「そして誰もいなくなった」 | 泳ぐ写真家龍之介

「そして誰もいなくなった」

私が、ニューヨークのカラテ道場に通っていた頃、
チャイニーズマフィアの若者が、部下を連れて練習に来ていました。
名は藩と言って、同じ東洋系なので、時々話をしていました。
チャイニーズマフィアと言っても、ティーンエージャー。
あどけない坊やと言った感じですが、
みな筋金入りのギャングでした。

抗争で白兵戦になると、武器よりも、素手で戦う胆力が勝敗を左右すると言うので、
ニューヨーク最強と言われた、当時私が通っていた空手道場に練習に来ていたわけです。
自分たちの命がかかっているので、練習には相当気合いが入っていました。

練習がきついのか、次第に道場に来る彼らの人数が減ってきました。
ある日、藩に、
「皆練習がきつくて、ついてこられないのか?」
と聞くと、
「来なくなったメンバーは皆殺された。」
「街で俺を見かけても、絶対に声をかけるなよ。仲間と間違われて殺されてしまうぞ」
という返事。

当時は、チャイニーズマフィアの抗争は、全盛期で、
チャイニーズマフィアは恐怖の的でした。
確か、ジョン・ローンのチャイニーズマフィアを題材にした映画もその頃
上映されたと思います。

その後、とうとう藩も来なくなりました。
好き好んで、殺し合いをしているわけではないと思いますが、
どうして、そういう運命をたどったのでしょうか。

ニューヨークでの悲しい思い出です。