「海外ロケ」 | 泳ぐ写真家龍之介

「海外ロケ」

海外ロケが、2000年を境に少なくなった。

いや、ほとんど無くなった。

インターネットとADSLが急速に普及してきた時期と重なっている。

そのころ、マリクレールのフランス版の仕事をした。

東京と京都での撮影だったが、

フランスの編集スタッフと、電子メールとファクスだけで

かなり細かなやり取りができた。

チャットのような感じでやりとりしたので、

会議に参加しているような気がしないでもなかった。


だから、逆もできるということだ。

現地にカメラマンが居れば、

メールでやりとりできて、撮影データはすぐ送信できる。

パリでの撮影でも

現地にライターさんとカメラマンがいれば、

日本にいるような感じで仕事ができる。

海外ロケの必要はなくなる。


雑誌の売り上げもその頃から衰退している。

ネットと携帯の普及が始まってからだ。

雑誌広告の出広料が、ネット広告のそれに追い抜かれてしまった。


だから、私は、雑誌黄金時代の最後の証人になるかもしれない。


ただ気になるのは、雑誌に代わってネット媒体が普及してきたが、

ネット絡みの仕事は、恐ろしくギャラが安いのだ。

紙媒体絡みのネットだとギャラは、常識的レベルだが、

ネットだけだと、目が点になる。

デザインもそうだ。

ウェブデザインやコーディングの料金は、

一流のクライアントは別にして、印刷媒体から比較すると

ちょっと引いてしまう。


これでは、優秀なクリエーターが育たないのでは?と思う。

やはり、業界にクリエーターを「育てる」という意識がないと

レベルは上がってこないと思う。

ネット系の経営者に、今までのような

出版や、広告業界に見られた「若旦那」的な、パトロン性を求めるのは無理だろう。

お金のことしか頭にないようだから。


一部の優秀なクリエーターは、いつの時代でも生き残っていくが、

全体の底上げをしないと、質は落ちていく一方だ。