過去に2度博士のポートレートを撮りました。
そこで、いろんな面白い話を聞く事ができました。

リチウムイオン電池には、用途によって様々な種類があるそうですが、
基礎特許というものがあって、
いかなるメーカーも、リチウムイオン電池の原理を採用した場合、
基礎特許料を旭化成に支払わないといけないそうです。
基礎特許料収入額を聞きましたが、オフレコなので書けませんが、
中堅企業の年間利益に相当する額でした。

この研究を、吉野博士は約20年前に始めたそうです。
旭化成の製品製造の過程で出てくる廃物を利用するための研究として
始まったそうです。
なかなか結果がでなかったそうですが、
会社は研究を続けさせてくれたと語っていました。

昔のIBMもそうですが、
どうなるか分からないような研究を、研究費を捻出しながら
続けさせる企業の鷹揚さというか、ビジョンの大きさ、時間の観念は、
最近、見られなくなってしましました。

発明の基本は、好奇心だと思います。
好奇心を追求することは、楽しいことです。
「楽しい」と感じながら無意識に熱中することを
仏教用語で三昧(ざんまい)と言いますが、
吉野博士の経験を聞くと、その三昧という言葉がぴったりです。
「努力」とか「苦悩」とか、そのようなイメージは全く感じられませんでした。
そもそも、努力とか、勉強という言葉は、
読んで字のごとく、
自分を追い込んで、好きでもない事や
無理な目標や、利益直結の研究を求めて行う、よくない心的態度だと
私は考えています。

研究はそれが実るのか、結果を見るまで分かりません。
しかし、「三昧」の中からこそ、
大輪の花が咲くのだと思います。